ESADE Business School 留学記

MBA留学のみならずラテン文化についてもお届けしたいと思います。

Corporate Innovation Through Entrepreneurship

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スペインでも新型コロナウィルス感染者が200名を超えましたが、いまだにマスクをしている人をほぼ見かけません。小学校に感染者が出ても学校閉鎖をしませんし、握手やハグを避ける必要は全くないとメディアが発信している点からも文化の違いを大いに感じざるを得ません。1日でも早く終息することを願っています。

 

さて今日は今年からスタートしたCorporate Innovation Through Entrepreneurshipについて振り返りたいと思います。

元々はCorporate VenturingとCorporate Entrepreneurshipという二つのエレクティブだったのですが、Term5は既に働きはじめている人もおり、また双方のエレクティブが似ていたこともあり、それぞれに十分な人数が集まらなかった結果、一つのエレクティブになりました。

 

講義内容

全5回のうち3回はイノベーションセンターやインキュベーターなどを訪問して、イノベーションを起こすために大企業がどのようなことに取り組んでいるのかまたアクセレレーターやインキュベーターがどのように企業を支援しているかということを学びました。訪問先は以下の通りです。しっかりとバルサを入れてくるところがさすがESADEです。

・Payment Innovation Hub :Caixabank, Global Payment Inc, Visa, Samsug, ArvalのJV。新しい決済システムや決済方法の開発が目的。

・Zone2Boost:地場のアクセレレーター。小売りと金融業界にフォーカス。プログラムは6~24か月。

・Global Omnium-Go Hub:水ビジネス企業のコーポレートベンチャーキャピタル。水事業、インダストリー0、スマートシティ関連のスタートアップをサポート及び出資事業。

・The Collider:テックスタートアップにフォーカスしたイノベーションブプログラムを提供。科学者、起業家、大企業を繋ぐことで早期の商業化を目指す。

・Cuatrecasas:欧州に法律事務所として初めてスタートアッププログラムを立ち上げ。初期段階からパイロットフェーズまでの到達を支援。

・Peninsula Corporate Venturing:地場のインキュベーター。ゲーム分野にフォーカス。

・Heywood & Sons:欧州初のコーポレートベンチャービルダー。大企業のために新しい商品やビジネスモデルを検討するチームビルディングからエクゼキューションまでサポート。

・Barcelona Health Hub:デジタルヘルスケアに特化したイノベーションハブ。メンバーはスタートアップ、大企業、研究機関等で構成されており、セミナーやハッカソン等を通してイノベーションを促進。

・Wayra :Telefonicaのイノベーティブ部門。インキュベーター兼コーポレートベンチャーキャピタルとして機能。既に11拠点を欧米に有しており、6億ユーロを900社に投資済。

ASICS:アシックスのコーポレートベンチャーキャピタルGrowth-stageのスタートアップへの支援及び投資。

FC Barcelona Innovation Hub:バルサイノベーションハブ。目的は最新技術を使った選手や運営側のパフォーマンス改善、ブランドイメージの向上、新しいビジネスモデルの立ち上げ。

 

大企業内でのイノベーションの壁

一番の壁は「企業文化」とのことです。例えば減点主義、完全年功序列で若者は意見を言いにくい、新しいことをしても評価されない、完璧主義(いきなり完璧な商品やサービスを提供しようとする)などです。企業文化の分析やそれを変えることに取り組まず、うわべだけのことをやっても企業文化が壁となって新しいことへのチャレンジが難しくなります。実際に社内でイノベーティブ部みたいなものを設置しても企業文化が壁となって中々うまくいなかないケースが多いようです。

加えて意思決定のスピードも壁となっています。企業規模が大きくなればなるほど、多くの人が決裁プロセスに関わってくるため、社内調整等に時間がかかります。それなりの規模の企業はいきなりパーフェクトなものをリリースしようとする傾向があるため、そこでも余計な時間を費やしてしまうケースがあります。

その他にもロングタームでのコミットメントがない(短期的な利益重視)、企業内に多様性がないなども原因としてあげられます。

 

ソリューション例

・外部企業とのJVを適切な都市に設立

外部に設立した会社に権限を与えることで企業文化を無効化し意思決定スピード改善するのが狙いです。また外部企業とJVを作ったり、多様な国籍や業種が集まるイノベーションセンターに拠点を置くことでダイバーシティの要素を加えることができます。大企業JVであるPayment Innovation Hubがまさしくそういった狙いでバルセロナイノベーションセンターに拠点を置いています。バルセロナは「2019年グローバルスタートアップエコシステムランキング」(詳細は下記リンクご参照)ではヨーロッパ6位(スペインでは唯一トップ30入り)にランクインしており、都市をあげてエコシステムを作ろうとしています。ちなみにアジアでは北京・上海・シンガポール・香港がトップ30入りしていますが、日本の都市は残念ながらランキング外です。つまり日本はアジアの中ですらイノベーションセンターという点で選ばれにくい状況になっています。また重要な点としてただ単にその場所に優秀な人材、スタートアップ、アクセレレーターが集まればいいということではなく、都市全体で変化や多様性を受け入れる土壌を作ることが必要であるとの印象を受けました。お役所だったり、住民がそういうのを受け入れない場所にイノベーションハブを作っても成果が出にくいとのことです。

about.crunchbase.com

 

・失敗を奨励

海外に上記のようなJVやイノベーションセンターを設立するのが難しい場合、良いなと感じたのが、企業にとってためになる失敗をした人を表彰する制度です。Googleやいくつかの日系企業が既に導入しているようです。こういった姿勢を企業が示すことで減点主義の企業文化を変えられる可能性があると感じました。

 

最後に

この1年半の間、イノベーションについてディスカッションをする機会が多くありましたが、毎回日本または日本人にはその要素が少ないということに気づかされます。なぜなら年功序列、終身雇用による強固な企業文化を持ち、多様性の少なさ(国籍・異業種・異なる意見など)・失敗回避思考と言ったイノベーションを生み出す上で必要な要素をことごとく排除しがちだからです(何かを改善するためには非常にプラスになる要素は持っていると思います)。特に日本社会は教育制度や言葉の壁の影響のせいか、多様性が本当に乏しいと感じています。「Fortune500社の45%は米国移民または移民の子供によって設立されている(≒多様性が米国の競争力の源泉になっている)」(詳細は下記リンクご参照)という事実がある通り、グローバル化が進んでいる中では今後ますます多様性という点も企業の成長にとって重要になっていくと思いました。

www.newsweek.com

 

以上