【比較】日本特有?の高校野球的美学の話【企業文化】
そこのお前は高校球児でした。
弱小高校の。。。
甲子園に出たこともなければ、野球部を強くするために高校が特に手厚い保護をすることもありませんでした。
集まってくる生徒も野球にすべてを賭けるような子は非常に稀です。
どちらかと頭がいい目の学校だったので、野球にすべてを賭ける環境ではありませんでした。
野球がチームスポーツである以上、野球バカと呼べるほどに熱中する子が1年に1人いるかいないかでは勝てるわけもありません。
高校野球全般の非常にストイックな環境
高校野球部は比較的ストイックな割合が多い環境と言えます。
そこのお前の高校ですら決してイージーだったわけではありません。
外資系企業に入って、ある程度の年次を積んだ中でも人生で最もハードだったのは高校野球の時だったと思っています。
実際、所属する部員とその家族は該当する3年間をあらん限りのリソースを使って邁進していくほどにストイックな環境です。
ある親は子供に夢を乗せて、ある親は子供の成長を見守り、、、過酷な中でもそれぞれがその意味を見出しています。
こういうただただ燃え尽きるほどに自分の全てを野球漬けにする日々、そこまですべてを捧げているからこそ出る必死さやドラマ。
これが凝縮されたものが高校野球であり、特に甲子園です。
甲子園に出るような子たちはそれこそ並大抵ではない努力を積み重ね、その努力の苦しさすら自信に替えるぐらいの激しさを持っています。
まだまだ先の長い18歳程度の子がここで腕が壊れてもいい、体が壊れてもいい、そう考えながらすべてを賭けるわけです。
そういうノリ、実は案外好きです。
同時にそれが好きな人が日本人の中で一定数います。
実際、高校野球の生徒酷使問題や商業利用問題などがあれほど紛糾する議論を呼ぶほどに関心を集めるわけです。
プロ野球とは異なるファン層があり、いろいろなモチベーションで見る人がいます。
純粋に勝利への執念と目標を追いかける一途さに突き動かされた行動の希少性から大きな感動を生みだすわけです。
高校野球に2度目はありませんし、負けたら金輪際終わりという先のない世界です。
あそこまで誰かの期待や自分の目標・執念が全面に乗ったものは多くはありません。
これは別に高校野球だけではありません。
サッカーもそうですし、吹奏楽や柔道・剣道やバスケットボールなどあらゆるストイックな部活で起こりうるものです。
その中で高校野球が抜群の知名度があり、全国放送やプロスポーツとの連関が非常に強いことで目立つだけです。
一部の高校部活のストイックさは割と尋常ではない。
もちろん大学スポーツも十分に激しいですし、プロスポーツの場合は言わずもがなです。
プロスポーツはそれが選手のビジネスですし、大学スポーツは大学の部活が企業にパイプを持っているなど社会的なステータスも備えています。
が、同じようなストイックさがあるのに、進路や将来のリスクマネジメントをガン無視して一瞬のためにすべてを賭けるような場合すらあるのが高校部活です。
今は文武両道のバランスをきちんと制限する学校は増えてきてはいますが、働き方改革と同じで100%意図した効果があるかというとそういうものではありません。
今も甲子園を夢見て日夜恐ろしいほど努力する野球エリートたちは多くいます。
彼らが限界まで努力し、そして勝利をつかみ取ることに向き合う。
このストーリーに非常に強力な魅力と美学がつまっていると言えます。
今でも様々な甲子園をフィーチャーした番組、高校野球をテーマにした漫画、アニメなどはあります。
昔の根性丸出しのハードボイルドな体育会系的ノリは廃れましたが・・・
徐々にスタイルやトレンドは変わってきていますが、それでも高校生が己の限界を突き破る成長や逃げずに努力して結果をつかむというサクセスストーリーの基礎構図は昔から変わらず人気です。
野球漫画をざっと検索しただけでも有名なタイトルがものすごくたくさんヒットしますし、それぞれが非常に強い個性を放っています。
また、これらの激しい高校部活を経験した人たちが、社会人になって非常にストイックな働き方をすることがあるのも事実です。
これが日本の企業文化を形作ってきたとも言えます。
今は働き方改革も含め、より私生活を重視する欧米寄りの考え方にシフトし用とはしているようですが、まだまだストイックさは色濃く残りますし、そういった努力を称賛する人々は数多くいます。
欧米人の受け取り方
しかしこの高校野球的美学ですが、これが海外だと全くと言っていいほどウケませんでした。
もちろん、日本でも万人にウケるものではありません。
それでも日本人の文化的美学に通ずる部分があるのか、好きな人は本当に好きですし、共感する人は普通にいます。
それが欧州では全くと言っていいほど理解されません。
何度か欧州でも話をするのですが、
軍隊?
