もっとましな嘘をついてくれ ータイ歌謡の日々ー

タイ歌謡について書いたり、うそをついたり、関係ないことを言ったりします。

黒社会とマスクとアニキ

2021年01月07日 19時06分54秒 | タイ歌謡
 タイのCOVID-19が大変なことになっている。
 2020年3月の、いち度目のピーク(それでも200人足らず)から対策後、一日あたりの罹患者数が毎日ずっと0~一桁で推移していたのが12月になってから二桁になる日があった。とは言っても12月の20日くらいまでは精々0~20人くらい。
 ところが12月21日に突然809人もの罹患者を出して、翌日また0人になるものの、今年の1月3日に745人、翌4日には527人、5日は365人、6日が305人だ。
สธ.ชี้โควิดสมุทรสาคร ติดเชื้อครั้งใหญ่สุดที่เคยเกิดในไทย ลุยตรวจเชิงรุก - โรงเรียน กทม.ทยอยหยุด
 このニュース番組は、サムットサコーンにあるタイ国内最大の海産物市場であるマハーチャイ市場(特にエビ売り場)でのクラスターの報道で、罹患した人たちの殆どは出稼ぎまたは移住もしくは人身売買によって密入国してきたビルマ人だそうで、それもその筈、この市場に従事している人の殆どがビルマ人だっていうんだが、アジアらしいシンジケーションだ。ウィルスは人身売買の密入国者によって持ち込まれたって、新聞では断言してるんだけどね。しかし未だに人身売買があったとは。
 感染拡大の原因はわからないものの、罹患者と、その接触者を隔離してるんだそうで、これが功を奏して沈静化すると良いのだが。
 と、思っていたら、それ以上に罹患者数が多いのが、東部の違法カジノの鉄火場を舞台にしたクラスターで、警察は「カジノではない」と発表したが、誰もそんな話は信じず、公衆衛生局の担当官は闇カジノの場所を特定(googleマップで見つけたって言うんだけど、随分とトボけた嘘だ)し、検査。隔離・治療が進んでいる。凄いね。裏社会だろうが構わず任務を遂行する。こういうのはタイだな、と思う。
 警察は何やってんだ、と国民が騒ぐかと思ったら、そんなことない。この件に関しては警察の検査官クラスの腕利きが何者かに射殺されていて、その後すぐに担当司令官はバンコクへ異動になった。政府もこの件に関しては言及してない。この状況に国民は「あー……、ね」と察したわけで、こういうのは新聞でも、とても曖昧な書き方で、でも考えればわかるよね、という報道です。しかしながら、タイには噂話というメディアがあって、詳細は噂話が補ってくれる。これの情報精度が馬鹿にならない。
 まあ黒社会の無法者でも疫病は怖いので、公衆衛生局には協力的だ。逮捕権があるわけでもないし、情報は警察に売らないように、って話もついてるんだろう。
Talking Thailand - ส่วยครองเมือง! กำจัดได้ แค่ทำ “บ่อน-การพนัน” ถูกกม. รัฐมีรายได้ดูแลปชช.
 上の報道は、ウィルスのクラスターと関係のない弱小闇カジノを検挙したニュース映像を交えて、「そんな小物捕まえてお茶濁してんじゃねぇぞ」とは言わずに、国境を超えてくるカジノは何とかしないとね、と言っており、ほんとタイ人てオトナだよなぁ。
 そういえばカジノの場所はラヨーン県とチョンブリ県の2箇所だとか匂わせている。昔はカンボジア国境地帯にあって、手入れを受けないように、そして万一逮捕されても従業員などの矢面に立つ「パクられ屋」は皆クメール人という仕組みにしていたのが、大物の利権に繋がってバンコク近くに移動してきていると言うのは本当だったのだな。しかもクメールの裏社会の付き合いはそのままだ。つうかクメールの裏社会にも儲けは渡るから、昔よりも力をつけただろうことは想像に難くない。これはヘタに探ると射殺される訳だ。いずれにしても今回のクラスターは、報道が仄めかすのを信用すればビルマからの人身売買と共に入ってきたものと、カンボジアの闇社会から流入したものということになる。たしかにタイの疫病対策は正攻法の入国だと、ウィルスの侵入は難しいんだよね。

