~漂流中~

2017年6月、舌癌になった妻(39)が亡くなった。ADHDの息子(6)、頼りない自分(41)を残して…

■舌癌42 顎下の処置と、抗癌剤2クール目

2020年1月14日



2017年に妻が亡くなってから、

3回目の妻の誕生日を迎えました。

本当であれば、42歳を歳を迎える日でした。



妻の分の食事も用意して、夕飯を楽しもうとも

思っていましたが、

息子が体調を崩していまい、

余裕が無くなってしまいました😢






亡くなった人の誕生日を祝うのはよろしくない

という言われもあります。

うちは、祝うのではなく、

食べることが大好きだった妻が、

癌により一切食べることが出来なくなった事の辛さを

少しでも分かってあげようと、

もう我慢しなくていいんだよ、

という気持ちを込めて、

何か事がある度に、妻の分の食事や陰膳を用意して

妻の辛かった気持ちを和らげてあげようと

やっている事です。



亡くなった人の誕生日に何かをするのはダメ

歳を数えることはしない

という、この辺のしきたりのような言われは、

土地や風習などから来るものかと思いますが、

故人の思いと、

それを支えた人達の思いが一致している事であれば、

周りがどっかから仕入れてきた根拠も何もわからん

トンデモ話なんぞに振り回される必要は無く、

その思いを全うする事こそが供養そのものなんだと

思っています。



誕生日祝い、ではなく

誕生日弔い、だというのはすこし頷けます。

ただ、言葉があまりよろしくはないと感じますが。



故人の誕生日を祝うと、

思いが現世に留まり、あちらに行けない

なんて理屈が語られてるようですが、

それも、ただどこかで見聞きしたものを

さも理解してるかのようにひけらかしているだけの

たわけだと思います。



そもそも、仏教の基本的な教えでは、

魂は49日掛けて、極楽浄土へ行く準備をし、

49日を境に、現世への未練を断ち切って

あの世へ行って仏と成る。(これを成仏という)



ですから、49日を過ぎたらもう

極楽浄土へ行けて、仏様に成った。と解釈すべきで、

仏様には未練やら何やらという煩悩は無い。

という事でなければ、

仏になったのに煩悩全開かい!

って事になってしまいます。



御香典も、

49日よりも前の事であれば 御霊前 と書き、

49日以後の事であれば 御仏前 と書くのが

一般的ですよね。

49日を過ぎた故人の魂は仏様に成った。(成仏した)

との考え方から、

現世に残る霊魂に対しての供物は 御霊前

仏様になった魂に対しての供物は 御仏前

と言われる訳ですよね。



だから、49日の間に誕生日やら記念日があったら

祝いや、催し物をすべきではないと思いますが、

それを過ぎたら、未練だ何だと言うことは

そもそも存在しない状態にある。まさに仏。

という事が正しい解釈だと思っています。

そんな仏様に対して、

そんな事をしたら未練タラタラの煩悩仏になっちまうぞ!

なんて言うこと自体の方が

よっぽど失礼で厚かましい、

無知と無教養を振りまいてる行為だと感じます。






とまあ、だいぶ横道に逸れましたが、

前回の続きをお伝えしていこうと思います。



なお、更新の遅れについては

生暖かい目で見守っていただけたら助かります。



仕事の年度末(11月末)から、年末年始、

スノーボードの時期と、多忙を極める時期だったため

更新に時間が掛かっています。

当時の記録がしっかりと残っておらず

(記録を残しながら日々過ごす事が出来なくなってきた時期だったため)

