オーストラリアの豚肉 (この記事はベジタリアンの人にはお勧めしません)

牛、鶏、羊、豚などと食用肉の選択は色々ありますが、宗教によっては汚い・卑しい動物と分類されて食用にされなかたっりする豚 (ポーク)。 個人的には菜食主義者でもなく、豚肉はへたくそに料理しても割と硬くならない (or なりにくい) ので普通に食べるお肉の一種になります。


オーストラリアの豚肉

オーストラリアでの養豚業界の発展を推進する社団法人 Australian Pork Limited (APL) がオーストラリア国内での豚肉の消費を促進させるために一般消費者向けにオーストラリアの豚肉専用サイトを立ちあげたり:

Pork on the fork (フォークにポークを)』

Easy as 6-2-2 (表6分-裏2分-寝かせて2分で簡単)』 👉ようつべ🎬

Fancy a Quickie? (ちょろっとやらない?)』 👉ようつべ🎬

といった宣伝文句のキャンペーンを続けていますが、オーストラリアの豚肉を食べていて時々気になる事として『豚肉の獣臭 (けものしゅう)』があります。

「豚の角煮」とか「パクテー(肉骨茶)」といった豚肉を生姜やスパイスなどと一緒に煮込んだ料理では特に気にならないのですが、豚肉を焼いただけ、蒸しただけなどといった、シンプルに火を通しただけの場合だと、いつもではないのですが、時々豚肉が獣臭い時があります。


雄臭 (Boar Taint)

この豚肉の獣臭は『雄臭』、英語では『Boar Taint』と呼ばれて、雄豚が出す雄フェロモンに関係するそうです。 ウィキペディアの説明によると『豚の雄臭』は主にアンドロステノン(androstenone)スカトール(skatole)という成分が主に体脂肪に蓄積されるのが原因みたいですが、「明確な文献は発表されていない」とも断りがあります。

「スカトール」って何wとも思いましたが、強い糞臭の物質らしいのですが、薄い濃度だと花の香りになるそうで、オレンジやジャスミンの臭いの成分にも含まれるそうですw

この「雄臭」、食べる人が臭いと感じるかは人種での差や個人差があるそうで。。

メルボルンのシェフ、ジョージ・コロンバーレスが経営していたレストラン『Press Club (プレス・クラブ)』に、昔、『オーストラリアの豚肉は(臭いので)苦手』と言っていた日本人の友達と行った時ですが、『良い肉を仕入れているのでそんな事はない』とウエイターさんお勧めの豚肉メニューを騙されたと思って一皿注文したら、出てきた豚肉は獣臭い肉でまんまと騙された事もありました。

ウエイターさんが試食したのは雄豚の肉ではなかったという可能性もありますが、レストラン側としては全く気にしていないという対応をされて、(多分個人差とやらで)雄臭は認識されていないといった感じでした。

最近だと、オーストラリアのメキシコ料理のチェーン店で『ブリートー』を注文した時に、普段は具にチキンを選ぶのですが、久しぶりに豚肉を選んだ時はかなりの獣臭がしました。 (それ以降、豚肉の具は選んでいないので、偶々臭かったのか、最近は臭いのかのどちらかは分かりません。)


雄豚の去勢

雄臭なので雌の豚肉にはこういった臭いの問題は無いのと、雄豚でも発情期前に去勢してしまう事で臭いが蓄積されないそうです。 しかし、この雄の去勢にコストの面で麻酔をしないで切り落としてしまうのが普通らしいとかで、動物保護団体の目も光っているらしく、また、麻酔をする・しないは別に雄豚の去勢自体が批判されているみたいで、EU圏の養豚だと雄豚の去勢は2018年1月1日に廃止されているみたいです。

上記のAPL(Australian Pork Limited)がお肉屋さん向けに『Pork Buchers』という別のサイトも運用していて、資料のページに『Pork Training Manual 2018 (豚肉トレーニング・マニュアル2018年版)』というオーストラリアの養豚・豚肉について説明しているのPDFマニュアル全88頁(英文)がありました。

Pork Training Manual 2018

内容としては、(雄臭についての情報も含む)オーストラリアでの養豚についての情報以外に、豚肉の正しい料理の仕方などがあり、ほぼ半分の約40頁は豚肉の切り分け方の図解でした。


オーストラリアでは養豚に関する法律が各州ごとにあるみたいですが、このマニュアルによるとAPLが『APIQ』というオーストラリア国内の養豚業界の品質保証プログラムを運営しているみたいで、このAPIQによる豚の飼育では雄豚の去勢は禁止はされていないみたいですが、豚の動物福祉(アニマルウェルフェア)を守る為に:

  • 去勢は生後2~7日までの間の雄豚に推奨。
  • 生後8~21日の雄豚の場合は適切な拘束具を使用。
  • 生後21日以上の雄豚は麻酔を使って獣医が去勢

という事項を養豚者は守らないといけないとマニュアルには書いてありました。 でも、これだと生後2~21日なら麻酔は使わなくても良いという事ですね・・ (痛そう😫

他に、去勢をせずに『Imprpvac』という雄臭を減らすワクチンについても説明がありましたが、特に去勢よりもワクチンを推奨などといった事は書いてなく、去勢の有無、ワクチンの使用・未使用は養豚者の選択になっているみたいです。

なので、獣臭が強いオーストラリ産の豚肉が出てきた場合は、きっと、去勢されていなくてImpepvacワクチンも打たれていない雄豚の肉なのでしょう。

因みに、ワクチンを使った場合はどれだけ雄臭が減るかは興味深い処ですが、スーパーやお肉屋さん(ブッチャー)で『Imprpvacワクチン使用』という雄豚肉に出会った事がないので将来的に食べ比べる機会があるかどうかは不明です。

また、このマニュアルにも書いてあったのですが、豚は一匹のボス雄豚が複数の雌豚が囲って群れを作る習性があって、去勢をしていない雄豚が一匹以上同じエリアにいると勢力争いでお互いに傷付け合ったりするそうで、去勢していない雄豚は他の雄豚とは囲いで仕切ったりしないといけないそうです。

そうだとすると、養豚者からすると生殖目的以外の雄豚は去勢してしまった方が手間が少なくなる様な感じですね。。


Female Pork (雌豚肉)

オーストラリアの大手スーパーとかではまず見かけないのですが、ビクトリアマーケットやアジアン街のブッチャーだと『Female Pork』という名前の豚肉が売られています。 その名の通り、『雌豚肉』です。 別に雌豚肉なので高価という事もなく、場合によってはキロ当たりの値段はオーストラリアのスーパー売られてる豚肉よりも安かったりもします。

注※: 念の為、オーストラリアのスーパーで「雌豚肉」と表記された豚肉が売られていないという意味で、豚肉が売っていないという意味ではありません。

しかし、スーパーによって差があるかもしれませんが、オーストラリアのスーパーで、お肉コーナーに陳列されている肉の割合は豚肉よりも、他の牛肉や羊肉、鶏肉の方が多めな気がします。 又、小さい店舗のスーパーだとミンチ肉の場合、100%ポークでなく、「Pork and Veal」という豚肉と小牛の肉(Veal)と混ぜた合い挽きミンチしか置いてななどという事も何度か経験しているので、オーストラリアでは豚肉の人気は他のお肉と比べるとそこまで高くない様な気もします。

残念ながら「Free Range (フリー・レンジ: 放し飼い)」とか「Organic (オーガニック)」といったタイプのお肉を扱っているブッチャーでは見かけないので、放し飼いでもなく、オーガニックでもない豚肉だと予想されますが、雌豚だけに今迄に獣臭い雌豚肉に当たった事はありません。 (そもそも、オーガニックの豚肉はオーストラリアのスーパーでは売っていない様な気もします。 オーガニックだと餌代だけでもすごそうですが、イベリコ豚の並みの値段になってしまうのでしょうか? )

生まれてくる豚が雌ばかりだったら、去勢とかをしなくても獣臭の強くない豚肉の生産が可能になるのかもしれませんが、雄がいないと子供が出来ない。。。 クローン技術で雌ばかりをなんて事も遠い未来には可能になるかもしれませんが、個人的には遠い未来であってほしいです。。


終わりに

日本では雄豚の麻酔無しの去勢は特に決まりも無いみたいで、JTA畜産技術協会が2017年に483の日本の養鶏農家を対象に行ったアンケートによると78.5%が生後7日以内に去勢を行っているとかで日本では高い確率で雄豚の去勢が実行されているみたいです。 なので、日本だとそんなに獣臭い豚肉に出会う機会が少ないのでしょう。。

日本でも知名度の高い『オージー・ビーフ』と『オージー・ラム』だと『Meat & Livestock Australia (MLA)』という団体がオーストラリア国内外で消費促進キャンペーンを行っていて、日本語サイトもありますが、オージー・ポークはまだ日本ではシェアが低いのか日本語でのキャンペーン・サイトはまだないみたいですね。



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