とかやや引き気味に言われたり、
彼らはプロにはならないんでしょ?なんで??
とか
侍教育だ!キラキラ
と言われたり
反応は様々ですが、基本的に想像を超えているようです。
彼らにとってはそこまで徹底したハードワークという文化が一般的ではないため、ほとんどが理解されませんでした。
部活も楽しんでやるもので、プロスポーツがかかっていない限りは基本的にそこまでストイックにはなりません。
ハードワークが生むドラマや得るものがあるのですが、確かにコスパは悪くなりますし、他に犠牲にする事柄も増えます。
欧州の人にはこういうドラマティックで何かにすべてを賭けるという発想はあまり好まれないのかもしれません。
欧州の人のほとんどが持たない発想・美学と言っても過言ではないでしょう。
とはいっても、日本人としての強みとなりうる
欧州の人が受け入れられないからと言ってこれらの美学や文化が全く無意味化というとそういうわけではありません。
正直そこのお前も大したプレイヤーではなかったわけですが、そこで学んだことはたくさんありました。
そもそも全く自分が生きない野球というフィールド
プレーするたびに痛感する才能の無さ
出ない結果
まぁ、その中でただただ恐怖と周りの目を気にする消極的な心にも突き動かされてやっていたわけです。
本当にその他大勢の「そこのお前」です。
ただ、それでもそこのお前の人生にとっては非常に大きな意味を持っています。
- 現状よりももっと良い状況を求める意識を植え付けられた
- 叱られる・指摘を受ける・苦言を呈されることに慣れた
- 個人ではなく集団で最大化することのいろはを学んだ
- ストイックさ、限界を突き破る感覚を体感した
- 勝負に勝つ執念を植え付けられた
- 根本的な挫折を理解した
などなど、一つ一つは非常に抽象的で具体的な成果に直接つながる内容ではありませんが、社会人キャリアが始まった今でも強く自分を援けています。
そういうハードな体験を持つことは無駄か?
今ではそういうことを会社がめちゃくちゃハードに求めてくるという事はなくなりました。
もちろん礼儀やマナーなどの最低限の嗜みは必要ですが、昔ほどハードに叩き上げられない環境に代わってきています。
実は、ハードな風潮が衰退したからこそ、逆にストイックさを発揮することで成果を積み上げることができたという側面も存在します。
そこのお前の会社の日本支社の同僚にも、会社のために全力を尽くすスタイルが好きという人は割といます。
そういう同僚たちが海外赴任から帰ってきて、日本の一致団結して全員で頑張っていこうという意識が好きだったという事を自覚したと言います。
会社に対してそういう思いを持たなければならないという事はありませんし、それでも会社が問題ないことは欧州の企業が証明しています。
ですが、滅私奉公とまではいかなくても、組織のために全力を尽くす意識やワークスタイルは日本人・日本的企業の持ついいところだと思います。
それはある意味会社で働く意義や集団に属すること自体が人生に幸福や充実を与えます。
無理して合わせたり、同調したりする必要はありませんが、こういう意識を持てる環境というのは案外幸せだったりします。
グローバル化や各種欧米化による影響でこういった良さを味わえる環境はどんどん希少化している気がしますから。。。。