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「人手不足」廃炉作業に外国人受け入れと東電

東京電力が、「特定技能」の資格を持つ外国人労働者を、福島原発の廃炉作業に受け入れると、ゼネコンなど協力会社数十社に対して周知した。

「特定技能」とは、2019年4月からスタートした新しい在留資格である。
「移民法」との異名もあった、入管法改正により制定された。

この審議をした法務委員会もひどいものだった。
法務省は、実習先から失踪した外国人の数、その理由、また死亡した実習生の数など、外国人労働者を受け入れるにあたって、法整備に必要なデータをノラリクラリと出し渋り、また、アンケート回答をちょっとマイルドな言い方に書き換えたりと、審議以前の問題が多く目についた。

師走に行われたこの審議は、翌年度の施行を目指して(もうこの時点でタイムスケジュールが無茶ぶりなのだが)、山下大臣の「法案通過させてもらえば、施行までにうまいこと調整するよ」(これもメチャクチャだ)という趣旨の答弁にゴリ押しされ、強行採決となった、ひどい法案だ。

そしてこの「特定技能」資格だが、どうもこれは国が行う試験ではなく、国が示すある一定のレベルというのを受けて、各業界団体が実施するようだ。
人手不足で労働者が欲しい業界が、各自で試験を行うのなら、これはもう内容がグダグダになるのは目に見えている。

それでもまだ、正式なルートで、きちんと説明を受けたうえで従事するならまだマシだ。
2018年には、ベトナムからの技能実習生が、禁止されているにもかかわらず、除染作業に従事させられていた問題が表に出た。

本人たちは、被曝の可能性などの説明を全く受けていなかったどころか、従事している作業がそもそも「除染」であったことも知らなかったというのだから、仰天する。

東電の広報担当者は「特定技能を持つ外国人が日本人と区別することなく働くことが認められたので、法律の趣旨に則って対応してほしいということを協力企業に説明した」と話している。(2019年4月18日産経)

都合のいいように、日本人と外国人の平等を説いている。

「協力企業に説明した」というところから、外国人の雇用に関わるのは私たちではないという態度が見え隠れする。

また、これは除染や廃炉に限らずだが、現地の送り出し機関、いわゆる「斡旋企業」には、渡航費などに手数料を載せた法外な前金を外国人労働者に借金の形で払わせ、来日してから低賃金の労働にがんじがらめにする手法も珍しくない。

東電4月19日から受注したゼネコンが、下請けに、さらに下請けに、そのまた下請けに、と作業を送り、実際に採用し現場で指示に当たるのは、何次請けか分からないような、ずっと下の建設業者になる。

例え、外国人が騙されて、借金に脅されてなどという理不尽な形で従事させられたとしても、必ず東電はこう言うだろう。
協力会社の雇用問題なので、把握しておりません。

これと同じ構造の問題は、実際に日本人の労働者にも起きている。

日本人の廃炉作業者の安全管理も、決して十分とは言えない。
本来は、どの下請け企業と雇用契約を結んでいようが、作業中に受けた被曝はどこかで一元管理し、生涯にわたって健康の面倒を見るのが、あるべき姿だ。

外国人労働者を被曝させ、ケアもそこそこに母国に帰らせてフタをする、というようなことをするようであれば、将来的には国際問題に発展する可能性すらある。
廃炉作業をさせたとあっては、日本の味方に付いてくれる国際世論は皆無であろう。
頼むからこれ以上、将来の日本に「負」の遺産を押し付けないでほしい。
政府も、東電も、そのあたりをあまりに軽く考えすぎている。

4月19日追記

山下法務相が、急きょ
廃炉の除染作業「外国人材の受け入れに該当せず」
との認識を示した。

山下法務大臣は記者会見で
「申請があった場合には、対象となる活動に該当するかどうかなど、関係省庁と連携して適切に審査するということになる」
一方で、山下大臣は、建設業の特定技能を持つ外国人労働者の場合を例にあげ
「除染などの業務に従事させることを主な目的としている場合は、受け入れに該当しない」と述べ、受け入れは認められないという認識を示しました。
(4月19日NHK)

どうしてこういう「行き違い」みたいなことが起きるかというと、
結局は法務省の采配で、いろんな業種・業務内容がGOになったりNGになったりするからだ。

入管法では、「原則として単純作業は認めない」とあるものの、それはあくまで原則。
人手不足などを役所に訴え、「やむを得ない」と容認されれば、単純作業でもOKになるらしい。
外国人採用のポータルサイトを見ると、「単純作業でも受け入れ可です」と堂々と掲げているものさえあった。

そもそも「特定技能ビザ」の受け入れ可能な業種は、入管法ではなく、法務省令で定められるというのだから、入管法という、法律そのものの建てつけがグズグズなのだ。

東電は、おそらく法務省高官レベルと「受け入れは、大丈夫でしょう」という意思を交わしていたのだろう。
手続きとしてOKをだすことは、十分に可能なのだ。

が、しかし、最大の問題であり、最大の誤算は「世間が許さなかった」ことだ。

慌てて山下法務大臣が方針を示した結果、なにやら少々不可解な認識表明になってしまった。
これを意訳すれば、
世間の目を気にする限り、特定技能に除染を加えることは(法制上可能だが)、現在の法務省の意思としては、やりません。
と、理解するのが適当なのだと思う。

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