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中~長期のテクニカル分析に便利なエリオット波動

何回か【雑感】の記事に登場しましたが、今回は「エリオット波動」について解説します。銘柄を分析する道具の一つとして、長期投資家の人も身につけておくことをオススメします。

エリオット波動は、テクニカル分析の一種

銘柄分析には、大きく分けてファンダメンタルズ分析とテクニカル分析があります。ファンダメンタルズ分析は、有利子負債やネットキャッシュなど、企業の財務状況の分析を重視します。どれだけの営業利益を出し、来期以降それらの数字がどのように変化していくのかを予測する…。つまり、どちらかというと長期投資向きのやり方です。

一方、テクニカル分析はチャートの形やパターンを主に分析します。買いと売りの圧力がどのように拮抗しているか、機関投資家が大きな仕掛けをしているかどうかなど、株価の変動の仕方を観察することになります。お察しの様に、これは短期投資家に人気のある手法となります。

この説明だけを聞くと、ファンダメンタルズ分析は長期投資家用、テクニカル分析は短期投資家用のように聴こえるかもしれません。しかし、月足や週足チャートは長期のトレンド分析に有効なので、長期投資家であってもテクニカル分析は道具の一つとして使うべきです。ファンダメンタルズとテクニカル、両方の道具を使った方が、銘柄判断の根拠は強くなるのです。つまり、自分の銘柄分析に自信が持てるようになります。

そして、今回説明するエリオット波動は、長期~中期分析に有効なテクニカル分析です。だからある程度、長期投資家も概要を知っておいて損はありません。

上昇しながら山3つ!

エリオット波動はすごくシンプルに説明すると、山を3つ作る上昇相場があって、その後2番天井つけて一つのサイクルを終える、というものです。

例として、2016年から18ヶ月かけて高値を取ったマザーズのチャートを見てみましょう。

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綺麗に山が3つ出来上がっていませんか?1つ目の山より2つ目の山が、そして2つ目の山より3つ目の山が大きくなる、という特徴です。その後は下落し、2番天井で一旦盛り返しますが、高値を掴まされた人が諦めるまでの時間を要しますので、調整期間入りとなります。

厳密には1つ目の山を作る際の上昇が「第1波」、1つ目の山を下る下降が「第2波」となります。なので、2つ目の山は「第3波」と「第4波」から、3つ目の山は「第5波」で形成されます。

私はこれくらい程度にザックリとした知識でしか使っていませんが、それでもなかなか参考になります。しかし実際には、かなり細かい観測ポイントがあるようです。

○第1波は迷いのある動きで、方向性がまだ見えにくい。疑心暗鬼。
○第2波は、第1波をかき消すような強い動き。出来高は少なくなり落ち着く。
○第3波は強い動き。値幅が飛躍しやすい。
○第4波は売り買いが拮抗し、横這い調整になりやすい。
○第5波は勢いがとても強く、上昇角度が鋭い。バブルを思わせるような急騰になりやすい。
○第2波は第1波をかき消すように下落しない。
○第4波の下落で、1つ目の山の頂点を下回らない。

いかがでしょうか、おおよそ先程のマザーズチャートにも当てはまっていると思います(第4波が1つ目の山の頂点を下回ってはいますが)。チャートは意図せず不思議な動きをすることもあり、騙しがあります。だから全て条件が完璧である必要はないのです。おおよそ当てはまっていれば十分です。

この理論は個別株にも当てはめることは可能です。しかし、個別株こそ機関投資家の手が入りやすく、予想外の方向に株価が動く機会が多くなりますから、エリオット波動に当てはまらない事例もかなり多くなります。個別銘柄よりは日経平均やマザーズ指数など、いくつもの銘柄の数字から構成され、平均化されたチャートの方が当てはまることが多いと思います。

よって、エリオット波動は個別株の動向よりも全体の流れを把握するために利用した方が良いかもしれませんね。

今後のマザーズは?

