日本人が世界で必要とされなくなる日 | 米国公認会計士のフィリピン税金や法律のあれこれ

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 こんにちは、米国公認会計士の橋本です。

昨日、お客様の会社で打ち合わせのために東京に行ってきました。 非常事態宣言が出ているのであまり行きたくはなかったのですが、お客様の会社が東京駅から徒歩1分という立地と打ち合わせのために交通費と日当5000円をいただけるというので、貧乏人の私にとってはうれしい限りの待遇だったので行くしかないということで、お金につられて来てしまいました。

話は海外に会社を設立したいということと、フィリピン・タイ、ベトナム、インドネシアで設立した場合のそれぞれのメリットとデメリット、それぞれの国の税金など様々な内容でしたが、何とかお客様にとって有意義な時間が持てたのではないかと思います。 

 

  打ち合わせのどこかのタイミングで私がいつもお客様に必ずお聞きする鉄板の質問があります。それは、、、

 

  「どうして海外進出をしようとおもわれたのですか?」

 

 という質問です。 私はお客様の海外進出をサポートする仕事をしていますが、日本の産業を空洞化させたいということではありません。 皆さんそれぞれやむにやまれぬ理由があったりするもので、それをお聞きするのは私の楽しみの一つでもあります。

 

 そのお客様が言うには、ご自身の会社は再生利用可能エネルギーの仕事をしてきているものの、日本の売電価格は下がりっぱなしで、しかも最近の法改正で電力の需給バランスに応じて電力を購入するしないを大手電力会社が決めることが出来るようになってしまったということで、すでに再生可能エネルギービジネスすなわち太陽光発電事業は日本では成り立たなくなってしまったようです。

 

 しかし再生可能エネルギービジネスはこれからの環境問題解決への一歩となるためにこれを続けていける場所を模索しているようでした。

フィリピンという国は7000以上の島々からなる諸島国家で、発電所から電力が送られるケーブルが届いていない島も多数残っていて、多くの島で電力が不足しているというお話もお聞きしますので、その島に住む人たちに電力を届けることが出来ないかということをお考えの要でした。 一見するととても良いビジネスモデルのように聞こえますがこのビジネスプランには大きな問題点があります。それはフィリピン人の購買力が思いのほか低いという現実です。 フィリピンの電気代は日本並みに高額ではあるのですが、その電気代を支払えるほどフィリピンの田舎の人々はお金に余裕があるわけではないのですね。

 

 つまりたとえ電力を届けたとしても、電気代の未払問題が多発するのが予測できるわけです。 電気代の貸倒や盗電が多発すればビジネスはすぐにダウンしてしまいます。そこで一般人に販売するというビジネスをやめて、電気を必要とする魚やエビの養殖を始めようと考えたわけです。 電機は自分の会社で設置したソーラーパネルの自家発電でまかなえるとして、設備と環境が整えば現地のフィリピン人に収入を得られる雇用を生み出すことが出来るということです。

 

 またフィリピンに進出するきっかけとなったのが、技能実習生としてフィリピン人を受け入れたことがあり、日本で一緒に働いた何人かのフィリピン人の勤務態度に好感が持てたからだそうです。 フィリピン人は勤労意欲が高く、勤勉で、コミュニケーション能力が高いので日本人との親和性が他の国より高いことで有名です。 そういった来日するフィリピン人に対する評価がフィリピン進出のきっかけを与えることもあるのでしょうね。

 

 海外進出を考える多くの日系企業様は最初は、日本では将来的にビジネスが成り立たなくなるという危機感を抱くことで、海外進出になんとか活路を見出そうとするパターンが多いものです。

 

 しかし海外進出を検討するものの、その国では外国の企業は歓迎されていなかったり、手続きや承認に時間がかかったり、公然と役人が賄賂を要求してきたり、労働者は予想外の怠け者だったりで、最初から上手くいく企業はむしろ少ないくらいです。

 

 今、コロナウイルスの影響で日本の多くの企業が自宅での業務を強いられているみたいです。 そこで分かったのは自宅でもある程度の業務を行うことが出来るということに薄々気づき始めている企業も散見されます。 今まで会社で行っていた業務の一部をテレワークで仕事をすることが可能なんだとすれば、それに合わせて英語が社内言語の会社で仕事に求められるスキルが備わっているのであれば、それは日本人がする絶対的な必要性を持たないことになります。すなわち英語を話す外国人がそれぞれの国で仕事を行って納期までにオンラインで納品すればこと足りるということにも繋がりはしないかと思います。打ち合わせがあればスカイプなどで世界中のスタッフとつないで直ぐにテキストを交わしたり会話をすることが出来ます。 それはすなわち日本人が業務をすることの意義や優位性がますます失われることを意味しないかという結論に行きつくまでにそう長くは時間がかからないでしょう。

 むしろ日本人は英語を話すことが出来ない人種で、グローバルに業務をさせるには能力不足なので仕事に必要ないと言われかねないということに気づくのにおそらく数年はかからないと思います。

 

 工場などの労働集約型の会社は人件費の安い東南アジアやアフリカに、テレワークで済ますことのできる仕事は世界中の優秀な人材をそこで採用して自宅で仕事をさせれば事足りますしとなってくると日本人或いは日本で仕事をする意義や経済的合理性が失われることにつながりかねません。

 

 これは根拠のない予言ではなくておそらく近い将来の高い確率で起こりうる予測であるのかもしれません。

 

 そこまで言えば多くの人で日本人の危機感を共有できるかもしれません。

日本人であるが故の優位性は失われつつあります。日本で働くことの意義も失われつつあります。 もし世界の人が自分と同じ仕事をすることが出来てテレワークで仕事ができる環境があるとすれば、日本人の給与水準は東南アジアやアフリカの人々と比較される日が来るかもしれません。 

 

 コロナウイルスの影響は今しばらく世界中を駆け巡るでしょう。しかしその裏で経済のグローバル化が着実に進んでいて日本もすでにそれに巻き込まれていることを自覚する必要があります。 コロナ禍がひと段落すれば今度は個人の雇用形態や給与水準に意識が向くようになるかもしれません。今、もしかしたらご自身の給料が安いと不満があるかもしれませんが、今の給料が世界中の人と比較されてさらに安く買い叩かれる日が来るのもそう遠くはないかもしれません。

 

 では一体だれが世界中の人びとの給与を減額した分の利益を攫っていくのでしょう?

そんな時代は確実にやってくると思います。それぞれが自身の生活の防衛手段やたとえコロナなどの緊急事態下であってもお金を獲得する方法を持たなくてはいけません。

 

 自身の生活を守る手段と知恵を持つことが次の時代を生き抜くために必要になるのではと、今のコロナのニュースを毎日見ながら感じています。

 

 それでは今日はこの辺で失礼いたします。