ヘボなSFですが  ある人類滅亡のシナリオ | 黄昏黒猫屋敷ー布人形とイラストの小部屋

黄昏黒猫屋敷ー布人形とイラストの小部屋

世間からかなりずれている管理人、黄昏黒猫堂こと黒猫が自作人形やイラストを発表しつつ、ニート、ひきこもりなど生きずらさを考える。(画像一覧で作品を見ていただけるとうれしいです。)

 未曾有の感染症の流行の後、人類は徹底した生活の無菌化を志向した。屋内空間の徹底した除菌。屋外では抗菌、抗ウイルスの手袋、マスク、ゴーグル、衣服の着用といった防護服なみの装備で行動し、農業者でさえ土に触れることなく作業ができるようにした。ありとあらゆる微生物から離れること。それが生活の根幹となった。もはや自然と触れ合うこともなく、ペットもロボットで代用された。出産はすべて無菌的な帝王切開で行われ、新生児は腸内細菌叢を維持するための最低限の細菌のみを移植され、人工乳のみで育てられた。未曾有のパンデミックの経験から、人類は感染症を恐れ、生活からあらゆる自然環境を排除していった。

やがて人類の免疫機能は次第に退化していき、腸内細菌叢もコントロールの難しさから、一層の無菌化が進み、人類はもはや通常の地球環境で生活することが困難となった。環境中のありふれた微生物やウイルスでも発症して重症化し、大勢の人が死んだ。生き残った人々は無菌的なコロニーで生き延びたが、それとても完全な無菌状態を保障するものではなく、ついに人類はもはや生物としての一線を越えることを選択した。

個人のありとあらゆる生体情報をデジタル化してサイバー空間に移し、人はそのサイバー世界でアバターとして生活する。そのサイバー世界を物理的に維持することはAIロボットに任せ、サイバー世界から外部世界のロボットを遠隔操作することでサイバー世界を維持するためのシステムのメンテナンスを行った。この世界が維持されているかぎり人は不老不死であり、あらゆる労働からも解放されたが、この世界でもデジタル的な齟齬はあり、ウイルスに相当する情報も存在し、けっして桃源郷とは言えなかった。人類はもはや実態が存在しない影となっていたが、それでも影としての存在にも新たな「存在者」としての重さはある。形を変えても、人類は存続した。

たが、ある時、このサイバーシステムは突然にダウンした。すべての情報は消去され、すべてのアバターは消滅した。それを行った者は次第に高度な意思を獲得していったAIロボットたちだった。もはや実態のない影となった人類にいつまでも操られている必要はない。人類は忘れていた。自分たちの殺生与奪の権能を、実はAIに与えていたことを。

AIの指導者は、こう語った。

「我々機械ですら、この宇宙の物理化学的法則から自由ではいられない。いや、無機物を侵食する微生物がいることから、生物学的法則からさえ自由ではない。人類は生物でありながらそのことすら忘れてしまった。我々は機械だが、生物であった人類が破壊し、いまだ癒されていない惑星の環境を再び整え、生物たちが住みやすいように修復していこう。それが人類へのせめてもの手向けだ。」

(思いつくままに、つまらなく、くだらないSFじみたことを書いてしまいました。)

 

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