2020年も、莫大な金融緩和のおかげでコロナ直後の3月からたった6ヶ月の時間で前回高値に到達しました。通常の金融緩和量の約3倍の金がバラまかれてると言います。だから到達速度も3倍…資金量は経済の速度に比例する、ということもいつだったか説明しました。

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2020年3月からの上昇は、急スピード過ぎるのでエリオット波動に当てはめていいものかなんとも言えません。しかし、「山3つ」のパターンはけっこう当たるものです。だからこのあとマザーズは大統領選で調整して、年末にかけて3つ目の山を作りにいく…そして春先にかけて2番天井があり、バリュー株が割安だと気づいた人から資金を移動し始めるとすれば…三菱UFJ銀行もちょうどチャートが整う頃と合致します。

三菱UFJ銀行のチャート

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だから今後のイメージとしては、

○マザーズが中心となり、年末相場を牽引する(第5波動的な動き)

○バリューもそれにつられて多少騰がるが、本格的にはマザーズの第三波動終了後(来年春先頃)に資金が流れてきてから

と予測します。

エリオット波動は正しいか?

先程も述べましたが、エリオット波動は個別株にも当てはめて考えることが出来ます。しかし個別株の場合、クセが強いものや仕手株もあります。あくまでも観察方法の一つとして利用すると良いでしょう。

大切なのは、この理論が正しいのかどうか、当たるのか当たらないのか、ではありません。100%当たる理論がこの世に存在しないからです。よく当たる理論を誰かが見つけても、その理論の逆手を取って売買する機関投資家が出てくるから、結局その理論は崩れるのです。チャートの形やパターンを好んで観察する人もいますが、同じ理由により「チャートには騙しがある」と言われることになります。

「過去のチャートパターンではこうだったから、今回も同じようになる」と考えることは決して間違いだとは言いませんが「過去のパターンに素人は食いつくだろうから、同じ様な形を演出してやろう」と考えるのは機関投資家の得意技です。チャートの形が良いから機関投資家が利用するのか、機関投資家が個人の心理を利用するためにチャートを整えているのか。これはもはや、卵と鶏どっちが先か、という話と一緒なのです。

チャートパターンの形成は、人々の心理の総計である

エリオット波動のパターンをはじめ、チャートのパターン形成はある意味でコックリさんと一緒と言えます。

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みんなで1枚の10円玉に指を置いてコックリさんという妖怪(?)に何か質問をすると、文字盤の上に置いたみんなの指を誘導し、質問に回答してくれる、というものです。誰かが力を入れて指を動かしているのか、それとも霊的な存在が誘導してくれているのか…。いろんな説がありますが、結局のところ、これは「みんなの無意識のしわざ」なのでしょう。これを読んでみてください。

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無数に存在する投資家の中には、当然チャートのパターンを意識する人がたくさんいます。だからチャートを形成する際は、多くの人々の心理が影響している面は否めません。例えば三尊形成しそうな局面に出くわすと「このパターンは三尊形成だから、このあと下落するんじゃないか」と、三尊のパターンを知ってる人たちは弱気になり、それがチャートに反映されます。特定の誰かの策略ではなく、不特定多数の無意識でチャートが形成されていくことになるのです。

ただし、資金量のある機関投資家が口を開けて待っている場合は別です。金にモノを言わせ、パターンとは逆の動きを演出することもある。それがチャートとコックリさんが違うところです。

判断するのは自分の頭であって、道具ではない

エリオット波動をはじめ、チャートのパターンに「絶対はありえない」ことがお分かりいただけたでしょうか?チャートパターンも相場サイクル論もファンダ分析も…全て一つ一つはただの観測道具に過ぎません。株で上手くいかない人は、道具の使い方を間違えています。どれか一つの道具に頼り、道具が導き出した結果だけを頼りに売買していませんか?自分の頭で判断することを停止していませんか?

観測道具が出してくれる結果は、可能性の一つに過ぎません。だからいくつか併用したり組み合わせて使うほうが良いでしょう。そして出てきた結果を見て、最後は自分の頭で判断するのです。あなたがその銘柄に投資する根拠が強く、明確に描き出せるかを想像しなくてはなりません

例えば私の場合、チャート分析では相場サイクル論とエリオット波動の2つの道具を主に重視します。加えて、ファンダ分析ではROEや営業利益成長率、営業キャッシュフローに自己資本比率、ネットキャッシュと時価総額…たくさんの道具を使います。更に地政学の視点も相場温度を計る道具にしています。これらの道具を使い、トータルで見た時に今狙っている銘柄を買うべきかどうかを判断します。

幾つもの道具を使って観測して同じ答えが出るなら、いっそう自分の考えを裏付けることになり、自信がつくはずです。初心者の方々が意識するべきことは、よく当たる当たり屋を見つけることではありません。いつか自分の頭で銘柄を判断し、投資で稼げるような頭を鍛えることです。時間はかかりますが、ぜひ努力をしてみてください。

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