徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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白鷺館アニメ棟

読響大阪公演のコバケンの「英雄」はド演歌だった

 昨日、大阪まで日帰りして疲労困憊しているのだが、今日も連日の大阪遠征になってしまった。今回は読響の大阪公演。前回は中止になったんだが、今回は規制の緩和を受けて実施する模様。ただし指揮者は来日不可なのでコバケンに変更。大阪フィルの定期に次いでまたもコバケンである。さては大フィル、この公演に合わせてコバケンに出演依頼したな。

 平日の仕事後だし、正直なところコバケン演歌は得意でないのでキャンセルも考えていたのだが、キャンセル申し込みのはがきが到着していたのが私の山陰遠征中で、葉書に目を通したのはキャンセル申込期限の日の夜。それでやむなく大阪まで来る羽目に陥った次第。

 仕事を終えると阪神高速を突っ走るが、昨日に続いて連日の夕方の渋滞。つくづく難儀なことである。ただ今日は昨日の教訓で早めに出てきたこともあり、大阪に到着したのは駐車場の予約時間よりも前。仕方ないので駐車場の入口の前で車を止めて、この原稿を打って時間をつぶしている(笑)。

 そもそもこんなことをして待たないといけないのは、フェスティバルホール会員の駐車場特典が3時間までということ。それを過ぎたら通常料金の追加がある。だからあまり早めに駐車場に入ると終演後に戻った時に追加料金を請求されるので、そうならない時間を計算して待たないといけない次第。そう言えば回りを見渡したら私と同じ道にやけに多くの車が止まっているが、もしかして同じ事情か? とりあえず夕食を摂る必要のある私は6時20分に車を入れたが、これは指揮者がコバケンであることを考えるとかなりきわどいタイミング。最悪は追加料金覚悟しといた方が良さそうだ。

 

昨日に続いて今日の夕食もラーメンに

 夕食だが、30分程度しかないので結局はラーメン、というわけで昨日と同じく「而今」に行くことに。さすがに昨日と同じものを食べる気はしないので「特製あさり塩ラーメン」を注文。昨日の経験から麺大盛りのオプションをつけて1100円。

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今日の夕食も「而今」のラーメン

 麺は昨日と同じ。ただの塩ラーメンならさっぱりしすぎるところだが、アサリの出汁が加わることで非常にコクのある味になっている。やはり海鮮系の出汁とは偉大である。特にラーメンとは相性が良い。なお麺大盛りにしたことでようやく「普通の量」になっている。これでファミマに行く必要がなくなった。

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特製あさり塩ラーメン

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麺は増量している

 時間に余裕がないのでラーメンをかき込むと急いでホールへ。以前より読響大阪公演は大人気だが、今回もセット券の販売がコロナ以前だったこともあって、場内はほぼ満員に近い。確かにこれでは席を間引きようがないので、前回は中止にしたのもやむを得なかろう。入場ゲートの警護に関しては、昨日の大フィルよりもかなり物々しく、サーモグラフによるチェックなども厳格に行っている。それにしても毎度毎度なぜかこのオケのコンサートはロビーに黒服がずらっと並ぶせいで威圧感がある。なお会場にはテレビカメラが入っていたが、読売テレビのようだ。読響クラシックコンサートに使用するのか、それても読売テレビの独自番組でもするのか? まあ前者だろうな。

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ホール内はほぼ満席

 

読売日本交響楽団 第27回 大阪定期演奏会

指揮/小林研一郎
ピアノ/河村尚子

曲目/グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
   ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲
   ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」

 

 いきなりルスランが読響がフルボリュームでがなり立てるので驚いた。とにかく鬱憤を晴らすかのような大音量でノリで突っ走る演奏、そもそもコバケンは統制を効かせるタイプの指揮者でないし(って言うか、全然振ってない瞬間が多いし)、やりたい放題感がある。さすがの読響もいささかアンサンブルが怪しかったが、とにかく「勢い」は思い切り感じさせた演奏だった。

 ラフマニノフがその技巧をひけらかすかのような変奏曲は、河村のピアノの技に尽きるだろう。ガツンガツンとやや硬質なタッチで余裕で弾きこなす様は圧巻ではある。もっとも私はこの曲自体を以前からあまり面白いとは感じていないので、技術には圧倒されても音楽的な感動は正直あまりない。

 河村はこの後のアンコールで「私は叙情的な曲も弾けるんですよ」というところを披露していた。ただタッチがかなり力強いので、それが場合によって雑な印象につながりかねない紙一重。

 最後の英雄はコバケン節が炸裂。そもそもこの曲は古典的演奏とロマン的演奏に極端に分かれやすいが、コバケンの場合は後者というよりも完全にド演歌。第一楽章はノリでひたすら突っ走る印象だが、例によってのシットリネッチョリの味付けはある。しかしコバケン節が最強レベルで披露されたのは第二楽章の葬送行進曲。まさにコバケン演歌の真髄である。ネットリネットリした演奏の中で、なぜかこぶしが回っているように聞こえる弦楽の節回し。葬送行進曲が葬送演歌になっている。それ以降もややテンポを落とし気味の糸を引くような演奏。好き嫌いはあるが、個性的な面白い英雄にはなっていた。

 先日のベートーベンの第二番はあの演歌的演奏はどうかと疑問を感じたが、第三番になるとそれが意外にはまるのに気づいた。チャイコのマンフレッドは意外に面白かったし、とにかくコバケンという指揮者はクセが強いだけにかなり曲を選びそうである。指揮者が曲を選ぶと言うよりも、指揮者に曲を合わせた方が正解か。


 演奏後はコバケンの話にアンコールまであったので、駐車場まで走る羽目になってしまった。到着したのはギリギリの時間。ここから今日も夜の阪神高速を突っ走っての帰宅である。なお帰りにはフェスティバルタワーの裏手からハイヤーが続々と出てきていた。そういう階層の客が多いのが読響のコンサートの一つの特徴で(企業の接待なんかもあるだろう)、その辺りがロビーの物々しさにつながっている。他のオケでは滅多に感じない階層格差のようなものがこのオケだけはある。多分企業の体質なんだろう。