Sunday, October 25, 2020

らーは苦労が多い犬だった-4(缶詰を食べる事故~その1)



冷蔵庫を開ける犬がいることは聞いたことがあった。冷蔵庫の取っ手にタオルなどをかけておくと、そのタオルを引っ張ってドアを開けるという話。
うまいことやるな~と思っていたけれど、らーが一切興味を示す風でもなかった戸棚を開けるとは思ってもみなかった。

10歳まで一度もあの戸棚に興味を示したことすらないと思っていたのに、その日、わたしだけの夕方の散歩を終えて家に戻ると部屋が生臭い。

らーが何か吐いたか、ネズミの死体でもあるのか?なんだろう。
らーは普段通り何事もないような態度でリビングのカウチに転がって平然としている。

キッチンに入って愕然とした.....戸棚が開いている。

じーっとみると、なんとなく違和感がある。

アンチョビの缶詰が消えているように感じる。生臭いにおいからしてアンチョビだ。

普段は使わない蛍光灯で部屋を明るくして、床を確認したら、缶詰の破片らしきものが数個散らばっている。

つなぎ合わせてみるまでもなく、缶詰一個分には程遠く足りない......らーが食べた。

らーを見ると、母ちゃんどうしたの?とでも言っているかのような、とぼけた顔。



絶望している場合じゃない、夜間でも診療している病院は2か所思いつく、すぐにらーを車に乗せて、沖縄市の動物病院に向う、車中、電話をかけて事情を説明。次に診療時間を終えている主治医の留守番電話にも伝言を残す、緊急手術になると思われるので電話が欲しい。



いつも思うのだが、らーは本当に強運だ。らーを運んだ動物病院の当直の獣医師・K医師は、その巨大な動物病院グループの中で、大型犬の執刀実績がダントツ多い獣医ということだった。 

すぐに、X線をTVモニタで透視してもらったが、どうやら缶詰の素材が透視に映らないタイプらしくどこにあるか確認さえできない。

食べた時間から考えると、その時点で胃にあるとみて間違いなさそう、腸におりる前に取り除く方がいい。



吐かせることができるか? 口から食道、胃、腸というのは順番に流れるようにできていて、逆流させるといのは簡単ではないはず。

うまく胃まで落ちたのに、逆流させてどこかを傷つけて滞留させる可能性が大きい。



10歳を超えて全身麻酔で胃を切るなんて........瞬時にオペをしない場合に起こり得ることを想像してみた。

うまくいけば、何事もなく便とともに数日かけて出てくる。

90パーセントくらいの確立だろうか?

残りの10%は最悪のシナリオ、腸のどこかを傷つけてそこに留まり、ゆっくり出血、徐々にらーを弱らせて、あるとき突然、出血が激流になって、らーを死なせる。

そうなったとき、腸のどこにあるのか、レントゲンでも見えないのだからわかりようがない、開腹する場合、大きな傷になるだろう。



迷っている場合ではない、今のうちに胃を開けて取り出してもらうことに決めた。

その時点で主治医から折り返しの電話、事情を説明して、過去の薬・麻酔の種類と量につていK医師に引継ぎをしてもらう。

そして、術後を考え24時間ナースがいる本院でオペが行われることになった。

静かに水面を進む
余裕の泳ぎ方
海犬らー