生活

【随時更新】恒川光太郎 オススメ小説ランキング 全書籍について個人的に順位をつけてみた

まず初めに、このブログは本の感想をまとめるような、いわゆる読書ブログではありません。生活の中で感じたことや、節約術などをまとめたブログです。

にも関わらず、今回なぜこのような記事を書くのか。

それは私が恒川光太郎さんの小説のファンだからです。

私は小説単位で好きになることはあっても、作家単位で好きになることはありませんでした。この小説は好きだけど、あれは嫌いだという風に同じ作家さんの本でも好みが分かれるのです。

しかし、恒川光太郎さんの本に関しては、いまのところ外れはありません。

もちろん、おもしろさの程度には差があります。しかし、どの本も読んでよかったなと思えるものばかりです。

私は、作家単位で恒川光太郎さんの小説が好きということになります。

本記事では、恒川光太郎さんの小説を、僭越ながら個人的な好みに基づき、ランキング付けしました。

恒川光太郎さんの書籍は短編集も多く、書籍単位でランキングをつけるのは無粋なことかもしれません。しかし、本記事の目的は恒川光太郎さんの小説の魅力を伝えることにあり、書籍をひとまず手に取ってもらうことが重要だと考えています。

そのため、それぞれの書籍にどのような話が入っていて、全体的にどのような雰囲気なのかを知っていただければ幸いです。

 

恒川光太郎 オススメ書籍ランキング

 

17位 金色の獣、彼方へ向かう

樹海に抱かれた村で暮らす少年、大輝は、
ある日、金色の体をした不思議な生き物と出会う。
ルークと名づけて飼い始めるが、次第に大輝の体に異変が起きてくる――。
静謐な美しい文章と瞠目の幻視力、そして変幻自在のストーリー。
物語の奔流に呑み込まれる快感が味わえる傑作ダークファンタジー。
表題作を含む4編を収録。

関わり方は違えど、いにしえから現代まで様々な人間に影響を与え、そこに不思議な体験をもたらす金色の鼬。その獣に関する話が4話収録されています。

恒川光太郎さんは、日本ホラー小説大賞を受賞されてていて、肩書ではホラー小説作家とされていますが、全体的にはホラーというよりファンタジーといった作品の方が多いです。

しかし、本冊に収録されている「異神千夜」という話は、これまでの中で最もホラー色の強い作品となっています。

ファンタジー要素に加えて、ホラー要素も体感したい人にオススメの一冊です。

 

16位 化物園

 

人間はおもしろい。だが、飼ってはならぬ。

檻の中の醜悪な動物たち。

その歪んだ欲望を、実力派作家・恒川光太郎が描く。

自尊心が高く現実に向き合えない王司。金目的で父の死を隠蔽した後、家にやってきたのは――「窮鼠の旅」

スリルに憑かれ空き巣を繰り返す羽矢子。だが侵入した家の猫に引っかかれ、逃げた先で奇妙な老人に出会い――「猫泥棒」

その他、「風のない夕暮れ、狐たちと」「十字路の蛇」「胡乱の山犬」「日陰の鳥」「音楽の子供たち」全七篇。

《化物》たちの饗宴を、ご覧あれ。

引用:本書帯

現代・戦後・江戸、500年以上前のチャンパ王国(現ベトナム南部あたり)まで、様々な場所や時代で展開される小話が7話収録されています。

それぞれの話は独立していながらも、ある化物を通じて少しずつ繋がっていて、ラストでその正体が明かされる形です。

全体的にはダークでどこか不安になるような不気味な雰囲気がただよっていますが、その中身は幻想的なもの・後味の悪いもの・少し笑えるものまで様々。

いずれの話も他では読んだことの無いような独特の内容であり、読後には独特の余韻を残してくれます。

時代や場所が違えど、それぞれの話の空気感が妙にリアルであり、作者の広範な知識と力量に改めて感嘆させられる作品です。

 

15位 箱庭の巡礼者たち

 

神々の落としものが、僕らの世界を変えていく。

迷える人々への”異能”は祝福か、呪いか。

奇想の語り手が描く、心ゆさぶる多元世界ファンタジー。

時空を超えて旅する彼らが出会った不思議な道具「時を飛ぶ時計」、「自我を持つ有機ロボット」、そして「不死の妙薬」。人知を超えた異能がもたらすのは夢のような幸福か、それとも忘れられない痛みか。六つの世界の物語が一つに繋がる一大幻奇譚。

