超絶不毛美青年登場!~でも頭がすごく残念なかんじ1

【HJMG!不毛さん47】
16.超絶不毛美青年登場!~でも頭がすごく残念なかんじ1
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「桃太郎のアホーッ!」

「オォーーーーーッ!」

 アタシの叫びに答えるように、連夜のごとく響く奇声があがった。
 近所の不審者が何か言っているのだろう。

 いやいや、夜更けにアパートの庭でこんな大声出したらアカン。
 ともかくこの興奮を鎮めないと……いや、沈めるには勿体ないエネルギーや
 何かに利用せんと。しかし何に?
 町に走り出て踊りまくるくらいしかすることないで?
 アカンて。もう二度と警察沙汰はゴメンやわ。

 我に返って思う。
 別に本気になって桃太郎に出て行けって言ったワケ違(ちゃ)う。

「でも、だからってアタシが出て行くことないやん!」

 1人ツッコミが悲しくなる。
 すっかり家出グセが身に染み付いてるみたいで、我ながら嫌になる。
 でも今更奴のいる家には戻れんし。



 行く当てもなくアタシはオールド・ストーリーJ館の建物脇をトボトボ歩いていた。
 庭を奥の方へと向かう。
 アタシの部屋(今はもう桃太郎の部屋か)と反対側──4号室のあたりまで来ると、景色は一変した。

 目の前には竹やぶ。
 サワサワと風に葉が揺れる。
 このマイナスイオン……心が癒されるようだ。
 狭い敷地だけど、裏の方に来たのはこれが初めてだ。

 空には満月──鏡のように澄んでいてきれいな光だ。

 急に自分がちっぽけな存在になったような気がした。
 今までモヤモヤ渦巻いていた色んな嫌なことが、心から散っていくようだ。

 アタシが和んでいたところに、突如ガサガサ──竹やぶがさざめいた。

「な、何?」
 周囲も暗いので、さすがに恐怖が先立つ。
「誰かいるんか?」

 まるで返事をするように竹林が、割れた。
 ガチャガチャ金属音を鳴らして一人の人物が飛び出してくる。

「ヒィーッ!」

 アタシが叫んだのは、その人物のパッと見の異様さに肝を冷やしたから、という訳ではない。

「ちょ、超絶美青年や……」

 思わず口元を押さえたのは、鼻血噴くんじゃないかと思ったくらい相手に見とれたから。

 月光の下、白い肌に黒髪がよく似合う……見たことないくらいの美しい男が、そこには居た。


「アノ……アノ……アンタ、いや、アナタは?」

 ボーッとする一瞬の間に、アタシは違和感に気付く。
 せっかくの美貌なのに、彼はKILLって書いたボロTシャツと、真っ赤な短パンを身に付けていたのだ。
 更に、足は裸足。
 それだけで何とも言えん、残念なかんじや。
 しかも手首足首には太いアンクルが、傍目にもズッシリ重量感たっぷり巻き付けてある。
 ガシャガシャいってた金属音の正体はコレか。

「テロだーッ!」
 男は叫んだ──月に向かって。
「テロだ。テロだーッ!」

            【つづく

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