オーナー夫人のいない、リゾートホテル『猫館(ねこかん)』。
宿泊客たちは、このホテルに起きている危機など知らずに平和な日常をおくっています。
オーナー夫人で、イチゴちゃんのママで、わたしの親友のサチさん
経営のすべてを支えていた彼女がいなければ、ホテル『猫館』は回りません。
コンダクターのいないオーケストラです……
行き当たりばったりのマイクラ日記です……
そこで。
飛鳥Ⅱの牢屋に入れられている親友サチさんを救い出す費用をあつめるべく、わたしは3人のしもべに久々の召集をかけたのです
※飛鳥Ⅱに牢獄があるのかは、今もって謎のままです。
…………。
……。
いちばんに到着したブリキ人形は、金塊や宝石を採掘しに地下へ
「ひ~とり~のゾウさん、ク~モの~巣に~♪ かか~って遊んで、お~りま~した~♪」
すると。
ふたりのゾンビさんにからまれている、ガイコツ発見
「あっはっは。なんだ、この安物の弓矢は!」
「やめろよ~。返してくれよ~」
同じモンスターであっても、みんな仲間というわけではないようです……。
「なに見てやがる! ぶっ壊すぞ、ガラクタ人形」
「弱い者いじめは、すごくカッコ悪いことなんだよ!」
…………
……
あっという間に悪者たちを倒したブリキ人形は、ついでにゾンビを生みだしていた装置も封印。
「これで、もうだいじょうぶ。弓矢もとりかえしたよ」
「でっけえお世話だ、ブリキのおもちゃのくせに!」
ガイコツはお礼を言うどころか、捨て台詞を吐いて行ってしまいました
さすが、弱くてもモンスター。
どんな親に育てられたのか、見てみたいものです。
…………
……
その夜。
召集された残りのふたりも、ホテルに到着
「相変わらず、すげえ森だなべらぼうめ」
ライオン天使参上
「チェックインの手続きしてきますね」
案山子天使参上
ドケチなライオン天使は、資金をカンパするかわりに広大な森の整地とライトアップを無償でしてくれるとのこと
※これは“モンスターの湧きつぶし”にもなるので、ホテル的にかなりの経費削減となります。
清貧な案山子天使は、周辺のパトロールを無償でしてくれるとのこと
※これも警備会社にたのむとお金がかかるので、ホテルとしてはまあまあ助かります。
…………
……
そのころ。
※BGMスタート → ♪
『月光』 Chihiro Onitsuka
「くそ~、ひどい目にあったぜ」
地下から抜けだしたガイコツが、行く当てもなくフラフラ歩いていました。
「あんな地下、二度ともどらないぞ。オレはもう自由なんだ」
モンスターなのに弱い彼は、いつもお腹を空かせていました。
獲物をじょうずに倒す腕も、つよい弓矢も持っていないのです。
「地上に出れば、オレだって……」
あれ?
(あの案山子の刺繍が入った黒服のヤツは……)
※第七十九話で“有名モンスターたちをほぼ全滅させた男”は、この地域に暮らすモンスターの間で大きなニュースになりました。
名を上げるチャンスだ!
有名になって、オレはもう誰にもいじめられなくなるんだ!
有名になって、たくさん金を稼いで、オレは故郷に帰るんだ!
(母ちゃんがオレのために買ってくれた、この弓矢で……!)
ドン!
I am GOD'S CHILD……。
哀しい音は背中に爪跡を付けて……。
I can't hang out this world……。
こんな思いじゃ……。
どこにも居場所なんて無い……。
…………。
……。
パトロール中の案山子天使にケンカを売って、彼の一生は終わってしまいました。
たいして良いこともないまま、彼の一生は終わってしまいました。
間違った選択をしなければ、彼はこの数年後にステキな人と出会って人並み以上の一生をおくることになっていたのに……。
…………
……
一方。
「案山子さん、かっこいい~」
「かわいそうなガイコツ……」
ホテルから見ていた例のふたりは、病み上がりということでのんびり過ごしていたのでした。
つづく