引用:本書帯

パラレルワールド系のファンタジー色強めな小説です。

6つの世界の短編が展開されています。

数百年に及ぶ壮大な物語であり、平行世界の要素も加わるため、恒川光太郎作品の中では最も複雑な構造をしています。

しかし、それらを一つに繋げてしまうのがすごいところです。

本書にも言葉として登場しますが、「ナルニア国物語」を私は思い出しました。

子供時代にそういったファンタジーが好きだった人には刺さるかもしれません。

 

14位 滅びの園

突如天空に現れた<未知なるもの>。 世界で増殖する不定形生物プーニー。 抵抗値の低い者はプーニーを見るだけで倒れ、長く活動することはできない。 混迷を極める世界を救う可能性のある作戦は、ただ一つ――。

一人の男の見る夢がすべての鍵を握る。滅亡に向かう世界。異才・恒川光太郎が幻視する残酷で美しい世界の終わり。

本作はSF色の強いファンタジー長編小説です。

ファンタジーな部分ではふと懐かしさを感じるような瑞々しい世界を描き、一方では地獄のような破滅SFの世界が描かれています。

この2つの世界でそれぞれ話が進み、最終的にはそれらの世界が…。

謎の生命体に人類が追いやられるという話はよくありがちですが、そこに並行世界の要素を付け加えてファンタジーの要素を取り入れることで、他に似たような話が無いような独特のストーリーになっています。

 

13位 白昼夢の森の少女

 

  • 人間の身体を侵食していく植物が町を覆い尽くしたその先とは
  • かつて友人が語った森を背負う生き物を探して
  • ゲームのように生死を繰り返す不死の男の最後
  • 巨大な船に乗り込んだ者は、歳をとらず、時空を超えて永遠に旅をするという
  • 浜辺に流れ着いた女が語る、自身の過去と正体
  • ドールジェンヌに操られる人々と、開放への戦いの末路
  • 平成最後の落とし穴
  • 布団の底には奈落の穴 (実話怪談)
  • 命の炎を見ることができる少年が隠した禁忌
  • 突然ボールになった少年の話

本書には10作の短編が入っていますが、その長さは5ページ程度のものから36ページのものまで様々です。

作者によるあとがき曰く、

デビュー以来、どこかの媒体で発表はしたものの、本には収まれずに埋もれていた作品と、アンソロジーに収録された作品をあわせてまとめたものが本書です。

とのことです。

全体的に短いので読みやすく、そういった意味では恒川光太郎の世界に触れる入門書としてオススメかもしれません。作風はメルヘンチックなものから、陰惨な湿り気を持ったものまで様々です。

 

12位 無貌の神

赤い橋の向こう、世界から見捨てられたような場所に私は迷い込んだ。そこには陰気な住人たちと、時に人を癒し、時に人を喰う顔のない神がいた。神の屍を喰った者は不死になるかわりに、もとの世界へと繋がる赤い橋が見えなくなる。誘惑に負けて屍を口にした私はこの地に囚われ、幸福な不死を生きることになるが…。現実であり異界であり、過去であり未来でもある。すべての境界を飛び越える、大人のための暗黒童話全6篇! - (BOOKデータベースより引用)

上記の説明にある表題作に加えて、

  • 流罪人に青天狗の仮面を届けた男が耳にした後日談
  • 死神に魅入られた少女による七十七人殺しの顛末
  • 人語を話す囚われの獣の数奇な運命
  • 十二月の街で悪魔から逃げる男の過去
  • 突然風になった人間と少年の交流記

の6作が編入されています。多くの話はダークファンタジーと呼ぶような内容ですが、その顛末には、気味の悪い余韻の残るものや爽やかな優しさに包まれるものなど様々です。

個人的には、死神と旅した少女の話は恒川光太郎さんの話の中でも2番目に好きな名作です。

 

11位 真夜中のたずねびと

次々と語られる、闇に遭遇した者たちの怪異譚。

ゲストハウスでほんの一時関わっただけの男から送られてくる、罪の告白。その内容は驚くべきもので……(「さまよえる絵描きが、森へ」)

弟が殺人事件を起こし、一家は離散。隠れ住む姉をつけ狙う悪意は、一体、誰のものなのか。(「やがて夕暮れが夜に」)

全五篇。闇夜に紛れる怪しき者たちの声を聞け。 引用:本書帯

生きているのか、死んでいるのか、本当にあったのか、なかったのか、

全ては曖昧に消えていく。

闇はあなたの後ろに、今も佇む――。

忍び寄る足音に、背筋が寒くなる連作集。引用:本書帯

本書はダークファンタジーというより、現代日本に潜むリアルな闇と、それに関わる人達の話です。

貧困、サイコパス、家族が犯した殺人、交通事故、自殺…。

短編が5話収録されていますが、とにかく鬱蒼としたダークな雰囲気が全体に漂っています。読後の後味の悪さは中々です。

しかし、そんな環境や運命の中でも強く生きる人もいます。

最後の5話目を読むと、何か感じることができるでしょう。

 

