はっきりと記憶にあるわけでは無いが、もう15年ぐらい前だったろうか?
40代も半ばを過ぎた頃で、だんだん広告業界がイヤになってきていた。
当時、ネット広告が存在感を増し始めてきたころで、広告やマーケティングの中でよく「プル型」「プッシュ型」という表現が専門メディアで取り上げられることが多かった。
制作側である自分の仕事は、受け手側に「感じてもらう」キャッチコピーやビジュアル、あるはデザインで仕掛けるわけで、主導権はあくまで読者や視聴者など広告を見る側にあった。これがプル型。
プッシュ型はその反対。
見たくもない、興味も無いのに、どんどん広告が追いかけてくる。
チラチラした目障りな動きが、無防備にマウスを持つ手やタッチパネルの指を誘う。
バナー広告には「デザイン性」は必要無い。いや、必要なんだけど、それは自分がこだわってきたデザインというものではなく、「目障りな仕掛け」なのだ。
袋文字、影文字、過剰な装飾を求められ、派手な色づかい、キラキラした発色、煽りの言葉。
イヤだったな。
だが、時代はネット広告全盛となる。紙媒体の仕事が減る一方、イヤイヤ始めた小さなネット広告の仕事がコンスタントに入ってくるようになる。皮肉にも、リーマンショック後は危機に陥っていた会社に欠かせない仕事になっていった。
その後は、通信及び機器の大容量化と比例し、ビジュアルもどんどん表現領域が広がり、今では若いクリエイター達が次々と登場し素晴らしいクリエイティブを生みだすようになってきたが、広告表現の「過剰性」「装飾性」「煽り」は定着してしまった。主だった関係者を説き伏せられる結果(数字)を出せるのだろう。
いまでは、ムーブメントは「作れる」ものだと思うようになった。大量にプッシュすればいい。人目を惹く強烈なインパクを提示できればいい。
共生、共感という言葉がよく使われる。でもそれは、人為的に作られるケースが多い。(故に、民衆レベルから自然発生したムーブメントは魅力的だ)
あろうことか今、国家レベルでムーブメントを作ろうとしている。プッシュプッシュだ。
キャンペーンはセンスがなければ成功しない。
Go Toって。