血糖値の乱高下の鑑賞方法

遊園地のジェットコースターが

血糖値グラフに見えるようになったら,糖尿病も本物です.
このグラフについては,highbloodglucoseさんのブログに『〜するなと言われても一喜一憂〜』とあるのは,まさにその通り.

医師が糖尿病患者を診察する時は,スポット値である空腹時血糖値と,過去2か月の平均血糖値指標である HbA1cだけしか見ませんね.患者の血糖値グラフをいちいち詳細に見ている暇などないのです.ただ 最近はリブレが普及してきたので,医師もグラフ全体を一瞥して,いわゆる『血糖値の乱高下』がないか,また投薬患者であれば,夜間の低血糖がないか,このあたりまでは見てくれるでしょうね.

しかし,このグラフのうねうねと上がり具合・下がり具合は,1年前と今とでよくなっているのか or 悪くなっているのか,その乱高下ぶりを,感覚ではなくこれを数値で評価したいと感じることは多いと思います.

標準偏差で評価できるか

血糖値グラフに限らず,一般にデータが大きくばらついて分布する時は,標準偏差を用います. 確かにこれでデータのバラつき,そして乱高下の上下幅は評価できます.しかし時間軸の情報が消えてしまうので,「データが短時間で急上昇(or急降下)する度合」が表せないのです.

たとえば下のグラフでの2本のグラフは,どちらも平均血糖値=110,標準偏差=22 とまったく同一です.

しかし,どう見ても赤の線の方が,緑の線よりも激しく変動しています. よって標準偏差では 乱高下は評価できないようです.

高くても平坦,低くても乱高下

さらに,こういう場合はどうでしょうか?

この2つの線で,たしかに緑の線は平均血糖値は高いが,乱高下は赤い線の方が激しい. 果たしてどちらが体に悪いのか.

GVI [Glycemic Variability Index] 血糖変動指数

まるでミミズのようにのたうつ,このグラフのいい評価法はないものか. そうだ,ミミズならミミズとしてとして評価すればいいのだ!…と考えたらしく【嘘です】,Tom Peyserという人が GVIという指標を考案しました.

この方法は非常にわかりやすいものです.このように変動している血糖値グラフがあったとして;

このグラフの線に沿って一本の”紐”が置いてあるとみなして,紐の一方を固定して他方を引っ張ります.

ピンと張った紐の長さを図れば,それが GVIです.乱高下が激しいほど紐の長さは長くなります.まったく変動せずに,1日中一定の値であれば,それはどのグラフよりも最少の長さになります.

実際のGVIの計算法は,下図の通り,グラフの各点の間の距離をピタゴラスの原理により計算します.

さきほどのグラフで GVIを計算してみると,

たしかに
赤= 575
緑= 360
となり,実感と一致しますね. 何か月かの間隔で「定点観測」を行い,GVIで評価してみるのもいいかもしれません.
ただし,異なるグラフのGVIを計算して比較する際には,当然 2つのグラフの点の数が等しいことが条件です.1時間置きのグラフと,1分置きのグラフとは比較できませんので念のため.

リブレはGVIを計算してくれません

せっかくリブレが血糖値の変動をグラフで見せてくれるのですから,ついでにこのGVIを計算してくれてもよさそうに思いますが,残念ながら それは不可です. GVIは DexCom社が特許で押さえており,リブレの製造元:アボット社とは血糖測定器で競合関係にあるからです.ただリブレからダウンロードしたDataからGVIを算出するツールは米国で出回っているかもしれません.

なお,よく似た言葉でGI( = Glycemic Index)がありますが,GVIとは別物です.


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