【第十一章 ネットワーク会議】第三話 モック

 

 朝、にこやかな笑顔で、迎えに来た梓さんに連れられて、ユウキは美和さんと一緒に買い物にでかけた。

 さて、Skypeを制御するライブラリを調べるか・・・。
 開発ツールに組み込んで、え?簡単にできそうだ。ライブラリもあるし、サンプルもある。

 マイクロソフトから提供されているVisual Studio の最新版を起動して、NuGet でアセンブリを登録して、サンプルで書かれているコードを入力して起動すると、簡単にできてしまった。

 2日くらいは必要だと思っていたが、思った以上に簡単にできそうだ。
 今回は、セットアップファイルを作らなければならない。コピーすれば動くけど、体裁は必要だ。

 ネットワーク会議ができれば十分だと書かれている。
 必要最低限のスペックで最初は作ろう。

 検証は、大丈夫だろう。一応、複数からのアクセスを確認すればいいだろう。
 Skype も複数のバージョンでチェックを行って、フレームワークはWindows10に標準で入っている物でいいよな。Windows7はサポートが切れているから、対象としてはふさわしくない。”動く”だろう・・・。けど、サポートは出来ないからな。

 作るのよりも、テストが大変だな。
 ADに参加していなくても大丈夫なのか?Azure で運用したほうが良いのではないか?バックアップ体制はしっかりと作るけど、復帰までの時間稼ぎの方法も考えておく必要がありそうだな。

 エラー処理や設定画面の作成。作らなければならない物は多いけど、一番の懸案事項が片付いたのは良かった。
 検証を進めていこう。いろいろ、機能があるし、接続できるサービスもある。

 専用プログラムのようにするのはあまり好みではないけど、簡単なモックを作って未来さんに見せて、確認してもらったほうが良さそうだな。

 モックなら、それほど時間はかからない。提案書と一緒に提出できるだろう。

 必要になる画面や機能を作っていく、オープニングには未来さんを出すと怒られそうだから、事務所の名前だけにして・・・。メイン画面は、通話画面とスタートと停止ボタンでいいかな。未来さんと美和さんが使う物は、少し細工が必要になるだろう。クライアントの情報が表示出来たほうがいいだろうな。
 設定画面は、作り込むまでは適当でいいな。

 時計を確認すると、もう昼を回っている。コーンフレークとヨーグルトで腹を満たした。
 昼からもモックを作る。いくつかのパターンを用意してみることにした。

 夕方が近づいてきたので、リビングに戻る。
 ユウキが先輩たちを連れて帰ってくるだろう。天気は、悪くないからバーベキューでいいかな。森下家にあったバーベキューセットを借りてきて倉庫に入れてある。炭を買いに行かないと・・・。時計を見ても、まだ時間がある。ユウキにメッセージを投げておけばいいだろう。

 ユウキから返事が来た。
 梓さんが、帰り道にあるジャンボエンチョーで炭を買ってきてくれるらしい。着替えたのが無駄になったが、行ってくれるのなら任せる。

 肉と野菜を切り分ける。
 焼肉のタレは、俺がブレンドした物だが、ユウキが好きだと言った味になっている。ご飯も、多めに炊いておく。残ったら、明日の昼に食べればいい。

 野菜は少なめ、肉が多め。ユウキは、牛肉も好きだが、ブタ肉のほうが好きなので、ブタ肉を多めにする。鶏肉は、串に刺しておく。
 4人だから、こんな物でいいかな?足りなかったら、ヤキソバを作ればいい。材料は買ってきている。

 ユウキから、炭を買ったと連絡が入った。
 庭にバーベキューセットを置いた。テーブルと椅子も倉庫から持ち出した。桜さんと美和さん。森下家に有った使わない物をこっちの倉庫に押し込んだに違いない。見たことがある物が多すぎる。ビニールプールまで有ったぞ。別に、まだ余裕があるから良いけど、もう一度、使わない物は、庭の地下に移動させたほうがいいだろう。
 先輩たちが来る前に、庭の地下倉庫を見てみる。
 いつの間にか、部屋が半分に区切られていて、奥にはワインセラーみたいな物が作られている。オヤジも桜さんも、付き合い程度に飲むだけなのに・・・。貰った酒の保管場所にでもしているのか?見なかったことにして、ビニールプールとか必要ない物を地下室に移動してしまおう。

