どうながの映画読書ブログ

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「復讐のガンマン」…ナイフ投げの達人vs凄腕ガンマン

「怒りの荒野」と同年に公開、リー・ヴァン・クリーフがトーマス・ミリアンという若手俳優と組んだ1作。

復讐のガンマン [DVD]

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  • 発売日: 2015/11/04
  • メディア: DVD
 

リー・ヴァン・クリーフという役者さんは貫禄がありすぎて、若い男性が相棒役をやろうとしても横に並ぶと弟子か擬似親子的な息子に見えてしまうというのがフツーなのですが…

本作はそんなヴァン・クリーフ師匠に食ってかかるようなクチーヨというキャラクターがとにかく面白い作品です。

 

街のならず者を取り締まる凄腕ガンマンとして人々から慕われているコーベット。

有力者のパーティーに招かれたある日、幼い娘が暴行され殺されるという事件が発生。犯人はメキシコ人のクチーヨだと目撃情報をきき、追跡に乗り出しますが…

 

今回のリー・ヴァン・クリーフの役どころは、「逃亡者」のトミー・リー・ジョーンズ的な立ち位置といったところでしょうか。

しかし逃亡者のクチーヨがとんでもない男で、軽々と追跡を交わしていくので、大苦戦します。


他人の食べ物を平気で盗み食いする、着てる服も穴だらけ…その日暮らしで先のことは何も考えず本能で生きてますって感じのテキトーさ、ふてぶてしさが際立つクチーヨ。

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一言でいうと“汚いイケメン〟!!

ジョニー・デップの演じたジャック・スパロウみたいな雰囲気で、ピンチに陥ってもとことんマイペース。飄々と危機を切り抜けるところが見ていて楽しいキャラクターです。


クチーヨは実は無罪で真犯人がいるという展開も、格差社会的なモノを告発しているともいえなくない、意外に骨のあるストーリーです。

 

ただ「怒りの荒野」に比べるとずっとイタリア映画らしいおおらかさを感じるつくり。

突然始まる水浴びシーンが衝撃的ですが、一緒に池に入ろうと少女を執拗に誘うクチーヨ。

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おまわりさん、こいつです!…と思わせてこれがただのミスリードで終わるというざっくばらんな展開に唖然。

そのほかクチーヨが女性といちゃついてた…と思ってたら次のカットで鞭打ちの刑にされてたりする突然の場面転換にも爆笑。

イタリア映画の自由さを感じて何だかほっこりもします。

 

 

時折ゆるいところもありつつ、しかし決闘シーンはここぞとばかりに格好いい。

本作でクチーヨは一度も銃を使わず、ナイフのみで戦います。(タイトルの復讐のガンマンって誰だよ。)


ナイフというと「荒野の七人」のジェームズ・コバーンが思い浮かんできますが、こちらの方がタメのある決闘シーンをやってくれていて、アニメっぽい楽しさが強い感じがします。

ガンマンはガンベルトから銃を抜くけど、ナイフ使いは肩にナイフを置いての構え。

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間合いを詰めないと不利だし、弾丸より速いってどんだけーと思ってしまわなくもないけど、とにかく絵面がカッコいいですね。

飛んできたナイフをヴァン・クリーフ師匠が撃ち返すところなんかも漫画みたいでワクワクしてしまいます。


そしてもう1人敵役で魅力的なキャラクターが登場して、射撃の達人だというオーストリア出身の男爵とリー・ヴァン・クリーフの決闘シーンも見所です。

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知らない俳優さんだけど、めっちゃ強そう…!

ここでは「エリーゼのために」のピアノ演奏曲を混ぜ込んだモリコーネの楽曲がじゃんじゃんかかってちょっと「夕陽」っぽい。

追って追われるうちにお互いを認め合うバディもの要素もあり、ドライな男の友情世界にうっとりです。


とにかくリー・ヴァン・クリーフと並んでも対等なパートナー役として成立するトーマス・ミリアンの個性に魅入られる作品。

 

続編もあってこちらはリー・ヴァン・クリーフ不在ですが、美人女軍曹をはじめ新キャラが沢山登場、深夜アニメ化して欲しいような面白さ!

豪快な主人公にスカっとする、とにかく観ていて楽しい作品でした。