明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1887)一次冷却水ポンプがなぜ壊れるのか、実は誰も分かっていない・・・元東芝の技術者小倉志郎さんにお聞きしました

2020年09月21日 17時00分00秒 | 明日に向けて(1701~1900)

守田です。(20200921 17:00)

玄海原発・・・のみならず加圧水型原発の危険性の続報です。今回は「明日に向けて(1299)」2016年9月1日で配信した内容をリメイクしてお届けします。

元東芝の技術者・小倉志郎さんに冷却水ポンプのことをお尋ねしました

前回述べたように、2016年7月17日、再稼働を目前にしていた伊方原発3号機で一次冷却水ポンプの故障事故が起こりました。
四電は予定されていた7月末の再稼働を断念、部品の取り換えなど大掛かりな修理を行い、8月12日に再稼働を強行しました。
しかし調べてみるとこの一次冷却水ポンプはこれまでも繰り返し事故を起こしていたことが分かりました。また四電はポンプが「格納容器の耐圧試験で壊れた」としつつ、予備部品への交換だけで対処に代えてしまいました。


一次冷却材ポンプの位置と故障個所 九電発表の玄海原発故障事故の説明図

僕はこれらの事態から、一次冷却材水ポンプに構造的欠陥があると推論し、論拠を固めた上で、専門の技術者からの助言を頂きたいと考え、元東芝の技術者・小倉志郎さんにお尋ねしました。2016年8月末のことでした。
小倉さんは『元原発技術者が伝えたいほんとうの怖さ』(彩流社)を書かれた方で、同じく元東芝の格納容器設計者だった後藤政志さんの先輩にあたります。「原子力プラントに誰よりも精通した方」と後藤さんよりご紹介いただきました。


小倉志郎さんの著書 「原発はほんとうにとんでもない怪物だ。あの複雑怪奇な原発の構造を理解しているエンジニアは世界に一人もいない・・・」(帯より)

小倉さんはこのように指摘してくださいました。
「問題の伊方原発3号機ポンプ故障についてですが、守田さんのご指摘の通り、この軸シール=軸封装置=こそ、原子炉システムの「アキレス腱」です。そして、この装置については政府=原子力規制庁=の技術基準はありません。
原子炉圧力バウンダリーを構成する箇所でありながら、「溶接部」「フランジ部」とは異なり、圧力に耐えている部品同志が相対的に移動しあっているのですから、内部から液体が漏れるのを防ぐのは至難です。
とりわけ、原子炉の高圧がかかるのですから、その部品の設計はメーカーの設計、製造技術、経験のノウハウ固まりのようなものです。」


小倉さんは福島原発事故直後に被曝の危険性を分かりやすく説いてくれました。
https://youtu.be/PcmRs9bS7C0


実はなぜポンプが故障するのか誰も分かっていない! 

少し読み解いてみましょう。一次冷却材ポンプは「原子炉冷却材圧力バウンダリ」を構成する箇所です。この用語は以下のように定義されています。
「「原子炉冷却材圧力バウンダリ」とは、原子炉の通常運転時に、原子炉冷却材(加圧水型軽水炉においては一次冷却材)を内包して原子炉と同じ圧力条件となり、運転時の異常な過渡変化時及び設計基準事故時において圧力障壁を形成するものであって、それが破壊すると原子炉冷却材喪失となる範囲の施設をいう」。引用は以下の文章からです。

原子炉冷却材圧力バウンダリの考え方について
https://www.nsr.go.jp/data/000050332.pdf

ここは原子炉内と同じ圧力に耐えていて、冷却材を封じ込めているのですから、ここが突破されれば最も恐ろしい冷却材喪失事故が起こり、メルトダウンが発生しかねない核心部分だということです。
しかし溶接でがっちりと接合してあるところや、配管を周りに貼り出した帽子のふちのようなところでボルト締めしている「フランジ部」と違って、このポンプの中の冷却材のシール部は、部品同士が相対的に動きあっている。
なかなかこの部分の構造が理解しにくいのですが、四国電力が発表した以下の故障原因の説明の図をみると概略が見えてきます。

伊方発電所3号機 1次冷却材ポンプ3B第3シールの点検結果等について 四国電力 2016年7月25日
http://www.yonden.co.jp/press/re1607/data/pr005.pdf


各社ともこのポンプの故障事故のたびに本当は原因が良く分からないのに分かったふりをして説明している

小倉さんは次のように続けられています。
「ケーシングに固定された固定リングと軸に固定されたリングの接触面は水分子程度の微小な隙間を介して、こすれあっています。その隙間から「なぜ水が漏れないのか?」の理由さえよくわからないのです。
ですから、ある時漏れたとしても「なぜ漏れたか?」がわかるわけがありません。それで、7月25日に四国電力がプレスリリースしたような「一方のリングが傾いた」などという苦し紛れの理由を挙げるのです。
しかし、その傾きは光の1~2波長程度の傾きであっても漏洩の原因になるのですから、傾いた証拠など測定できるわけがありません。」

次回も続きを書きます!


問題のポンプの断面図 三菱重工ホームページより

#伊方原発 #一次冷却水ポンプ #加圧水型 #小倉志郎 #欠陥部品

*****

この記事に共感していただけましたらカンパをお願いできると嬉しいです。自由に金額設定できます。
https://www.paypal.me/toshikyoto/500


コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 明日に向けて(1886)伊方原発3... | トップ | 明日に向けて(1888)一次冷却... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

明日に向けて(1701~1900)」カテゴリの最新記事