10位 スタープレイヤー

路上のくじ引きで一等賞を当て、異世界に飛ばされた斉藤夕月(34歳・無職)。そこで10の願いが叶えられる
「スタープレイヤー」に選ばれ、使途を考えるうち、夕月は自らの暗い欲望や、人の抱える祈りの深さや業を目の当たりにする。
折しも、マキオと名乗るスタープレイヤーの男が訪ねてきて、国家民族間の思惑や争いに否応なく巻き込まれていく。
光と闇、生と死、善と悪、美と醜――無敵の力を手に、比類なき冒険が幕を開ける!
鬼才・恒川光太郎がRPG的興奮と神話世界を融合させ、異世界ファンタジーの地図を塗り替える、未曾有の創世記!

10の願いが叶えられるなら何をしようか?

そんなことができるなら何でもできそうな気がしますが、現実はそう甘くはありません。最初は10個もあれば十分かなと感じる願いも、他にも願いを叶えられる人が出てきたり、国家民族間の争いに巻き込まれたりする中で、その使い道が非常に重要になります。

願いの使い方にもコツのようなものがあり、その使い方も人それぞれ。

果たして最も賢い願いの使い方とは何なのか?

おとぎ話の中に生々しい現実を突き付けてくるような異世界ファンタジー小説。恒川光太郎さんの作品の中では異質のRPG的な作品です。

 

9位 雷の季節の終わりに

 

現世から隠れて存在する小さな町・穏で暮らす少年・賢也。彼にはかつて一緒に暮らしていた姉がいた。しかし、姉はある年の雷の季節に行方不明になってしまう。姉の失踪と同時に、賢也は「風わいわい」という物の怪に取り憑かれる。風わいわいは姉を失った賢也を励ましてくれたが、穏では「風わいわい憑き」は忌み嫌われるため、賢也はその存在を隠し続けていた。賢也の穏での生活は、突然に断ち切られる。ある秘密を知ってしまった賢也は、穏を追われる羽目になったのだ。風わいわいと共に穏を出た賢也を待ち受けていたものは―?透明感あふれる筆致と、読者の魂をつかむ圧倒的な描写力。『夜市』で第12回日本ホラー小説大賞を受賞した恒川光太郎、待望の受賞第一作。

恒川光太郎さんの小説の中で最初に出版された長編小説です。

話は、穏という世界で暮らしていた少年が現代日本を目指すというものですが、少年や周りの人や者たちの過去・秘密が交錯しながら印象的なラストにつながっていきます。

生々しいストーリーに対する淡々とした文体と瑞々しい世界観の描写は、静かな恐怖を湛え、読後には爽やかな余韻を残します。

鳥の目から主人公達の物語をどこか他人事のように眺めながら、心地よくページをめくっていくと、いつものまにか話が終わっていたような。つっかかりなくサラサラと読める一冊です。

長編と言えどさほど長くはないので、短編好みの人でもサッと読むことが出来ると思います。

 

8位 草祭

たとえば、苔むして古びた水路の先、住宅街にひしめく路地のつきあたり。理由も分らずたどりつく、この世界のひとつ奥にある美しい町“美奥”。母親から無理心中を強いられた少年、いじめの標的にされた少女、壮絶な結婚生活の終焉をむかえた女…。ふとした瞬間迷い込み、その土地に染みこんだ深い因果に触れた者だけが知る、生きる不思議、死ぬ不思議。神妙な命の流転を描く、圧倒的傑作。(「BOOK」データベースより)

 

俺、もう少ししたらここから出ていくぜ。
でも、それはおまえらの世界じゃない。

ざわざわと風が騒ぐ幻の草原。
ぼくの友達はそこで、静かな金色の目をした獣になった。

怒りも悲しみも静かに朽ちていく不思議な場所、美奥が紡ぐ死と再生の物語。

引用:本書帯

 

団地の奥地から用水路をたどると、そこは見たこともない野原だった。
「美奥」の町のどこかでは、異界への扉がひっそりと開く――。

消えたクラスメイトを探す裕也、衝撃的な過去から逃げる加菜江……
異界に触れた人々の記憶に、奇蹟の物語が刻まれる。

S.キングを凌ぐ幻想美。
圧倒的なファンタジー性で魅了する鬼才、恒川光太郎の最高到達点!

