さて、RCTのサブグループでランダム性(化)は保たれるか?という実は難問についてですが、私なりに結論がでました。それは「保たれる」ともいえるし、「保たれるとは限らない」ともいえる、です。以下に解説します。

【ランダム性とは】
まず、問題をややこしくしている根本は、「ランダム性」の指すものの解釈の違いでした。私は「ランダム性」とは、介入/非介入の割付が無作為に行われているか、すなわち「割付無作為化の成功」だと思っていました。例えば置換ブロック法でブロックサイズがわかっていると、次の割付が予見できちゃいますから、割付無作為化が失敗しているかもしれません。そこちゃんとしていることが「ランダム性」が保たれることだと。ところが、「ランダム性」=「共変量のバランスがとれている」と解釈する人が多いようです(だからこっちの方が正しいのかも)。

【共変量のバランス】
ちなみに、「共変量のバランス」についても2通りの考え方があると思います。1つは「母集団全体における共変量の均等分布」です。RCTは(未知のものも含め)全ての共変量が介入/非介入で均等に分布することが強みです。が、あくまでそれは同じような規模のRCTをひたすら繰り返して、メタアナリシスした集団(≒母集団全体)においてのハナシです。1つのRCTで全ての共変量が均等に分布することはあり得ません。ただ、「RCT内の共変量の偏りの均等分布」という考え方もあります(というかこれが本筋?)。1つのRCT内で共変量の分布が偏るのは仕方ないとして、その偏りは結果に有利な因子/不利な因子で均等に起こるはず。なので因果関係の証明にそうバイアスはかからないという考えです。当然サンプルサイズが大きくなる程、より解析集団内での共変量の偏りの分布は均等に近づき(よりバランスがとれ)ます。

【もうちょっとわかりやすく?】
まず割付無作為化の成功/失敗と共変量(の偏り)の分布の相関図を示します。無作為割付の図
割付無作為化が成功すると、理論上は同じようなRCTを繰り返して統合した場合に「母集団での共変量の分布は均等」になります。そして、「RCT内での共変量の偏りの分布」も均等に近いはずです。ただし、サンプルサイズが十分ではないと、偶然不均等になっている可能性も否定できません。その場合は「ランダム性」=「割付無作為化の成功」と考えれば「ランダム性は保たれている」わけですが、「ランダム性」=「RCT内で共変量の偏りの分布が均等」と考えれば、「ランダム性は保たれていない」ことになります。

ここで研究集団からサブグループを抽出したときのことを考えます。研究集団全体での「割付無作為化が成功」しているのであれば、当然サブグループでも「割付無作為化が成功」しているでしょう。ただし、必然的にサンプルサイズは小さくなりますから、「RCT内での共変量の偏りの分布」はより不均等になり得ます。

本来1つのRCTで結論を出すことは不可能です。なのでRCTをたくさんやって、メタアナリシスするのが王道。でも実際RCTを複数やるのは非現実的であり、1つのRCTで検証的な結果を出さなければなりません。その場合重要なのは「RCT内で共変量の偏りの分布が(ほぼ)均等」であること。RCTのサブグループ解析についての記事で、サブグループ解析の弱点の1つとして「共変量のバランスが崩れる可能性がある」ことを述べましたが、共変量の偏りの分布が不均等になりやすいサブグループ解析は注意が必要というわけです。

【まとめ】
RCTのサブグループでランダム性(化)は保たれるか?という問に対する(私のなかの)正解は、(もともと成功しているなら)「割付無作為化の成功」は保たれるけど、「RCT内での共変量の偏りの分布の均等性」はある程度保たれるかもしれないし、保たれないかもしれない、です。疲れた…ほんとにあってんのかなこれで。どなたか間違ってたら教えて欲しいっす…