※くちなしの花。無料素材からお借りしました。
なかなかブログに書く気分になれないまま、数日が経って
しまいました。まだ引きずってはいるのですが、一つの
区切りとして、振り返っておこうと思います。
巨星、墜(お)つ 。
2020年8月10日、最後の銀幕のスターとも称される
渡哲也さんが、肺炎のため78歳で天に召されました。
闘病中であること、あまり体調が良くないことは報道で
知っていましたが、やはり驚きを禁じえません。意識下で、
その日が現実に来ることに耳を塞いでいたのかもしれません。
渡さんは私が高校生の時、映画のロケで地元、気仙沼に来た
ことがあります。狭い町のこと、ロケ班の動向は瞬く間に
伝わり、「今、〇〇理髪店にいるよ~」との情報をキャッチ。
渡さんの大ファンだった(今も)私は、もちろん理髪店に
直行しました。お店のガラス戸に張り付く人、人、人。私も
その中の一人です。理髪店の待合椅子に座るスターのオーラは、
まばゆいばかり。その存在感は人を圧倒するものがありました。
ロケ班の宿泊先は、我が家の真向かいにある、S旅館でした。
旅館のホームドクターでもあった父を拝み倒し、旅館の人に
サインをもらえないか打診してほしいと頼んだところ、話は
首尾よく進み、渡さんも快く承諾してくれて、卒業アルバムと
ハンカチにサインをしてくれました。
なぜ卒業アルバムか? 実は私の姉が渡さんと大学の同期で、
アルバムが家にあったからです。渡さんは、「誰だろう?」と、
首を傾げていたそうですが、姉のアルバムは十分インパクトが
あったようです。それにしても堅物の父が、娘のたっての
願いに、苦笑しながらも重い腰を上げてくれたことに、今更
ながら、ありがたい気持ちでいっぱいになります。
日活が純愛路線の映画を制作していた時代、まさに私の
青春時代でした。「愛と死の記録」「白鳥」「陽の当たる坂道」
「嵐を呼ぶ男」‥。友達と連れ立って、映画館に通ったもの
その後、渡さんは「大都会」や「西部警察」などテレビで大活躍。
ただ私には、やはり銀幕のスターのイメージが強いのです。
あのスケールの大きさは、映画でこそよく分かるのではと‥。
でも、テレビにも秀逸な番組がありました。ジョージ秋山の漫画、
「浮浪雲」(はぐれぐも)の主人公、雲さん。硬派のイメージを
覆すような、ちゃらんぽらんのキャラクターですが、芯の部分は
優しくて、温かくて、筋が通っていて、渡さんの素の部分に
通じるものがあるようで、とても好きなドラマでした。着流し姿が
あんなに美しい浪人は、他の俳優さんでは思い当たりません。
嫁入り道具の中に忍ばせてきた、沢山のブロマイドや切り抜き。
何十年も日の目を見ることなく、戸棚の奥に埋もれていましたが、
この機に出してみました。誰でも年相応に変貌を遂げるのは
当然ですが、若い頃と大きく印象が違わないのは、渡さんの
生き方が、まっすぐ一筋であったからでしょうか。
「巨星、墜つ」
「一つの時代の終わり」
書き出すと際限がないので、この言葉でピリオドといたします。