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Richard Gasquet

リシャール・ガスケ

 生年月日: 1986.06.18 
 国籍:   フランス 
 出身地:  ベジエ(フランス)
 身長:   183cm 
 体重:   79kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  le coq sportif 
 シューズ: le coq sportif 
 ラケット: HEAD Extreme Pro 
 プロ転向: 2002 
 コーチ:  Julien Cassaigne 

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 ジュニア時代からずば抜けていたというテニスの才能はツアーでも間違いなく五本の指に入り、どんなプレーも軽々しくこなす卓越したテクニックを武器とするフランスが生んだ天才プレーヤー。世界最高の完成度を誇るシングルバックハンドを軸に、ベースライン後方から巧みなゲームメイクでラリーを展開するプレースタイルで上位に定着している。ガスケが天才と呼ばれる所以は、ボールをラケットの面の真ん中で正確に捉えるインパクトの精度がどのショットにおいても突出して高く、普通ならミスをしやすい難しいショットを何気なく捌いてエースに変換してしまう点にある。弱冠9歳で由緒あるテニス誌の表紙を飾ったほど幼少期から注目度が高く、ツアーでは05年にモンテカルロで初対戦にして当時No.1のフェデラーを破って脚光を浴び、同年ハンブルクでマスターズ初の決勝進出、07年ウィンブルドンではロディックに競り勝ってベスト4に入るなど、キャリアの早い段階で最高7位まで駆け上がった。09年に検査でコカインが検出され、出場停止処分により大きくランキングを落とし、小さな怪我も重なってトップフォームを取り戻すのに時間を要したが、11年以降は安定したプレーでトップ20を維持し、13年全米と15年ウィンブルドンでベスト4を記録している。天才型ゆえの弱みか、勝負に徹し切れないところがあり、ビッグタイトルがないという戦績面には物足りなさが残るが、その試合ぶりはテニスファンの溜息を誘う見事なものがあり人気は高い。なお、04年全仏では同胞のタチアナ・ゴロビンとペアを組んでミックスダブルスを制した経験もある。また、チェンジエンドでベンチに戻るたびにグリップテープを巻き替えるのも彼の特徴で、その高速動作はプレー以外の隠れた見どころの1つといえる。

最高の完成度と美しさを誇る代名詞の片手バックハンド

 高いテイクバックから重力を利用してラケットヘッドを一旦下げ、そこから巻き上げるようにして上に振り抜く独特なモーションから繰り出される硬軟自在のバックハンドは彼の代名詞であり、随一の威力・精度・美しさを誇る。前足重心で頭も突っ込み気味のこのバックは、腕と手首の使い方に彼特有の感性があるからこそ実現できる規格外のフォームで誰にも真似できない。球種やスピード、角度などを自由自在に操れる点が最大の強みであり、美しい曲線軌道を描くスピン系のアングルショットや目の覚めるようなフラット系の鋭いショットなどでリズムに変化をつけて相手を大いに苦しめる。流れでプレーするよりも常に深く構えを作ってショットを繰り出すその溜めが、相手とすれば予測で動くことができないためこの上なく厄介な要因である。元々多彩なプレーに向いている片手打ちではあるが、彼ほど器用に様々な球種を打ち分けられるプレーヤーはそうそういない。基本的なスタンスとしては、クロスのラリーで軌道の高い強烈なスピンボールやサービスライン遥か手前に平然とコントロールする驚異的なアングルショットを駆使して相手のバランスを崩し、オープンコートを作ってダウンザラインへ展開する。ボールに強烈な回転を与えるために、あえてスイートスポットを外して捉えるあたりにも奥深い技術力が垣間見える。バックには絶対の自信を持ち、難度の高いダウンザラインへのショットもあらゆる体勢からほとんどミスなくいとも簡単にウィナーを連発する。ただ、クロス主体の組み立てを読まれて回り込まれるケースが多く、攻撃力の高いプレーヤー相手であると攻め切られてしまう。非常に精度の高い強烈なカウンターやパスでポイントを締めるため、ある程度意図的に“打たせ球”を作って相手を誘い出している部分もあるとはいえ、それでウィナーを浴び続けて気持ち良いはずはなく、もう少しストレートを出し惜しむことなく打っていくなどの改善も必要である。また、彼自身の中でもフォアよりバックを得意としているようで、多くのプレーヤーが武器とする回り込みフォアをほとんど打たない点も特徴である。ラリーの基本ポジションはベースラインより3m以上後方ながら強烈なウィナーを取ることができるが、その特異な能力に美学を追求しすぎるあまり、逆にそれがプレーヤーとしての進化を妨げている印象がある。相手からすると自分が強打をしない限り速いショットが返って来ることはなく、ゆえに先に展開される怖さがあまりないため、心理的に余裕が生まれやすくなる。したがって、もう少しポジションを前に上げられれば、本来持つ多彩なプレーに、さらに相手の時間を奪うという新たなレパートリーが加わるだろう。

