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【ネタバレ注意】ゴジラ信者が作り上げた最高の宗教映画 ゴジラ キング・オブ・モンスターズ 感想

こんにちは、僕です。

今回は久々に映画の感想記事を書こうと思います。取り上げる作品は5月末に公開が始まったハリウッド版ゴジラ最新作ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』です。2014年に公開されたGODZILLA ゴジラの続編であり、2017年公開のキングコング:髑髏島の巨神』と世界観を同じくする『モンスターバースシリーズ』の3作目となります。

端的に言って非常に満足度の高い作品でした。期待はしていましたが、その期待を軽く飛び越えるものだったと思います。これは根っからのゴジラ信者が作り上げた、ゴジラゴジラ映画を信仰する『宗教映画』です。


怪獣映画へのリスペクトと圧倒的な礼賛

一言で言えば最高にイカれた映画でした。ゴジラフリークからすれば「これを待ってたんだよ!」と思わず叫んでしまうでしょう。才能と技術のあるオタクに予算を与えたらこうなったって感じです。自分が指揮権を握っているのをいいことに『ぼくのかんがえたさいこうのゴジラを作ってしまった感。怪獣映画とはこうあるべきという理想をしっかり持った監督の、ゴジラや怪獣映画に対する溢れんばかりのリスペクトがビシビシ伝わってきました。

前作2014年ゴジラでは、ゴジラの完全登場は溜めて溜めて終盤にようやく登場でした。一点今作では序盤から怪獣バトルの大盤振る舞い。大スクリーンで複数体の怪獣バトルが描かれたのは『ゴジラ FINAL WARS』から数えてなんと15年ぶりのことです。それだけでもファンは見に行く価値があると言えるでしょう。ラドンに関してはアニメ版の小説に登場しただけで映像にはならなかったので、丸々15年ぶりの登場です。
怪獣をただの「モンスター」や「クリーチャー」ではありません。彼らは自然そのものであり、時に人類に鉄槌を下す存在として描かれます。原爆や自然破壊など、人間の行いに対する怒りや疑問の問いかけという、ゴジラ作品の根底に流れるテーマは今作でもしっかりと汲み取られ、ストーリーに組み込まれていました。

こうした側面から、ゴジラをはじめとする怪獣は時折「神」のイメージも担うことがあります。今作では、行きすぎた文明に対する自然の修正力のように描かれる怪獣は「巨神(タイタン)」と呼ばれます。何よりキングギドラが火山に降り立つシーンでは十字架と対比させてキリストを暗喩したりと、怪獣の神聖視は随所に見られました。ギドラのシーンはキリスト教文化圏で作られた映画としては非常に攻めているように感じましたね。怪獣に対するそれだけの熱いリスペクトがあるということでしょう。

アニメ作品という切り口からSF作品としてゴジラを展開したアニメ版ゴジラと、古き良き怪獣映画の匂いを強く感じる今作。正反対の位置にある2作品ですが、人類の行いに対する警鐘や怪獣の神格化など底には共通してゴジラの血」が流れていたと思います。

怪獣らしい格好良さと人間らしいキャラクター性

正直ヒューマンドラマは薄っぺらくてよく分からないものでしたが、怪獣映画ならそれでも良いのです。むしろ人間は添え物で、脇役。主役はあくまで怪獣だというのが怪獣映画の一つの答えでもあります。
ただ、今作におけるヒューマンドラマは人間だけに当てはまる言葉ではないかもしれません。何故ならば今作の怪獣達からは、意志のあるキャラクター性が感じられたからです。キングギドラは3本の首それぞれに意志と性格が備わり、モスラはなんとゴジラと共生関係にある明確なゴジラの味方として登場します。クライマックスでは怪獣の王であるゴジラの前に他の怪獣が跪くシーンもありました。
今作のストーリーの中核には「オルカ」を用いた怪獣との意思疎通がありますし、怪獣のキャラクター性を強くしたことで2つの側面からヒューマンドラマを描いているのかもしれません。
余談ですが散々格好良く戦っていたラドンが、ラストシーンでゴジラに跪いたところで笑ってしまいました。あぁ、いつものラドンだわこれって。

そうそう、「オルカ」と言えば頭をよぎるのは『ゴジラ 2000 ミレニアム』に登場した宇宙怪獣オルガです。宇宙人ミレニアンがゴジラの細胞を吸収したことで変貌した怪獣ですね。これはたまたま名前が似ただけなのでしょうか。気になるところです。

