幸田露伴『観画談』より

気味合:(きみあい)気持ち。気分。 特別の事情・わけ。

浮世の応酬に疲れた皺をもう額に畳んで・・:

諢名:(あだな)。こんめい (渾名)あだな。愛称。

甫:フ、ホ。おお(きい)、はじ(め)。年長の男性を敬い名を呼ぶときつける。尼甫(ジホ)=孔子のこと

山水清閑の地に活気の充ちた天地の灝気(こうき)を吸うべく東京の塵埃を背後(うしろ)にした。
灝気:広々として澄み渡った大気

辺僻:邊僻。へんぺき。へんぴ。

踽踽然(くくぜん)として夕陽(せきよう)の山路や暁風(ぎょうふう)の草径(そうけい)をあるき廻ったのである。
踽:ク。孤独な様子。独りでとぼとぼと行く様子。「踽僂(くる)」は、背が曲がっているさま。前かがみになって小さいさま。
夕陽:夕日。夕暮れ。
※陽は「ひ」とは読まないから、「ゆうひ」は夕日。夕陽は「せきよう」。暁風:(げうふう)明け方の風。

米法山水:中国,北宋の文人画家米芾 (べいふつ) 、米友仁父子が創始した山水画法。

懐素:(かいそ)中国・唐代の書家。特に草書にすぐれ、その作風は狂草と呼ばれる。

気の置けない:親密な間柄。一般的には、「気が置けない」の言い方で用いられることの方が多い。
親しい間柄であるという意味で「気が置ける」という言い方は誤用。また、「気が置けない」を油断ならない、打ち解けがたいといった意味で使う言い方も誤用。

頓興:頓狂。だしぬけで調子はずれ。間が抜けて調子はずれ。

心当:心だのみ。当て推量。

略彴:まるきばし。

もだもだ:もだえ悩む様子。わだかまるものがある様子。

窮境:非常に苦しい境遇・立場。窮地。

峰巒:(ほうらん)山の峰。また、山。

間遠:(まどお)間隔が、時間的または空間的に離れているさま。 織り目や編み目、結び目が粗いさま。

廓落:からり。かくらく。限りなく広々とした様子。

寂寞:(じゃくまく)静かでひっそりとしている様子。せきばく。

回禄:囘祿※「す」が付いて自動詞(サ行変格活用)になる。火災にあうこと。炎上。火事。◆中国の火の神の名。

入側:(いりかわ)書院造りで、濡れ縁と座敷の間にある1間(けん)幅の通路。畳敷きとした場合は縁(えん)座敷ともいう。

ズク入:ずくにゅう。僧のことを嘲っていう言葉。

手丈夫:(てじょうぶ)つくりがしっかりしていること。てがたいこと。確かであること。

風吹烏:(かざふきがらす)風に吹き流されてあちこち飛ぶ烏。あてもなくうろつき歩く者。ひやかし客や浮浪人。

尽未来際:じんみらいざい(さい)。仏語。未来の果てに至るまで。未来永劫(えいごう)。

諦聽:(たいちょう)ていちょう。注意してよく聞くこと。

性が抜ける:本来の性質・形状などが失われる。

已達の境界:いたつのきょうがい。悟りの道を極めた境地

放下:仏語。禅宗で、一切の執着を捨て去ること

閑步:ぶらぶら歩くこと

負販:商品を背負って売り歩くこと。行商。

画舫:がぼう。グワバウ。絵をかいたり彩色を施したりした中国の遊覧船。転じて、美しく飾った遊覧船。

水涯:水のほとり。水ぎわ。岸。

点綴:(てんてい)てんせつ、てんてつ、とも。ひとつひとつをつづり合わせること。物がほどよく散らばっていること。

扶疎:枝葉が広がること。繁茂すること