 COVID-19の抑え込みに成功したのは中国、台湾、NZ、先月半ばまでのタイくらいか。理由は、さんざん言われていると思うが、中国は一党独裁で国民は嫌でも言うことを聞くと。タイは軍事政権だから、言うこと聞かせちゃう。台湾とNZが良き指導者と国民の誠実。これでしょう。あと島国だということ。人口の少なさという要因もあるかもしれない。日本も島国なんだけど、ガードが甘いのと、誠実さが足りない。
 誠実さってのは、カミュが「ペスト」で言っていたように、疫病から民を救うのは、ひとりひとりの誠実さだ。怠けたり、ズルをする者がいると、その綻びから疫病が入り込んで来ちゃうでしょ。言うまでもなく、今の日本は倫理が壊れてるんで、独裁にでもならない限り長引くよね。集団免疫に期待するしかないのか。

 日本のTVのニュースなんかだと、街頭のインタビューで「元通りになるのは、いつごろなんでしょう」とか他人事みたいに言っていたんだが、そんなの、元通りになんか、なる訳ない。おれの知人がやってた、ススキノの割烹も年末で店を畳んだ。その店のホームページを作ってくれと頼まれて作ったのが数年まえ。「年末でホームページ止めるので、新年からは閲覧できないようにしてください」と連絡が来た。ススキノの倒産は12月半ばで500件くらいかな、と言っていたが、年末で増えただろうな。中国人が、ススキノのビルを買い漁ってるという話だったが、ススキノ再開発を見据えてのことなのかな。
 もう社会の仕組みが変わっちゃったんだ。そしてまだ変わりつつある。
 外食の形態も変わりつつある。そして、元には戻らないだろう。
 新しいなり手が少ないんじゃないかな。「外食はねえ、ちょっと病気が流行るとダメになっちゃうでしょ」って。まあ戦前までは外食の店は殆どなかったというし、そういう意味では元に戻りつつある。あと建物の賃料とか土地の値段も下がるかもね。景気が悪くなるのは、これからだよね。
 と、そんなことは、おれが言わなくても誰かが言っていることだろうから、ここで言ってもしょうがないのだけれど。

How are you - OHM COCKTAIL x NOONA NUENGTHIDA : SUN AND MOON PROJECT [OFFICIAL MV]
 さて、今日の曲はHow are youという曲です。2020年12月22日にYou TubeでアップされたMVで、映像はマスクしまくり。タイムリーです。新曲のレビューなんて珍しいつうか、初めてじゃないの。あとなん年か経って、「あー。皆でマスクしてたよなー」って日が来ると思うんだが、早く来るといいね。
 まず、歌詞だけど、これがストレートだ。

もう長いこと 彼女と話をしていない
遠く離れて 思うのは彼女のことばかり
そんな思いを断ち切れず 彼女が恋しい

もう長いこと 彼女と話をしていない
いつも ずっと話していたのに
朝まで話したこともあったね 1万の話
つまらない休暇 それが私たちを吹き飛ばした

元気ですか?
どうしてそんなに人生に疲れているの?
私はまだあなたのことを まえと変わらず思っているよ
いつも あなたのことを心配してるんだ
愛情と思いやりは ここから遠く離れていても きみのため

いつか会ったら
いつか戻って話をするなら
どんなに素敵だろう
そして 喜びのあまり泣いてしまうに違いない

元気ですか?
どうしてそんなに人生に疲れているの?
私はまだあなたのことを まえと変わらず思っているよ
いつも あなたのことを心配してるんだ
愛情と思いやりは ここから遠く離れていても きみのため