散らばった記録と、記憶を頼りに記事を書いている事も

原因になっています。

何卒。









2017年2月25日



抗癌剤フルドーズの1クール中に

その副作用の辛さに気持ちが折れそうになった妻ですが、

ようやく休薬期間に入ったことで

治療を挫折しそうになるほどの苦しい状態からは

緩やかに回復してきている。

しかし、調子が上向いてくる期間は

ものの1週間ほどだろうか。






🧑今日、昼から緩和ケアの先生と

 相談出来ることになってるから、

 俺と、妻と、お義母さんとで話出来ればと思ってる。

 気持ちが揺れる状況、自分はよくわかってるつもり。

 何かを決める事なんて出来ない。

 話し合いの中で何か結論を出そうだなんて思ってない。

 ただ、想いを伝えて、どういう方法があるか、

 覚悟を決めた人にしか提案できない方法も含めて

 相談していきたいんだ。

 どんな状況にあったとしても、決して辛い状況に

 なってしまわない為に。






先日、もう治療を止めたいと助けを求めた妻の思いを、

一度しっかりと緩和ケアの先生に相談し、

これからの辛さ、特に抗癌剤の副作用に対して

どんな対策が打てるのか話し合いをする事になっていた。



緩和ケアチームの方々は、

本当に親身になって話を聞き、

そして可能性のある提案と、

不安を取り除くための見通しをいくつも教えてくれた。



私は、妻が抗癌剤の副作用で

一度は治療を止めたいと訴えたこと、

その決断に伴う妻の決意を伝えた上で、

治療を止めるという選択肢を含めた時の、

この先で、緩和ケアとして出来ること、

辛さを取り除く方法、

治療を止めてしまうが為に起きてくる治療以上の辛さ、

癌を放置したらどうなってしまうか…など、

少々怖い、嫌な話も含めて確認し、

たとえ治療を止める、という選択をしたとしても、

その中で一番自分にとって辛くない方を選ぶ為の

必要な情報をしっかりと確認出来ました。



本当に沢山の事を話しました。

結果として、その後妻が選んだ道は

1クール目の抗癌剤で、

副作用がどうでるかをよく判断出来たため、

それに対する充分な緩和対策を講じた上で

抗癌剤治療を続けていく。

という事になっていきます。



この時話した事のうち、

恐らく誰しもが知りたい気持ちはありつつも

聞くに聞けないであろう、

全ての治療を拒否した時の想定される結果について、

沢山の症例を見てきたプロの意見を

少しショッキングな内容も含みますが、

あえてご紹介ををします。



この記事の最後に記載しますので、

見たくない方は、その手前まで読んでいただいたら

他のページへ移る事をお勧めします。






緩和ケアチームとの相談の後、

自宅へ帰ると、宅配便が届きます。



こ、これは…



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VAIOが届きました!



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フルオーダーメイドでのみ選択出来る

ディズニー公式のミキミニモデルです!



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🧑余計なものが一切無い(゜▽゜*)

 スーパーシンプル イズ ベスト!

 フタを開くと立ち上がるミキミニ💖



👩ヤバい!

 カワイすぎ!

 早く使いたい!



2人でテンションMAXになりました(笑)

スペックもそこそこにしていたので、

Windows10モデルで、

起動9秒、シャットダウン2秒という爆速仕様💕

早く使えるようにして、

妻のところに持って行ってやります!






2月26日、27日



調子はほどほど。

食欲も少しづつ戻ってきている。



そして、顎下の穴が空いてしまった場所の

処置の方針が決まってくる。



口腔底から貫通する穴が出来てしまった場所の周囲は、

抗癌剤1クール程度には何の反応も示さずに

赤く固く硬結する部分が顎の両端方向と、

顎の先端へと広がりつつある…



見えている外側だけでもこの状態。

舌の下側は一体どうなっているのだろうか…



顎下の洗浄処置としては、

喉元に大きくガーゼをあてて、

創部にシリンジ(注射器の針を外してあるもの)

を使って、刺激が少ない温度の水を掛け、

柔らかいガーゼで押さえるように

水分と、血液、膿んで溶けたような組織、

前に付けた薬などを慎重に拭いとっていく。



通常、擦り傷などに水を掛けるだけでも

相当に沁みて痛いと思うのだが、

緩和ケアにより適切に管理された

モルヒネ系の痛み止めを常時使用しているためか、

水の刺激や、押さえ拭きで痛みが出ることは

殆ど無いらしいのが、せめてもの救いか…



しかし、この処置を見ていた妻のお義母さんは、

妻の顎下から剥がれ落ちる細い繊維状のものを見て、

看護師に 「あれは何が取れているの?」 と

聞いたそうです。



その際の看護師の回答を聞いたあと、廊下で、

「私たちは、あの子に何もしてやれない!

あんなに苦しんでいるのに、見ていることしか

出来なくて、でも、辛いって本人も言わないし、

私達も言えなくて、本当にどうしたらいいの!?」 

と泣き崩れてしまったと聞きました。



看護師が答えたのは、

妻の、顎下の血管か、神経組織が剥がれて

取れているんだと思います…

という事だったそうです。



愛する人、自分の娘、大切な人…

その体を尽く破壊し、

生きる力を削いでいく癌の恐ろしさ。

その容赦の無さは半端ではありませんでした。






後に、この顎下の水洗いの際に

洗剤も使って泡で洗浄までしていく事になります。

その際に、低刺激なものということで

使っていたのはこれでした。



花王 キュレル 泡ボディウォッシュ
www.kao.com






洗浄後は、ガーゼ生地、女性ものの夜用生理用品、

小さめのオリモノシート、大きなガーゼパッド、

テープなどを使い、

顎下の穴の中、顎下、首の裏側などを保護し、

滲出液などの汚れから、

体や衣服、ベッドなどを守っていきます。



その際、ガーゼ等をそのまま患部に貼り付けてしまうと、

癒着してしまい、剥がす際に大変な痛み、出血、

組織を傷つける等が起きてしまうため、

患部に直接触れる部分は、

貼り付かない事と、

少しでも皮膚組織が改善するようにと

次の2つの軟膏をたっぷりと塗ったものを使いました。



テラマイシン (KEGGデータベースより)
www.kegg.jp
表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、慢性膿皮症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、びらん・潰瘍の二次感染、など。




