『王とサーカス』
『さよなら妖精
』の太刀洗万智が異邦でふたたび大事件に遭遇。
この作品は前年の『満願
』に続き2年連続ミステリー三冠達成と言う偉業を果たしました。
2001年6月、新聞社を辞めたばかりの太刀洗万智は、ネパールのカトマンズにいた。
知り合いの雑誌編集者から海外旅行特集の取材を依頼されたのだ。現地で知り合い親しくなった少年にガイドを頼み、取材を始めようとした矢先、王宮で国王をはじめとする多数の王族が殺害される事件が勃発。太刀洗は早速取材を開始した。そんな彼女の前に取材で会ったばかりの男の死体が……。これは王族殺害事件と関係があるのか。彼が殺害されたのは自分のせいなのか。彼女は悩みながらも真相を探っていく。
2年連続ミステリー三冠で話題になった作品ですし、書店でも大きく取り扱われていたのはずっと見ていたのですが、タイトルなどを見て今一手を出しかねていました。文庫化されてようやく読もうかな、と。
たしかに充実した作品です。ミステリーとしても素晴らしいですし太刀洗万智を始めとした登場人物たちの人間ドラマとしても読み応えがあります。ジャーナリストとしての使命とは何なのか?大きな事件を取材することの意味とは?太刀洗万智は色々なことに悩み、自ら答えを求め取材を進めます。人を信じるとは?裏切りは何を意味するのか。結末は、重く苦みを伴う物でした。しかし、太刀洗はこの後もジャーナリストとして生きる事でしょう。重たさも苦みも読後を決して不快にする物ではありませんでした。
『真実の10メートル手前』
これも、太刀洗万智を主役にしたシリーズで、6作の短編からなる短篇集です。実は私はこの作品集を『王とサーカス』の前に読了。とても面白かったので『王とサーカス』に手を出してしまったのです。
時間的には、『王とサーカス』を挟んだ前後が舞台。なかなかこったミステリーの要素もあり冷静な太刀洗万智の視線が生きています。
「真実の10メートル手前」
「さよなら妖精」
「満願」