孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

南米  エクアドルはとりあえず収束するも、チリで混乱拡大 大統領選挙のボリビアは?

2019-10-22 22:42:04 | ラテンアメリカ

(チリの首都サンティアゴで起きた抗議デモのさなかに、燃える車の写真を撮る男性(20191019日撮影)【1021日 AFP】)

 

【エクアドル 政府側が燃料補助金廃止を撤回 財政再建先送り】

南米・エクアドルで先住民が先頭に立った政府への大規模な抗議行動が起きていると言う件は、109日ブログ“

南米エクアドル  燃料補助金撤廃を契機に大規模な反政府行動 左派前政権と右傾化した現政権の確執も“で取り上げました。

 

この件は、結局政府側が折れる形でひとまず収束したようです。

 

****エクアドル大統領と先住民団体、デモ終結で合意 燃料補助金廃止を撤回****

南米エクアドルで燃料価格の高騰に抗議するデモが暴徒化していた問題で、抗議行動の中心となっていた先住民団体の代表とレニン・モレノ大統領が13日、2週間近く続いたデモの終結で合意した。

 

モレノ大統領は首都キトで、エクアドル先住民族連盟のハイメ・バルガス会長と4時間にわたり会談。その様子は国営テレビで生中継された。

 

会談は国連とカトリック教会が仲介して実現したもので、国連職員が読み上げた共同声明は「この合意により、エクアドル全土への(デモ隊の)動員は終了し、われわれは国内の平和回復に全力を尽くす」と述べている。

 

また政府は、国際通貨基金から42億ドル(約4500億円)の財政支援を受けるための緊縮政策の一環で廃止した燃料補助金について、廃止命令を撤回した。

 

フェイスペイントを施し、頭に羽根飾りをつけて会談に臨んだバルガス氏も、「われわれの土地に適用されたこの措置(燃料補助金の廃止)は、撤回された」と声明の内容を追認した。

 

エクアドルでは燃料補助金の廃止を受けて燃料価格が高騰。全国からデモ隊がキトに集結し、12日間にわたるデモで7人が死亡する事態に発展した。

 

モレノ大統領は首都キトとその周辺地域を対象に夜間外出禁止令を発令し、デモ鎮圧のため軍の管理下に置いたが、13日も会談が始まるまでデモ隊と治安部隊との衝突が続いていた。

 

当局は、一連のデモで1349人が負傷、1152人の身柄を拘束したとしている。 【1014日 AFP】AFPBB News

******************

 

ただ、燃料補助金廃止の撤回でIMF融資がどうなるのか、何より財政再建がどうなるのか?という基本的な問題が出てきますので、今回の合意は将来また別の形で噴出するトラブルのもとになるかも。

 

【チリ 非常事態宣言のもとで混乱継続】

エクアドルの混乱がとりあえず収束したころ、とってかわったように混乱が表面化したのが同じ南米のチリ。

 

****チリ首都で非常事態宣言、地下鉄運賃の値上げめぐり暴動*****

チリのセバスティアン・ピニェラ大統領は18日夜、首都サンティアゴに非常事態宣言を発令し、治安に関する権限を軍に委譲した。同国では、地下鉄の運賃値上げに対する抗議活動が行われ、暴動も起きていた。

 

ピニェラ大統領は、「非常事態を宣言するとともに、わが国の有事立法の条項に従い、ハビエル・イトゥリアガ・デル・カンポ少将を国防のトップに任命した」と述べた。

 

デモ参加者らは18日、市内の複数の場所で機動隊と衝突。複数の駅が襲撃を受け、地下鉄の運行が停止された。

 

夜になると暴動は激しさを増し、市の中心部にあるイタリアの電力大手エネルのビルやチリ銀行の店舗には火が付けられ、複数の地下鉄駅には火炎瓶が投げつけられた。

 

地下鉄駅への襲撃により、路線網全体が閉鎖を余儀なくされた。人口が密集するサンティアゴにおいて地下鉄は主要な公共交通機関で、毎日300万人が利用している。

 