引用:本書帯

「美奧」という町を舞台に、そこに関わる人びとの物語が4話収録された短編集です。

美奥は、一見するとどこにでもあるようなありふれた町の中ですが、その街角には幻や神秘といったファンタジーが、身を潜めながらも、違和感なく日常に混ざりこんでいます。

私たちが暮らす街にもこのような神秘や幻の類が実際に存在しているのでないかと想像してしまうような、そんな一冊です。

 

7位 秋の牢獄

 

十一月七日水曜日。女子大生の藍は秋のその一日を何度も繰り返している。何をしても、どこに行っても、朝になれば全てがリセットされ、再び十一月七日が始まる。悪夢のような日々の中、藍は自分と同じ「リプレイヤー」の隆一に出会うが…。世界は確実に変質した。この繰り返しに終わりは来るのか。表題作他二編を収録。名作『夜市』の著者が新たに紡ぐ、圧倒的に美しく切なく恐ろしい物語。

まるで童話のようなモチーフと、透明感あふれる文体。心地よさに導かれて読み進んでいくにつれて、思いもがけない物語の激流に巻き込まれる――。
数千ページを費やした書物にも引けを取らない、物語る力の凄まじさ。
圧倒的な多幸感と究極の絶望とを同時に描き出す、新鋭・恒川光太郎の珠玉の作品集。
(引用:本書帯)

恒川光太郎さんの3冊目の著書。3つの話が収録された短編集です。

3つとも話の舞台は現代日本であり、日常に潜むファンタジーが描かれています。

表題作の「秋の牢獄」はループもの、2つ目の「神家没落」は現代版迷い家のお話、3つ目の「幻は夜に成長する」は魔法使いの少女のお話、というようにそれぞれ話の趣向は異なります。

謎の残る、空白や余韻といったものが好きな人には特にお勧めできる一冊です。

 

6位 竜が最後に向かう場所

しんと静まった真夜中を旅する怪しい集団。降りしきる雪の中、その集団に加わったぼくは、過去と現在を取り換えることになった―(「夜行の冬」)。古く湿った漁村から大都市の片隅、古代の南の島へと予想外の展開を繰り広げながら飛翔する五つの物語。日常と幻想の境界を往還し続ける鬼才による最重要短編集。(「BOOK」データベースより)

 

風を、迷いを、闇夜を、鳥を。

筆写はわずか五編の物語で、世界の全部を開放してしまった。(本書 帯より)

5つの話が入った短編集。そのうちの3作は日常に潜むファンタジーであり、残りの2作は主人公が動物という異色作です。

個人的には「ゴロンド」という話が印象的です。竜が水中で生まれ、大人になり、最後の旅をするまでの生涯が、わずか50ページに収められています。

身近な家の蔵から、冬の海辺町、南国の島まで、さまざまな雰囲気を感じられる一冊です。

 

 

5位 私はフーイー

ヨマブリと胡弓の響き、
願いを叶えてくれる魔物、
ニョラの棲む洞窟、
林の奥の小さなパーラー、
深夜に走るお化け電車、
祭りの夜の不吉な予言、
転生を繰り返す少女フーイーが見た島の歴史と運命とは―。(BOOKデータベースより引用)

筆者が住んでいる沖縄を舞台にした不思議な民話をまとめた短編集。現在と過去が入り混じったようなような話が多いです。

主人達の過去が掘り下げられる話が多く、それぞれの話がリアルで重厚な背景をもって訴えかけてきます。

島の穏やかで神秘的な自然環境の中に潜む、殺人や妖怪の類、時代の流れと戦争。

沖縄の島の歴史を遠い過去から現在まで一気に見ているような、そんな感覚になる一冊です。

 

4位 ヘブンメーカー

気が付くと殺風景な部屋にいた高校二年生の鐘松孝平。彼は横須賀にむかってバイクを飛ばしている最中に、トラックに幅寄せされ……その後の記憶はなかった。建物の外には他にも多くの人々がおり、それぞれ別の時代と場所から、「死者の町」と名付けられたこの地にたどり着いたという。彼らは探検隊を結成し、町の外に足を踏み出す。一方、片思いの相手を亡くし自暴自棄になった大学生の佐伯逸輝は、藤沢市の砂浜を歩いていたところ奇妙な男に勧められクジを引くと――いつのまにか見知らぬ地に立ち、“10の願い”を叶えることができるスターボードという板を手渡された。佐伯は己の理想の世界を思い描き、異世界を駆け巡ってゆく……。興奮と感動をよぶ、渾身のファンタジー長編!

