ブックレビュー:Understanding Perspective: Easy Techniques for Mastering Perspective Drawing on Location

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今回紹介するのは Urban sketching handbook シリーズの4作目です。タイトルにある通り、アーバンスケッチのためのパースの基本とテクニックが紹介されている本です。

レビュー

概要

著者の Stephanie Bower さんはシアトルを拠点として建築物のイラストを描いているプロのイラストレータさんです。スケッチのオンライン講座も開いていらっしゃいます。

この本は 13.3 cm × 21 cm とやや小さめの本です。モレスキンのスケッチブックのようにバンドがついています。

Kindle 版はでていません。Barnes & Noble というサイトでは e-book を買えるようですが、ここの iPhone, iPad 用アプリは日本の App Store ではダウンロードできませんでした。

ページ数は 112 ページで、6 つの章に分かれており、6 章目はギャラリーとして作者や他のスケッチャーのスケッチを紹介しています。

KEY I

第1章は基礎についてで、ツール、ターム、プロポーションと計測の3つの項があります。

ツールについての項では著者が持ち歩いている道具が簡単に紹介されています。

タームの項では建築家が使う言葉の中でパースを理解するのに役立ちそうな言葉がいくつか紹介されています。その中でも elevation(立面図)についてはいくつかのスケッチの例をあげて説明しています。

プロポーションと計測の項ではえんぴつを計測機にして描こうとするものの長さの比率を計測する方法が紹介されています。

KEY II

第2章は空間を描く際の基本的な法則についてです。同じ大きさのものが遠くにあるほど小さく見える diminishing、 平行な線は遠くで1点に収束するように見える converging、アイレベルに近いものは平らにつぶれてみえる遠近短縮法 foreshortening の 3 つの言葉について丁寧に説明されています。また、converging の項で アイレベルについての説明もあります。

KEY III

第3章は遠近法のタイプについてです。前半はアイレベルビュー、俯瞰、仰視と視線の縦方向の角度で分けてスケッチの際のポイントを説明しています。後半は一点透視図法、二点透視図法、多点透視図法とビューアングルで分けています。

KEY IV

第4章は実際に著者がスケッチする際の手順が紹介されています。まず、全体的な流れの説明があり、その後、アイレベルビューの一点透視図法、俯瞰の一点透視図法、仰視の二点透視図法の3つの例についていくつかのステップに分けて手順を説明しています。この本の主軸がパースなので、水彩での着彩については説明はありません。

KEY V

第5章は複雑なものを単純に捉えるヒントについてです。円と楕円、アーチ、ドーム、反射の 4 つの項に分かれています。

GALLERIES

最後の15ページはギャラリーで、著者や他のスケッチャーのスケッチを4つのテーマに分けて紹介しています。4つのテーマは、ワイドアングルビュー、テクスチャー、ペインティング、ラーニングです。

全体を通して

著者のスケッチも他のスケッチャーのスケッチもとても美しいです。文字の割合は少なめで、平易な英語なのでどんどん読めます。

平行な線や水平線、消失点について、スケッチとは別にサムネイルで表示しており理解の助けになります。

amazon.com のレビューの中には文字が小さすぎるというものもありましたが、私は文字などのサイズで困ることはありませんでした。

おわりに

私自身に簡単なパースの知識がある状態で読んだのもあるのかもしれませんが、とても丁寧に作られていてわかりやすい本だと感じました。

また、スケッチャーのためのパースの本として描かれているため、実際にスケッチする際に役立つ情報が多かったです。例えば消失点が紙の外にあるときはえんぴつを計測機として角度を測って線を描いていけばよい、など。

曲線遠近法についてはギャラリーページに例があるだけで具体的な説明はないので、その点では以前レビューを書いた建物&街角スケッチパースの方がおすすめですが、スケッチのためのパースの本の1冊目として、この本はとてもおすすめです。

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