ファンをニヤつかせるオマージュの数々

監督のゴジラ愛は疑う余地もありませんが、そんなゴジラ作品に対するリスペクトの高さを特に感じたのが、様々なところに見え隠れするオマージュの多さです。
日本でもお馴染みゴジラモスラのテーマをアレンジして使用していましたが、「ソイヤソイヤ」言っていたり経を読んだりしていてちょっと笑ってしまいました。変な形でのリスペクトが伺えます。

キングギドラが眠る南極はゴジラとも縁のある土地です。そんなキングギドラは原作通り宇宙からの侵略者の設定を受け継いでおり、失った首が即時再生する常識外れの能力を見せてくれました。キングギドラに地球の常識が通用しないというのは、これまたアニメ版との共通点でもあります。劇中での呼称の一つ『モンスター・ゼロ』はかつてX星人がつけた呼称です。

小美人を彷彿とさせるアイリーン姉妹や初代同様火口から登場したラドン。僕は飛行時にソニックブームを起こし、通った後を破壊するラドンの特性が恐ろしさ満載で再現されていてとてもうれしかったです。そもそもゴジラモスララドンキングギドラが揃うのは1964年公開『三大怪獣 地球最大の決戦』の構図と重なります。

また、米軍が放った新兵器『オキシジェン・デストロイヤー』は初代ゴジラを倒した兵器として、後の作品にもその名が現れる悪魔の兵器です。渡辺謙演じる芹沢猪四郎は、オキシジェン・デストロイヤーを作り上げた科学者芹沢大助のオマージュです。そんな芹沢猪四郎博士は傷ついたゴジラを核爆弾の放射能で救うため、その身を犠牲に自爆します。これもオキシジェン・デストロイヤーの製法を闇に葬るため、ゴジラと共に海に散った芹沢大助の最期と通じます。ゴジラを殺すために死を選んだ『芹沢博士』と救うために死を選んだ『芹沢博士』の対比ですが、どちらも同じく人類の未来のために我が身を犠牲にしたというのはとても面白いです。

他にも細かい要素や僕程度のファンでは分からないオマージュもあったと思います。どうやら2001年公開『ゴジラモスラキングギドラ 大怪獣総攻撃』の影響を色濃く受け継いでいるとの話も耳にしますし、ゴジラフリークと呼ばれる人々にとっては細部まで目が離せない映画だったのではないでしょうか。

オリジナルに即した怪獣デザイン

今回の怪獣デザインは、日本版のデザインに乗っ取りつつもしっかり目新しさを表現してくれていました。
ゴジラも前作から背びれなどに変化が見られます。日本のゴジラは着ぐるみ撮影だったため、作品ごとに大なり小なりスーツが変化――つまりはデザインが変わっていました。どうやらそこに対するリスペクトもあったようです(どこかのインタビューで語っていました)
キングギドラはオリジナルより西洋風のドラゴンのようなデザインに。翼がワイバーン風に変化し、脚は細身な逆関節になりました。昭和ギドらと比較するとかなりスタイリッシュな印象を受けます。

ラドンも大きく異なる変化はありませんが、翼はオリジナルよりかなり大きくデザインされていて、こちらも着ぐるみの制約から解放された恩恵を受けています。皮膚からは炎が燻ぶり、高熱を帯びているという、ファイヤーラドンのような要素も加えられていました。
最も大きく変化したのはモスラです。丸っこい従来デザインからスマートでより昆虫的なフォルムになりました。カマキリのような鋭い鎌やバッタのような長い肢、ハチを思わせる毒針、ホタルのように発光する体など、複数の昆虫の要素を掛け合わせたデザインになっています。どちらかと言えば、平成モスラシリーズに登場するフォルムチェンジした姿に近しいかなと思います。今作における神々しさを最も体現していた怪獣であり、羽化シーンや登場シーンは非常に幻想的でした。

まとめ

べた褒めし続けていますが、本当に楽しい映画でした。日本の怪獣映画とゴジラに対する並々ならぬ情熱と愛情、そして信仰心。それを思うままに表現した『礼賛映画』でした。
強いて気になるところを言うなれば他の東宝怪獣も見てみたかったということと、暗い場面が多くてもっとしっかり怪獣の姿が見たかったなということくらいです。怪獣自体は作中で他にも登場するのですが、残念ながらオリジナル怪獣のみでおまけに少ししか映らないです。そこは次回作以降に期待という事でしょう。

エンドロール後には今後メカキングギドラの登場を予感させるシーンが挿入されましたし、今から非常にワクワクしております。来年に控える『ゴジラ VS キングコング』に登場するのか、はたまた『モンスターバースシリーズ』の今後の発展を期待してもいいのか……。もしそうであるならば、ぜひともメカゴジラの登場と、僕の好きなアンギラスの登場を願います。

それでは今回はこの辺りで。
さようなら!