先に紹介したスタープレイヤーと同じ世界を舞台にしたお話。流れ的にはこちらの方が後です。

感想的にはスタープレイヤーの内容がさらに面白くなって帰ってきたといった感じです。前回が説明回で本作が本番といえるくらい話の世界も広がり、世界の核心に迫るものになっています。

話的にはやはりRPG感が強く、広大な世界をぐるっと旅したような感覚になる一冊です。

 

 

3位 金色機械

触れるだけで相手の命を奪う恐ろしい手を持って生まれてきた少女、自分を殺そうとする父から逃げ、山賊に拾われた男、幼き日に犯した罪を贖おうとするかのように必死に悪を糺す同心、人々の哀しい運命が、謎の存在・金色様を介して交錯する。人にとって善とは何か、悪とは何か。

作者初の歴史物長編小説。江戸時代を舞台に、謎の存在・金色様を介して、複数人の主人公達の過去が交錯する物語です。

複雑な過去が入り混じりますが、読みにくさを感じることなく、作者の力量を改めて実感できる一冊です。

第67回日本推理作家協会賞受賞作でありミステリー要素を含むほか、歴史ものであり、ファンタジー小説でもあるということで、独特なジャンルを築きあげています。

Amazonでは「ネオ江戸ファンタジー小説」と称されているようです。

歴史ものを普段読まない私でも読みやすかったので、歴史ものが苦手な人でも難なく読むことが出来ると思います。逆に歴史ものが好きな人には、斬新な印象を感じる一冊になるでしょう。

 

 

2位 南の子供が夜行くところ

からくも一家心中の運命から逃れた少年・タカシ。辿りついた南の島は、不思議で満ちあふれていた。野原で半分植物のような姿になってまどろみつづける元海賊。果実のような頭部を持つ人間が住む町。十字路にたつピンクの廟に祀られた魔神に、呪われた少年。魔法が当たり前に存在する土地でタカシが目にしたものは――。時間と空間を軽々と飛び越え、変幻自在の文体で語られる色鮮やかな悪夢の世界。(「BOOK」データベースより)

とある南の島を舞台に、7つの小話が展開されます。それぞれの話は少しずつ繋がっていて、一冊全体で島の歴史や不思議が語られるような内容です。

純粋にそれぞれの話が面白いのですが、個人的には「夜の果樹園」という話が印象に残っています。

主人公が突然犬になり、フルーツ頭の住人が住む街で暮らすというファンタジックなお話です。内容はなかなかダークファンタジーですが、斬新な設定と二転三転する展開が面白く、娯楽小説として楽しめます。

南の島に住んだことがないにも関わらず、なぜか懐かしい気持ちにさせられる不思議な魅力を持った一冊です。

 

 

1位 夜市

妖怪たちが様々な品物を売る不思議な市場「夜市」。ここでは望むものが何でも手に入る。小学生の時に夜市に迷い込んだ裕司は、自分の弟と引き換えに「野球の才能」を買った。野球部のヒーローとして成長した裕司だったが、弟を売ったことに罪悪感を抱き続けてきた。そして今夜、弟を買い戻すため、裕司は再び夜市を訪れた――。奇跡的な美しさに満ちた感動のエンディング! 魂を揺さぶる、日本ホラー小説大賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

筆者の原点であり、頂点とも言える作品。表題作の夜市に加えて、「風の古道」という短編が収録されています。

夜市は日本ホラー小説大賞を受賞した作品であり、話の出来は素晴らしいのですが、個人的には風の古道もオススメ。恒川光太郎作品の中で一番好きなのが本作です。

少年が迷い込んだ古道。
日常に隣接して存在し、神や妖怪が跋扈するその道で、少年は不思議な青年と出会う。

ともに旅をする中で明かされる、青年の正体と数奇な運命とは――。

端正で瑞々しい文体と、どこか懐かしさを感じさせる独特の世界観。

ひとまず恒川光太郎作品の最初の一冊はこの本がオススメです。

 

 

恒川光太郎オススメ小説まとめ

恒川光太郎さんのすべての小説を読了したのち、似た雰囲気の作品を探していますが、なかなか見つかりません。

穏やかで瑞々しい世界観と、生々しい湿り気を持った静かな恐怖。どこか懐かしさを感じるノスタルジックな空気は独特のものでしょう。

淡々とした無駄のない文章も、読み手の思考を妨げることなく、一層深い余韻に導きます。

個人的には、夜市に収録されている「風の古道」がオススメですが、他にも多種多様な短編があります。お気に入りの物語をぜひ見つけてみてください。

また新刊が出たら、こちらでまとめます。