カデックス (KEGGデータベースより)
www.kegg.jp
褥瘡、皮膚潰瘍(熱傷潰瘍、下腿潰瘍)



どちらの薬も禁忌等、重要な注意事項がありますので、

必ず医師の指示のもとで用法用量を守って

使ってくださいね。



具体的には、

ガーゼ生地にカデックスをたっぷりと揉みこんで

染み込ませ、ふんわりと丸めた団子状のものを、

穴の空いた顎の中へ…

穴は口腔低へ貫通しているため、

薬の味がしてきそうだが、

本人曰く気にならないということ。

このガーゼは、口腔内から漏れてしまう液類を

堰き止め吸い取る役目にもなる。



顎下全体には、吸水性の良い大きなガーゼパッドに

テラマイシンを塗ったものを貼り、

創部の乾燥や出血を防ぎます。

更にそれを被うように、

夜用生理用品にテラマイシンを塗ったものでカバーし、

顎の下全体を被うようにテープで貼り付ける。

これで浸出液の殆どを吸収させ、

首や衣服等の汚れを防ぐ。

足りない部分は、

オリモノシートなども合わせて使っていく。



これらがズレないように、テープは顎下から両耳方向と、

首の裏方向も貼っていき、

首の裏側にも小さな生理用品を使って

伝い漏れによる汚れから保護する。



ただ、ここまでガッチリと対策をしていたのは、

確か2017年の4月頃からの事。

この記事の日付から1ヶ月半後。

2月3月頃はまだ、

顎下に大きなガーゼを貼るだけで足りていました。

カデックスやテラマイシンといった軟膏も

殆ど使っていなかったと記憶しています。






2月28日



休薬期間も終わり、

抗癌剤2クール目がスタートする。



今回は、緩和ケアの相談で決めた通り、

吐き気のコントロールを初めとする、

様々な事前対処を行ってからの投薬。

これが功を奏する事を願う。



抗癌剤は前回と同じ内容で、

セツキシマブは通常通り。

シスプラチンは、吐き気対策として1段階減らす事も。

5FUは状況を見ながら調節していく。



そして、投与から2週間後には骨髄抑制が来る。

このタイミングは白血球の数値が落ち、

免疫力がほぼ無くなるため、

場合によっては無菌室などで処置を続ける必要が

あるかもしれない、という事。



いずれにしても、また約1ヶ月間の戦いだ。

3月末頃にはまた調子がいい日が戻ってくる。

それまでの辛抱だ、と妻を鼓舞する。



妻の思いは、

まずは、3月4日からの

息子の初スノーボードを見届けること。

そして、

今から1年後の卒園式、小学校入学式を見届けること…

その目標に向けて、

一度は諦めそうになりかけた治療にも

躊躇することなく立ち向かっていく。



私は、数日後に迫った息子と、昔からの友人との

スノーボード旅行に備えるため、

妻を励まして、病室を後にしました。

この妻の命を削り落とすような抗癌剤治療が

妻に安息の日々をもたらしてくれる事を願って…









★ 以下、ショッキングな表現をやや含みます ★

★ 見たくない方は、ここで別ページへ移りましょう ★












それでは、

緩和ケアの先生方に聞くことが出来た、

全ての治療を拒否した時の想定される結果について

以下に記載します。




妻の場合、

舌癌から始まったものの、その後の病巣の中心は

口腔低に移り、口腔底から顎下へ穴を貫通させ、

しかも、頚部リンパ転移や、

そのリンパが頸動脈に癒着してしまった事などがあり、

特に起きてくる事は、次の点を上げていました。



■口腔低の穴の拡大。

■顎を動かすことが出来なくなる
 これらにより、ものを食べる、飲み込むという事が
 出来なくなります。

■頚部の転移部分が肥大化と、
 それに伴う腫れ、浮腫などにより、
 頸動脈圧迫、気管圧迫、その他循環器管の狭窄
 などから、顔全体の浮腫、鬱血。
 脳への血流が阻害され、脳死
 または、気管が潰れ呼吸不全。
 または、癌化した頸動脈が破れ大出血による失血死。
 


どれも、生半可な精神状態では

聞くことも難しいことだと思います。



ですが、一度は治療を止めると自ら判断した患者本人が

望むのであれば、その結果を、想定できる範囲で

正しく伝えていく、という事も医療従事者として

大切な事なのではないかと私は思います。



少なくとも、妻はこの話があったからこそ、

治療を諦める、なんて事は考えなくなりました。



多くの困っている方々が、この情報を正しく理解し、

自分たちに残された幸せの為に活用頂けることを願います。



決して悪戯に拡散したり、

不安を煽る為の知識としない事を祈ります。