「タクミ!ただいま!」

「おかえり。美優さんも梓さんも、ありがとうございます」

 先輩たちも遠慮が無くなっている。
 そのまま庭に通して、買ってきてもらった炭を受け取った。代金は今日と明日の食事代だと言われたが、割に合わない。気にしないようにして、テーブルに切り分けた肉や野菜を並べる。

 ユウキに飲み物を持ってくるようにお願いして、炭に火を付ける。

 ユウキが戻ってきて、先輩たちが買ってきてくれた紙コップにジュースを注いで乾杯をする。
 なぜか、花火も買ってきていたが、あえて無視した。無駄な抵抗だと解っていても、見なかった事にしたかった。

 先輩たちは、今日は泊まっていくらしい。ユウキが勧めていた。
 明日も買い物に付き合って貰うので、別に問題はないが、離れに泊まらせるつもりのようだ。

「いいよね?」

「いいよ。離れは、もともと、その為の部屋だろう?」

「うん!」

 ユウキが先輩たちに説明を始めた。
 俺が補足しないとダメだろう。食事が終わったら説明するので、それまで待ってもらう。

 食事が終わって、食休みをしている時に、梓さんが話しかけてきた。
 ユウキと美優さんが片付けをしてくれている。

「話を聞いたよ」

「どの話ですか?」

「僕たちが出来なかった、部活連の解体に成功したようだね」

「あぁそうですね。バカが多かったので、それに便乗しました」

「具体的には?」

 ここ暫くの動きを簡単に説明した。

「あのバカ上地がきっかけだったのか?」

「まだ確定はしていません。もう、俺たちの手を離れています」

「そうか・・・。それで?」

「上地が作ったと思われる、パソコン倶楽部も解体しました。部活連の会頭だった、十倉さんには、生徒会で作業をしてもらっています」

「十倉なら大丈夫だろう」

「そうですね」

「悪いな。本来なら、僕たちの世代で始末しなければならなかったのを押し付けてしまったようだな」

「いえ、俺も、部活連は必要ないと思っていましたので・・・」

「そうか・・・。そうだ!ユウキが、DVDが見られるとか言って、ツタヤで僕の美優と何かを借りていたけど、リビングで見るのか?」

「あぁ・・・。”僕の”を強調しなくて大丈夫です。DVDは、離れで見られますよ」

「・・・?」

「わからないと思うので、あとで説明すると言ったのです。洗い物も終わったみたいなので、離れに移動しますか?そのまま寝るのなら、先にお風呂に入ってきて下さい。”二人”で入っても大丈夫な広さです」

「・・・。ふぅーん」

「どうしました?」

「ユウキといつも二人で入っているのか?」

「そうですね。時間が合えば・・。ですね。俺は、何か呪われているのか、面倒事が舞い込んでき、ユウキとの時間が取れなくなってしまうのですよ!」

「すまない。調子に乗った」

 さすが、前副会長だ。不利になりそうな匂いを感じたらすぐに撤退していった。美優さんと梓さんが先にお風呂を使った。最初から泊まっていくつもりだったようで、2泊分の着替えを用意していた。
 二人が風呂に入っている間に、ユウキに明日の予定を確認しておく、聞いていた通りで問題はないようなので、朝ご飯は4人前に増える。

 二人には、リビングで休んでもらっている間に、ユウキが風呂に入った。俺は、シャワーを浴びるだけにした。
 その後、離れに案内した。ユウキも、今日は先輩たちと一緒に寝るようだ。女子会だとはしゃいでいた。

 翌日は、朝ごはんをしっかりと食べた3人は、美和さんと一緒に買い物にでかけた。
 俺は、違う形のモックや、管理用のプログラムのモックを作った。画面をキャプチャして、提案書の仕上げを行った。

 帰ってきて、タコパをしてから、同じように休んだ。
 なぜか、花火を庭でやったが、ユウキが喜んでいたから、良かったと思う。

 3人が離れで新しく借りてきたDVDを見ると言っているので、秘密基地に入って、未来さんに提案書とモックを送付した。

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