浮腫みの話 その① 〜浮腫みの中に潜むリスク〜

浮腫

今日もまた1日が終わろとしている。すっかりと涼しくなった風は辺りをゆっくりと秋の空気へと変えていく。

坪井 咲夜
坪井 咲夜

終わったー!もう足がパンパンやー。

上代 葉月
上代 葉月

お疲れ様。うん本当に疲れた。

一日中駆け回っていると疲れも溜まる。二人は同時に大きく伸びをした。

白波 百合
白波 百合

おつかれっすー・・・

坪井 咲夜
坪井 咲夜

百合もおつかれー・・・ってどうしたその顔!?

上代 葉月
上代 葉月

ちょっと百合!顔が・・ぱんぱん・・・

白波 百合
白波 百合

それは言わないでっすー。昨日・・・夜中にラーメンなんか食べたばっかりにっす・・・

顔を晴らした白波は細い体とのバランスが崩れている。その顔を見て坪井と上代は顔を伏せる。

坪井 咲夜
坪井 咲夜

笑ってへん・・・笑ってへんからな・・・

上代 葉月
上代 葉月

大丈夫・・・百合・・・大丈夫だよ・・・

白波 百合
白波 百合

もー二人共ひどいっす!

坪井 咲夜
坪井 咲夜

そんなんとちゃうよー。あっ今日は時間あるし、うちらも休憩室に行ってもええ?

上代 葉月
上代 葉月

百合が良ければだけどね。

白波 百合
白波 百合

そういえば三人に行くのは初めてっすね!先輩も喜ぶっす!

喜ぶ・・・か?坪井と上代は同時に首を傾げる。そしてまぁ良いかと三人は立ち上がり休憩室へと向かう。

窓辺から流れる西日も夏の暑さを感じさせる事はすっかりと無くなっている。

白波 百合
白波 百合

先輩おつかれっすー

山吹 薫
山吹 薫

・・・・

坪井 咲夜
坪井 咲夜

お邪魔しますー。って山吹さんなんで窓の方を向いているんすか?

上代 葉月
上代 葉月

なんか体がカタカタ揺れているような。

山吹は答えない。そしてしばらくして三人の方を向く。顔はいつもに比べて硬い。

山吹 薫
山吹 薫

お疲れ様・・・・ふっ!

白波 百合
白波 百合

先輩また笑ったっす!朝からもう何度目っすか!?

坪井 咲夜
坪井 咲夜

そりゃ気持ちもわからんでもないけどな・・・

上代 葉月
上代 葉月

それでいつもより硬い表情なんですね・・・

山吹 薫
山吹 薫

・・・そんな事はない。

言葉少なく山吹は応える。白波はさらに頬を膨らませてみせる。まん丸を描くその曲線に山吹は耐えきれず下を向いた。

坪井 咲夜
坪井 咲夜

まぁとにかく山吹さんの笑った顔初めて見たわ。

上代 葉月
上代 葉月

これは重大なニュースだね。

白波 百合
白波 百合

こんなので笑ってるのは見たくないっす!

山吹 薫
山吹 薫

・・・まぁとにかく、それでは今日は『浮腫』について話そうか。

白波 百合
白波 百合

それではって何すかー!!

白波が言葉を発する旅に山吹は唇をもごもごとさせる。笑うのを我慢してるっすね。白波は目を細めた。

山吹 薫
山吹 薫

とにかく、浮腫とは簡単に言うと皮膚の下の皮下組織に水分が溜まっていると言う事だ。つまりは血管の外の細胞間質にだな。

坪井 咲夜
坪井 咲夜

細胞と細胞の間で支えてる場所って事やな。

上代 葉月
上代 葉月

そこに水が溜まって・・・腫れ上がるんですね・・

白波 百合
白波 百合

むー上代さん?こっちを見るっす・・・

大丈夫と上代は手を上げて制する。全くこんな事になるとはと、白波は昨日の事を少しだけ後悔する

上代 葉月
上代 葉月

でもなんで浮腫みは出るのでしょうか?

坪井 咲夜
坪井 咲夜

うちの足もパンパンやけどー。先輩!うちの足見ます?

山吹 薫
山吹 薫

見ない。同じ姿勢でいて浮腫むのは皆よく知っているね。他にもその・・・なんだ・・・遅い時間にラーメンを大盛りで頼むなんてするとか、それにチャーハンまで食べて塩分過多となっても確かに浮腫む。

坪井 咲夜
坪井 咲夜

なんや、嫌に具体できやな!

白波 百合
白波 百合

先輩・・・先輩が少食だと知っていたらそんな量頼まなかったっす・・・

昨日、偶々帰り道が一緒になった先輩と帰りにラーメンを食べた事は確かに嬉しかった、だけども自分が注文を済ませた後にはるかに少ない量を頼む先輩には驚いた。

そして運んできた店員が自分の前に小さなラーメンを置いた時に「大盛りはこいつです」と答えた時が一番辛かったと白波は思う。

坪井 咲夜
坪井 咲夜

ふむふむふむ!なるほどなー!

上代 葉月
上代 葉月

そんな理由ならしょうがないねー

山吹 薫
山吹 薫

なんだ?兎も角、大きく関わるのは水分の量それも含めた膠質浸透圧が関係する。

白波 百合
白波 百合

それもアレっすね!学生の時に生理学を学び始めた自分達に襲い掛かる難問っすね。

山吹 薫
山吹 薫

そうか?考えてみれば単純だろう。

単純じゃないっす!とそう答える白波に山吹は唇を片方を上げて笑みを浮かべる。なんだか空気が柔らかい。上代は心地よさを感じて、坪井は両方の口角を上げて尊大に笑みを浮かべた。

山吹 薫
山吹 薫

まぁその話を含めて話そうか。たかが浮腫みだと侮っていたらいけない。それは臨床でもどこでも同じだ。重大な疾患が潜んでいる事もある。

上代 葉月
上代 葉月

毎回な事だけどそれ気になります。

坪井 咲夜
坪井 咲夜

まぁ色々気になる事はあるけどなー!まぁええか。

白波 百合
白波 百合

もう夜中にラーメンは頼まないっす・・・大ラーメンは悪魔の食べ物っす・・・

うつむく白波に笑みを浮かべる山吹。その二人を見て坪井はこれは沢尻さんに報告やな。そう尊大な笑みを浮かべた。上代は白波の顔に目をやり、まん丸として可愛らしいのに。と一人首を傾げた。

白波百合のノート 49

・浮腫とは細胞間質(細胞と細胞の間)に水分が溜まること。

・水分の出入りを含めた膠質浸透圧が関与する←これがややこしいっす。

・先輩が珍しく奢ってくれたと思ったら、もしやこれが目的だったんじゃ・・・

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