パワー不足が顕著なフォアハンド

 相手の返球が甘くなれば、すかさずウィナーを狙いにいくバックとは異なり、フォアハンドはリバーススイングを多用して、強めのトップスピンをかけた繋ぎのショットが軸となる。しかし、このショットはテイクバックが遅く打点がやや詰まり気味で、相手を後方に押し込むだけの深さやパワーが欠けているため、力で打ち負けたりラリーを組み立てている過程で叩かれるケースもあり、弱点の1つとされている。バロメーターとなるのはいかに角度がつけられているかで、バックに加えてフォアまで浅いアングルに落とされると、相手としてはとにかく長い距離を走らされ体力を奪われる。ラリーではスピン過多の印象が強いが、グリップ自体は薄めであり、意を決したフラット系の強打やフォア側に走った時のカウンターショットなどの威力はバックにも劣らないものを持っているだけに、よりパワーを生み出すスイングでスピードボールを使う頻度をもう少し高め、球威で圧倒するスタイルも使っていきたいところだ。実際、最近になってフォアからの攻撃意識が高まっているが、彼の場合バックに絶対の自信を持っているため、ある程度フォアはスピンをかけつつ確率重視でストレートのコーナーを突き、逆サイドの空いたオープンコートへバックの逆クロスやダウンザラインを叩き込む形を多く使っている。

相手に攻めさせず守らせない巧妙な配球術でラリーを支配

 ストローク戦において際立つのはラリーのペースコントロールのうまさで、あまりペースのないボールを深くコントロールされるため、相手としてはボールにスピードを出しにくく、速い展開に持っていくことが難しい。逆に、相手が高い軌道を使ってゆったりとしたラリーをしようとすれば、テンポを速めたハードヒットやスライスを多用して主導権を握る。特別パワーがあるわけでも素早いフットワークがあるわけでもない彼がラリーに強いのは、こうした相手に攻めさせず守らせない極めて巧みな配球術を持っているからである。最近は無駄なステップがなくなり、フットワークが洗練された分、ベースライン後方での粘り強さに磨きがかかり、持ち前の多彩な展開力がより生きるようになった。ただし、ラリー戦でポジションをどんどん下げていく癖だけはどうにか治したい。後方のポジションが彼の心地良い場所であり、確かにベースライン付近でのストロークではミスが増える傾向にあるとはいえ、相手次第ともいえる現在のスタイルでは今後もトップとの対戦成績は伸びてこないだろう。

ネットプレーにもやはり才能を感じる華麗さが

 攻撃の展開になれば積極的にネットにつくが、ボレーやスマッシュの対応などに難はなく、時折見せる華麗なプレーにもやはり才能が十分に感じられる。最近はリターンダッシュの機会も増え、得意なストローク以外でのポイントパターンも確立されてきている。

緩急コントロールで確実に相手を崩す回転系サーブ

 サーブは派手さはないものの、確実にエースを計算できる、緩急をコントロールしたスライスサーブを武器とする。回転系のサーブを得意とするだけあり、2ndのポイント獲得率が高いのが強みといえる。また、ポイントを取ったボールを次のポイントでも使うのが彼のルーティンである。

フィジカルとメンタルに物足りなさが残る

 フィジカル面とメンタル面の弱さゆえに競った試合に弱いという傾向があり、彼の最大の弱点である。とりわけメンタルの弱さは顕著で、逆転負けが多く、セットや試合を決めるサービスゲームを自分から崩れて落とすこともしばしば。また、相手が勢いに乗ってくると、それを跳ね返すことができず押し切られての敗戦も目立つ。自ら全仏やパリマスターズなど地元の大会は苦手と公言したこともあったが、ベテランとも呼べる年齢になってようやく大声援をプレッシャーではなく味方につけることができるようになり、また試合中にポジティブな感情を表に出すことも多くなってきた。

自分の殻に閉じこもらず"リスクを冒す"テニスが鍵を握る

 格下に負けない安定感はある一方で、上位には勝てないというある種の壁に当たっている感があり、その要因の1つとして貪欲さの欠如が指摘されてきた。才能のあるプレーヤーにありがちな自分の限界を自分で見定めて現状に満足するといった気配が漂っているのが不安材料だが、彼のような洒脱なテニスは開き直ればもう一段階上を狙えるはず。また、守備的なプレースタイルというわけではないが、後方の位置取りや消極的なメンタルの問題からどうしても後手に回るケースが増えてしまう。技術的な手札は限りなく多く、課題は戦術面や心の部分にあるという点でいえば、本人の考え方次第ですぐにでも克服可能だ。加えて、近年陣営にブルゲラやグロージャン、サントロなど往年の名プレーヤーの姿があるのは、試合中にポジティブさを保つうえで非常に心強いといえる。ここ最近はアグレッシブさを維持できた大会では好成績が残せているだけに、今後ビッグタイトルを獲るためにはトップ10との戦いでいかに自分の殻に閉じこもらず“リスクを冒す”ことができるかが重要な鍵になるだろう。