私が住んだエクアドルとコロンビアでは、四季がありませんでした。同じ国内でも色々な気候があって、海岸地方に行くと海洋の影響を受けるせいか、四季はなくても雨季と乾季が比較的はっきりしていますが、内陸部・山岳地帯の首都付近はそれもあまりはっきりせず、一年中、日中の平均温度は18度前後です。といっても一日の中に四季があり、朝晩は吐く息が白くなることもあるほど冷え込むかと思えば、日中は半袖でも汗ばむこともあります。日中に雹が降って、通りが、雪が降ったように真っ白になることもあります。
CNNなどの天気予報をみると、高地のキトやボゴタなどいつみても気温18度晴れ時々雨、となっていて、真面目にアップデートしている気配が全く見られないのですが、変わりやすいのが山の気候です。晴れていても急に真っ黒な雲が湧き出して雨がザーッと降りだすと思ったら、100m先はまだ晴れていたりしますし、その雨も数時間以上降り続くことは滅多にありません。キト市などは盆地度が大きいせいか、いきなり霧が発生して、それも100mも進めばすっかり晴れていることもあります。だからCNNが、毎日毎日晴れ時々雨、と表記するのは、あながち間違っていません。
こんな天気なので、天気予報を見て今日の天気を気にする人も、殆どいません。学校の行事などでも、「雨天中止」とか「雨天延期」という概念は存在せず、行事は決まった日に必ず予定通り行われるから楽です。日本で昔、運動会や遠足の日の朝、雨が降るのか降らないのかどうもはっきりしない天気だと、学校に問い合わせの電話をしたり、通学の生徒が制服を着ているか体操服を着ているかを、外を見て確かめたりした記憶がありますが、こちらではそんな心配は無用です。朝に雨が降っていても、2時間もすればあがってあとは一日中晴れるのが普通ですし、朝良い天気でも、日中雨になることもあります。ここで降っていてもあっちでは晴れ、ということもあります。また、雨になっても止むのは早いので、その間雨宿りをすれば、予定していた行事はたいてい行うことが出来ます。
雨が降っても100m先は降っていなかったりするので、傘を持っていても、多少の雨だったら、皆、さしません。私はちょっとでも濡れるのが嫌な猫系なので、少しでも降れば傘をさすし、止めばたたむしなのですが、霧雨のようなものだと、道路の水溜りに雨粒の波紋がないから止んだんだろうと思って傘をたたむと、なんだか濡れてきたりするので、また傘をさします。でも傘をさして歩いているのは私だけだし、と、回りを見回してたたんだりします。そうやって人目も気にしつつ、傘をさしたりたたんだりして歩いているのは、日本人の私くらいのものなので、雨が止んでいても平気で傘をさしたまま歩く肝っ玉が、少し欲しいところです。車でも、小雨程度でいちいちワイパーを動かしたり止めたり、せわしなく運転しているのは私くらいのもので、土砂降りでも、ワイパーなしで運転している人も結構いるから驚きます。上の写真は、土砂降りで運転していて、ワイパーを止めてみた時の写真ですが、こんな視界でも平気で運転するのですね。
四季の話に戻ると、こちらでは四季がないので、樹木にも年輪がありません。多少雨季と乾季に分かれているので、うっすらとした線は出来ていますが、日本ほどはっきりしていないので、米国などではこちらの製材品は、年輪線がごちゃごちゃない白い特別高級材として、取り扱われているようです。
四季がないので、花も一年中咲いているように一見見えますが、花種によって、一応花をつける時期とつけない時期に分かれているようで、よく見ると、葉っぱだけだと思っていた樹木が急にピンク色の花をつけだす事もあります。私はこれを季節と関連付けたことはないのですが、こちらの人は、あの花が咲いていたからあれは10月くらいのことだったんだろうと、過去を思い出したりしているのかもしれません。コロンビアで、オレンジ色の可愛らしい花を沢山つけていた観葉植物を買ったことがあるのですが、買って直ぐにその花が散り始めました。置いた場所が悪かったのか、水やりの量が適切でなかったのかと思ったのですが、葉は元気なのでそのままにして時折水をあげていたら、半年後くらいに急に花をつけはじめました。やはり周期があるようなので、人間にとっては一年中同じ気候で、雨季と乾季もはっきりしておらず区切りがないようでも、植物は「一年」という区切りの内で何かを感じ取っているようです。
四季がないと、四季に合わせて服を変えたり服をしまったり出したりする手間もないから、楽でした。流行も目まぐるしく変わったりしませんし、服の流行そのものも殆どないので、服飾代節約にもなります。ただ、うっかりすると、同じ服を何年も着続けて野暮ったくなることはあるので、意識してワードローブを定期的にチェックする必要もあります。高地の都市のショッピングモールでは、朝晩の冷え込み用にジャケットが売られているかたわらで、トロピカルの海岸地方に休暇で出かける時の為に、水着が年中売られていたりもします。
そんな街に住んでいると、クリスマスくらいしか季節を感じるきっかけがなく、年輪と同じで、自分の年齢さえ、確実に忘れるかぼやけてしまいます。そういえば、いわゆる先進国とか工業国とか言われる国って、かならず四季があるよなぁと思いつつ、あれ、私って何歳になったんだっけ?と、誕生日の度に数えなおしている自分に気がつきます。
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