再読文字とは

再読文字とは、返り点をともなって一字を二度にわたって読む文字のことです。

(一回目の読みは副詞として読み、二回目の読みは動詞または助動詞として読みます。)

例えば再読文字の『未』の場合、最初に「いまダ」と読み、その後返り点によって読み返され「ず」と読みます。

再読文字には、『未・将・且・当・応・宣・須・猶・由・盍・蓋』などがあります。それぞれについて詳しく解説します。

まず始めに、再読文字の『未』について解説します。

再読文字の『未』ー打消

再読文字の『未』

・読み方は「いまダ~ず」(『打消』の助動詞「ず」を使う)

・訳し方は「まだ~ない」

となります。例文を確認してみましょう。

例文 再読文字『未』

⑴ 未だ知ら (現代語訳:まだ知らない)

⑵ 未だ完成せ (現代語訳:まだ完成しない)

⑶ 未だ満た (現代語訳:まだ満たない)

⑷ 未だ成年なら (現代語訳:まだ成年にならない)

⑸ 未だ人に事(つか)ふる能は (現代語訳:(未熟だから)まだ人に仕えることもできない)

再読文字『未』は『嘗・曾(かつテ)』と共に使われることがあります。

再読文字の『未』+『嘗・曾』

・読み方は「いまダかつテ~ず」(『打消』の助動詞「ず」を使う)

・訳し方は「~したことがない」

となります。例文を確認してみましょう。

例文 再読文字『未』+『嘗・曾』

⑴ 未だ嘗て酒を飲ま (現代語訳:酒を飲んだことがない)

⑵ 未だ曾て有ら (現代語訳:有ったことがない)

再読文字の『将』『且』ー推量・意志

再読文字の『将』『且』

・読み方は「まさニ~ントす」(ンは『推量・意志』の助動詞「む」が「ん」と表記されたもの)

・訳し方は「今にも~しようとする」「~することになる」

となります。例文を確認してみましょう。

例文 再読文字『将』『且』

⑴ 将に行かんとす (現代語訳:行こうとする)

⑵ 将に人を殺さんとす (現代語訳:人を殺そうとした)

⑶ 王且に犀首(さいしゅ)を相(しょう)せんとす (現代語訳:王は犀首を宰相にしようとした)

⑷ 築かずんば必ず将に盗(たう)有らんとす (現代語訳:土塀を修築しないと、きっと今にも泥棒が入りそうである)

⑸ 若(なんぢ)が属皆且に虜とする所と為らんとす (現代語訳:お前たちは皆、今にも捕虜にされてしまいそうである)

再読文字『当』『応』『宣』『須』ー当然・義務・適当

再読文字の『当』

・読み方は「まさニ~ベシ」(『当然』の助動詞「べし」を使う)

・訳し方は「当然~すべきである」「当然~のはずだ」

となります。例文を確認してみましょう。

例文 再読文字『当』

⑴ 当に陥るべし (現代語訳:当然陥ってしまうはずだ)

⑵ 時に及びて当に勉励すべし、歳月は人を待たず (現代語訳:学ぶべき若い時に当然つとめ励むべきだ。歳月は人を待ってくれない)

再読文字の『応』

・読み方は「まさニ~ベシ」(『強い推量』の助動詞「べし」を使う)

・訳し方は「きっと~だろう」「~にちがいない」

となります。例文を確認してみましょう。

例文 再読文字『応』

⑴ 応に最も楽しかるべし (現代語訳:最も楽しいにちがいない)

⑵ 君故郷より来たる、応に故郷の事を知るべし (現代語訳:君は私の故郷からやってきた。きっと故郷のことを知っているだろう)

再読文字の『宣』

・読み方は「よろシク~ベシ」(『当然』の助動詞「べし」を使う)

・訳し方は「~するのがよい」「~するのが適当だ」

となります。例文を確認してみましょう。

例文 再読文字『宣』

⑴ 宣しく先づ賞すべし (現代語訳:真っ先に味わうのが適当だ)

⑵ 宣しく少(すこ)しく懲罰を加ふべし (現代語訳:少しは懲罰を加えるのがよい)

再読文字の『須』

・読み方は「すべかラク~ベシ」(『義務』の助動詞「べし」を使う)

・訳し方は「~する必要がある」「~しなければならない」

となります。例文を確認してみましょう。

例文 再読文字『須』

⑴ 須らく孔孟の奥旨を理会すべし (現代語訳:孔子孟子の言の奥義を理解する必要がある)

⑵ 須らく常に病苦の時を思ふべし (現代語訳:常に病気で苦しかった時のことを忘れないようにしなければならないる)

再読文字の『猶』『由』ー比況

再読文字の『猶』『由』

・読み方は「なホ~ごとシ」(『比況』の助動詞「ごとし」を使う)

※「ごとシ」と読み返す直前の語が名詞の場合は、名詞と「ごとシ」の間に助詞「の」を入れる

※「ごとシ」と読み返す直前の語が動詞または助動詞の場合は、名詞と「ごとシ」の間に助詞「が」を入れる

・訳し方は「まるで~ようだ」

となります。例文を確認してみましょう。

例文 再読文字『猶』『由』

⑴ 猶ほのごとし (現代語訳:まるで花のようだ)

⑵ 猶ほ花の咲くがごとし (現代語訳:まるで花が咲くかのようだ)

⑶ 過ぎたるは猶ほ及ばざるがごとし (現代語訳:やりすぎることはやり足りないことと同じようによくない)

⑷ 猶ほ肉を割(さ)きて以つて腹を充たすがごとし (現代語訳:まるで自分の肉体を切りとって食べて自分の腹を満たすかのようだ)

⑸ 斉を以つて王たるは、由ほ手を反(かえ)すがごときなり (現代語訳:斉国のような大国で王道を行えば、まるで手を返すようにたやすい)

再読文字の『盍』『蓋』ー疑問・勧誘

再読文字の『盍』『蓋』

・読み方は「なんゾ~ざル」(『打消』の助動詞「ず」の補助活用「ざり」を使う)

・訳し方は「どうして~しないのか」「~したらよいではないか」

※『何不・胡不・奚不・曷不(なんゾ~ざル)』や『何為不・胡為不・奚為不・曷為不(なんすレゾ~ざル)』も『盍』と同様の働きをする

となります。例文を確認してみましょう。

例文 再読文字『盍』『蓋』

⑴ 盍ぞ学ばざる (現代語訳:どうして学ばないのか)

⑵ 西伯昌(しやう)善く老を養ふと聞き、盍ぞ往(ゆ)きて帰(き)せざると (現代語訳:西伯の昌が老人を優遇すると聞いて、どうして行って身を寄せずにいられようかと(思った))

⑶ 蓋ぞ嘗(こころ)みに富人(ふじん)の稼(か)を観ざるや (現代語訳:どうして試みに富農の田を作るのを見ないのか(見たらよいではないか))

⑷ 何ぞ将を発して之を撃たざる (現代語訳:どうして将軍を派遣して敵を攻撃なさらないのですか(そうしたらよいではないか))

⑸ 奚為れぞ受けざる (現代語訳:どうして受け取らないのか(受け取ったらよいではないか))

最後に

今回は、漢文の再読文字『未・将・且・当・応・宣・須・猶・盍』について解説しました。

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