地下鉄の運賃は今年1月に20ペソ(約3円)値上げされたのに続き、今回はピーク時の利用で800ペソから830ペソ(日本円で約122円から約127円)に値上げされた。 【1019日 AFP】AFPBB News

********************

 

チリでの暴動というと、社会主義政権としては初めて自由選挙によって合法的に政権を獲得したアジェンデ政権の軍事クーデターによる崩壊、映画「サンチャゴに雨が降る」(75年)「ミッシング」(82)などが思い浮かびます。

 

21日までの死者は11名にのぼり、混乱は現在も進行中です。

 

****暴動続くチリ、外出禁止令3日目へ 首都サンティアゴなど****

南米チリで地下鉄運賃の値上げ反対デモをきっかけに起きた暴動と略奪による死者は、21日までに計11人に達し、首都サンティアゴなどで3日目となる夜間外出禁止令が発令された。

 

治安維持トップに任命された軍のハビエル・イトゥリアガ・デル・カンポ少将は21日、3夜連続で午後8時から翌朝午前6時(日本時間22日午前8時から午後6時)までの外出禁止令を布告した。

 

イトゥリアガ少将は外出禁止令は「必要」だと強調したが、この日、首都サンティアゴのデモは平和的に行われた。市内のイタリア広場では数千人が、中南米のデモでよく見られるように鍋やフライパンをたたきながら、「ピニェラは辞めろ!」「軍は出て行け!」などと連呼した。

 

一方、サンティアゴ郊外のマイプー区や、バルパライソやコンセプシオンなどの地方都市では、暴力行為や略奪が発生している。

 

18日のデモ開始以降、過去数十年間で最大の混乱の中で約1500人が拘束されている。地下鉄運賃の値上げが引き金となって発生した抗議デモの参加者らは、より広範な社会的不平等に対して主に怒りを抱いており、セバスティアン・ピニェラ大統領と軍に不満をぶつけている。

 

ピニェラ大統領は20日夜までに、全土16州のうち首都圏州とその他9州に非常事態宣言を発令した。チリで市街地に軍が配備されたのは、1973年から1990年まで続いたアウグスト・ピノチェト将軍による軍事独裁政権以来。 【1022日 AFP】

*********************

 

【ボリビア 疑惑の大統領選挙 国際社会も疑念】

一方、新たな混乱も懸念されるのが20日に大統領選挙が行われたボリビア。

 

4選を狙う現職の左派エボ・モラレス氏(59)と、中道カルロス・メサ元大統領(66)の事実上の一騎打ちとなり、昨日までの報道では得票率の差は7ポイント程度で、決選投票が確実視されていました。

 

1回目の投票で当選を決めるには「有効票の5割以上の獲得か、4割以上の得票で2位候補に10ポイント以上の差」という条件をクリアする必要があります。

 

****南米ボリビア、大統領選が投開票 モラレス、メサ両氏の決選投票に*****

南米ボリビアで20日、任期満了に伴う大統領選が投開票された。選挙管理当局の集計の結果、候補者9人のうち4選を狙う現職の左派エボ・モラレス氏(59)と、政党連合「市民共同体」の中道カルロス・メサ元大統領(66)の上位2者による決選投票に持ち込まれることが確実となった。

 

事前にはモラレス氏が優勢とされたが、多選批判が強かった。決選投票は1215日が有力視されている。

 

選管当局の集計速報(開票率約83%)によると、得票率はモラレス氏が約45%、メサ氏が約38%だった。【1021日 共同】

******************

 

上記【共同】も“決選投票に持ち込まれることが確実となった”と。

開票率約83%で7ポイント差ですから、当然の判断です。

 

ところが・・・・

 

