【東京都・豊島区】雑司が谷
雑司が谷鬼子母神堂
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前日の雨から打って変わっての好天の休日。
こういう日は外に出るのが一番、池袋で買い物するついでといっては何だが、久しぶりに雑司が谷に足を運ぼうと思った。
地下鉄で池袋まで行き、東池袋のとある喫茶店でブランチを済ませた後、都電に乗り込み、目的地へ。
東池袋から2つ目の電停「鬼子母神前」に降りる。
サンシャイン60をバックに電停を通る電車、前面がピンク色のトラムだが、いつの間にか都電荒川線が「東京さくらトラム」なんて愛称をつけられているのを初めて知った。
自分さえそんな感じだから、その愛称が都民の間で定着してるんだろうか疑問。
東武伊勢崎線のように「スカイツリーライン」なんて名称に変えたところで、古くから定着している呼び名を変えるつもりはさらさらない。
都電荒川線は都電荒川線、それでいいじゃんw、
電停からまず鬼子母神堂へお参りに向かう。
参道付近はちょっとした商店街となっていて、どこか昭和の佇まいを残している。
池袋から至近距離なのに、何これ、このユルユルな雰囲気
下町にありがちな細い路地が多いのも雑司が谷の特徴だ。
古くからの長屋がそのまま残る路地裏。
石畳が敷き詰められいて、どこか情緒が漂う。
これで猫がいれば満点だが。
路地の入り口に建つのは美容室だろうか。
現役って感じはしないが。
それにしても壁一面の豆タイルが綺麗だ。
東京都内でこうした豆タイルの建物は珍しい。
入口がアーチ型というのもお洒落だ。
商店街とY字型に枝分かれする形で参道が伸びている。
その分かれ目に立っている巨大な欅の木。
この参道の欅並木は都の天然記念物らしい。
欅並木の参道。
木一本一本からしてデカいから、相当昔からあったのだろう。
かつては樹齢400年もの欅が18本も並んでいたそうだが、今では4本ほどだとか。
参道には古い長屋をリフォームした建物、観光案内所が入っている。
この建物、「並木ハウス別館」というらしい。
じゃあ本館は、というとその脇道に入り突き当りに見える。
あの手塚治虫が住んでいたことがある「並木ハウス」はそこにある。
並木ハウスの門に「登録有形文化財」のプレートが掛かっている。
これも手塚治虫が住んでいたという事実がなければ叶わなかったのだろう。
手塚がトキワ荘からここに引っ越してきたのが昭和29年で、当時はまだ新築だったそうだ。
ということは築60年以上か。
現在も当時のままの佇まいで、ちゃんと住人もおられる。
件の手塚は結婚するまでの2年半、ここで暮らしていた。
ちょうど漫画家として売れっ子だった頃だ。
参道にはそんな古いアパートも残っている。
未舗装の路地もあり、とても池袋圏内とは思えない。
池袋、特にサンシャイン通り辺りともなると人ゴミ、もとい人混み、それも女子供そして外人ばっかで、流石に大人の歩くとこでないと痛感する。
それと比べるとここは人っ気も少なく、どこか閑静な雰囲気が漂う。
しかも、時が昭和年代に止まったかのような錯覚に浸れる。
これぞ大人が歩くのに耐えられる空間だろう。
参道は折れ曲がった形で、突き当りに鬼子母神堂が見える。
「神」と付いているが神社ではなく、法明寺の飛び地境内、つまりお寺なのだ。
寺院に神を祀るのは「神仏習合」によるものだろう。
入口には両側に仁王像が立っている。
鬼子母神を守っているかのようだ。
永禄4年(1561年)に山村丹右衛門という人が井戸から鬼子母神像を掘り出し、祀ったのが始まりだという。
その山村は雑司の役にあった柳下若狭守の家来だったのだが、これが実は「雑司が谷」という地名の由来だという。
鬼子母神堂が建立されたのは天正6年(1578年)、現在の本堂は寛文4年(1664年)に建て替えたものだ。
池袋が空襲で焼き払われていた反面、ここは奇跡的に戦災を免れている。
そんな感じでこのお堂も当時のままの佇まいを残し、国の重要文化財に指定されている。
境内には赤い鳥居がたくさん、それにこれまたデカい木が一本。
この木は「鬼子母神の大公孫樹(大イチョウ)」と言われ、高さが30メートル超、樹周8メートルほどだという。
勿論、御神木扱いで周囲を囲いで守られている。
その隣の鳥居がズラリと並ぶ「武芳稲荷」。
主祭神がウカマノミコトで、この地の地主神とされている。
実際、この地は古くは「稲荷の森」とも呼ばれていたそうだ。
何気に鬼子母神堂よりも古く、400年前からこの地に鎮座されているとか。
実はここ、"歌舞伎町の女王"のプロモーションビデオのロケ地だったりする。
その脇に一軒の駄菓子屋さんが構えている。
「上川口屋」さんは創業1718年と看板にある。
駄菓子屋さんとしては最古の部類ではないだろうか。
木々に囲まれた境内、とても池袋の近くと思えないロケーションだ。
お参りを済ませ、雑司が谷の街に向かう。
お目当てはもう一つ、戦後の佇まいを残すあの商店街だ。
(次回に続く)