千里と結婚した私は通っていた高校を退学した。


元々好きで通っていた学校じゃなかったからあっさりしたものだった。


ただ親友の多佳子には退学に至った事情を説明した。


私があの蓮河拓と結婚したと知った時の多佳子の驚きぶりは相当なものだった。


だけど其れを知っても尚、変わらぬ付き合いを続けてくれているのが嬉しかった。




そして千里の小説【白き鼓動】の映画化の話も順調に進んでいた。


勿論キャスティングに関しての選出は演技力を吟味したオーディションによって決まった。



傲慢だった蓮河拓がひと回り歳下の女の子と結婚してから随分柔和になったという話は業界内ではちょっとした話題になった。


もっとも其れは作品においてもよい影響になっていて、私は家に来る色んな編集者さんたちに感謝されることになった。





何はともあれ──





「おーい、聞えるか?お父さんの声だぞー」

「まだ聞えないよ?多分」

「何云ってるんだ、耳は一番初めに出来る器官なんだぞ」

「え、そうなの?」

「多分」

「何其れ」



ソファに座っている私に膝枕で眠りながら少しだけふっくらした私のお腹を撫でながら愛おしそうにしている千里を見ていると堪らなく幸せを感じる。




ずっと……




ずっとこんな幸せが続けばいいなと思った私だった──。








愛のセンリツ(終)

senritu
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