****ボリビア現職大統領が一転当選か 選管集計、対抗陣営は非難****

南米ボリビアの選挙管理当局は21日夜、丸1日止まっていた大統領選の集計速報を再開した。開票率約95%で現職の左派モラレス氏が46.86%を得票し、当選が濃厚に。選挙当日の20日夜には決選投票が確実な情勢だった。

 

36.72%で2位の中道メサ元大統領側は「不正があった」と非難、支持者の抗議行動など混乱も予想される。

 

当選には過半数を得票するか、40%以上を得票した上で2位と10ポイント以上の差をつける必要がある。20日夜の集計速報では、2人の票差は10ポイント未満。その後集計速報が止まり、21日夜に再開するとモラレス氏がリードを広げていた。【1022日 共同】

******************

 

1日止まっていた開票速報が再開されると、7ポイント差が一気に10ポイント差へ・・・・本当かね?

 

開票率約83%から95%の間で、そんなに大きな変化が起きるものか?

よほどモラレス氏が圧倒的な「地盤」の票が開票されたならあり得るのでしょうが・・・・もし、そうなら選管はそのあたりを公開説明する必要があるでしょう。丸1日開票速報が止まった理由と併せて。

 

****ボリビア大統領選 現職のモラレス氏当選濃厚に****

(中略)モラレス氏は2006年、白人中心の社会だったボリビアで初めて先住民出身の大統領となった。

 

13年の任期中に格差是正や経済発展を遂げ人気は根強いが、事実上、憲法の再選規定を破って出馬を強行した今回の大統領選では「独裁化している」との批判が高まっていた。新大統領は来年122日に就任し、任期は5年。

 

一方、国際社会からは速報を中断した開票作業の透明性を疑問視する声が上がった。米国務省高官は「当局は市民の意思が尊重されるよう、透明性を取り戻すべきだ」とツイート。

 

米州機構(北中南米全35カ国参加、OAS)の現地の選挙監視団は「深い懸念」を表明した。

 

メサ氏の支持者らは「不正があった」として抗議デモを展開した。【1022日 毎日】

******************

 

民主主義を象徴する選挙を愚弄するような薄汚い行為だけはあってほしくないですね。

このままでは対立候補側が騒ぐのも無理からぬところでしょう。

 

なお、“調査では、メサ氏が決選投票で35.8%の得票率となり、モラレス氏の35.5%を抜いて勝利する可能性が示唆されている。”【1011日 ロイター】と、決選投票になるとモラレス氏落選の可能性もあると、選挙前には取り沙汰されていました。

 

【南米の「原材料ジレンマ」 中東でも混乱拡大】

****世界で抗議デモ****
中南米国家のエクアドルやホンジュラスでも最近、反政府デモが起こっている。27日に大統領選が行われるアルゼンチン、今年「1つの国、2人の大統領」体制を実施しているベネズエラの社会混乱も深刻だ。

 

ブルームバーグ通信は、中南米全体が「原材料ジレンマ」に陥ったと診断した。

 

中南米は2000年代、原油、鉄鉱石、銅など原材料の価格上昇の時期に政権に就いた左派政府のばらまき福祉政策に慣れている。

 

最近の世界景気の鈍化で原材料の価格が急落すると、福祉の恩恵が減り、景気も以前ほどではなくなった。このような中、緊縮を叫ぶ右派政権が次々に政権を獲得し、庶民との葛藤が避けられなくなったのだ。

経済難と長期独裁に苦しむ中東各国も同様の状況だ。17日、レバノン政府がオンラインのメッセンジャーアプリ「ワッツアップ」に1ヵ月6ドルの税金を課すと明らかにすると、憤った国民が街頭に出て抗議した。エジプト、イラク、チュニジアなどでも経済難や独裁反対を叫ぶデモが続いている。

 

6月初めから4月間以上、深刻な反政府デモが起こっている香港の状況も収拾の兆しが見られない。【1022日 東亜日報】

********************

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 報道の自由  「知る権利」... | トップ | フランス  国名変更までし... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ラテンアメリカ」カテゴリの最新記事