ここの人々は元気です
人生はまだ前進しなければならないし
けれども 私はまだあなたのことを 風に尋ねる
いつかまた会えることを願って

 歌っているのがโอม ปัณฑพล(オーム・パンテフォン)とหนึ่งธิดา โสภณ(ヌンティダー・ソフォン)という若くして大御所のふたり。MVで3分ちょっと過ぎた辺りで二人が歌ってる様子に変わるね。両者ともに若いのに堂々とした風格すらある。
 男の方、オームさんは自身でも歌を歌っていて大人気なんだが、それ以上に作曲とプロデューサーとして有名な人で、父親が国家汚職防止委員会(略称:NCCC)の議長でもありタイ国防省の少将だ。兄がチュラロンコン大学の准教授。本人もタマサートとチュラロンコンを卒業してて、インテリ一家ってやつだ。
 女性の方の渾名はヌーナ。もう若くして大女優。タイ・ドラマの金字塔「クーカム(邦題:メナムの残照)」のヒロイン、アンスマリン(秀子)を演じたことでもわかるように、これはトップ女優じゃないと回ってこない役だ。クーカムは1969年に発表された小説で、翌1970年を皮切りに、これまでTVドラマが6回、映画が4回撮影されている。タイ人の琴線に触れまくるドラマツルギーで、どの作品も大ヒットしていて、作れば売れる、視聴率がめっぽう高いという実績がある。これは、随所に名場面があって、定期的に上演されるので幼い子以外は知らぬ者がない。で、名場面が回を重ねる毎に改良・洗練されていく訳だ。詐欺話が繰り返されるうちにリアリティーを帯びるので、アタマの良くない者がアタマの良い者を騙すことが可能になるのと同じ理屈ですね。タイ国民の涙を絞り尽くす訳だ。同様に繰り返し撮影される名作「ナン・ナーク(นางนาก)」と並ぶドル箱ドラマの双璧だ。下のMVは、クーカムの主題曲で、男は日本人という役どころだ。
คู่กรรม บี้-หนูนา Official MV
 ヌーナさんは実際、2010~2012の間に最優秀女優賞を総嘗めにしていて、童顔に似合わず芝居が巧い。コメディエンヌとしても優秀で、しかも偉ぶらないのでタイの女性にもウケが良い。幼少時に子役としてデビュー。高校は中国系の学校で中国語を習得。大学はタマサートの演劇学科卒。イスラム教徒でもある。これは両親がムスリムだったんで、自然にそうなったんだろう。タイにいるイスラム教徒は6%弱というから、稀少ではある。しかもその殆どは南部に住んでいるためバンコクでは、さらに珍しい。ヌンティダーさんのアラビア語のムスリムネームは「โรฮันนา(ロハンナ)」だそうで、そこから愛称がヌーナになったと。いや、ちょっと待て。ロハンナからヌーナは無理がないか。ヌンティダーのヌンからヌーナだろう、と思うが、ヌーナさんの母がそう言うなら仕方ない。ところで、うちの奥さんが、この母親と知り合いで、ヌーナさんが子供の頃から知っている。それはそれはもう可愛かったそうだ。そういえば、うちの息子も5歳頃、語学学校のコマーシャルに出演つうか主演したんだった。あの頃は、どこへ連れて行っても「うわー! かわいいー♡」って言われたものだ。今では失速して嘘のようだ。男の子で良かった。で、ヌーナさんの母親は、娘と同じ顔してるんだって。
 この人の演技はナチュラルで、楽しそうに演じてて、稀に気が乗らないときの演技がバレバレっていう、プロっぽくない人なんだが、そこがまた人気という、タイならではだ。
 
 最後に、コロナといったら、これだよね。
小林旭 - 自動車ショー歌
 いいよね。アキラの兄貴。この歌詞は星野哲朗によるもので、こういうのも書けるんだぞ、という余裕が素晴らしい。作曲は叶弦大先生だ。叶先生にしては珍しく色物的な作品で、先生の作曲は「昔の名前で出ています」みたいな正統派なのに、実力が凄いからね。しれっと、こういうのも作れちゃう。これは作曲してて楽しかっただろうな。
 しかし、これよりも「ダイナマイトが百五十屯」
という名曲があるんだけど、好き嫌いのわかれる曲で、興味のある方は聴いてみるといいよ。おれは好き。すげえな、って思ってたら船村徹先生の作曲だったのか。名曲なわけだ。失恋ソングなんだけど、失恋なんてダイナマイトで吹きとばせ、っていう豪快な歌で、3番の終わりの歌詞なんて「カックン ショックだ ダムの月」っていうんだ。恋なんてダムの月みたいに無駄でばかばかしいぞ、という意味なんじゃないかと勝手に思ってる。
 アニキがカネに困ってる当時、野◎中☆広△務の子分という人のパーティー(怖くて詳しく書けない)で、灰皿持って立ってて煙草の灰や吸い殻を受けるという「人間灰皿」と称する悪趣味な役を仰せつかって、そのギャラが一晩で1億円という罰ゲームなんだかご褒美なんだかわからないことをしていた時期もあったようですが、アキラのアニキにそんなことさせちゃダメじゃないか。
 どうもアニキはカッコ良かったばっかりに浅丘ルリ子さんと楽しく同棲してたのに、美空ひばりが当時の山◇組の田岡組長に「アキラさんと結婚したい」とねじ込んだせいで、「おう。おまえ、ひばりと結婚しろ」って、そんなの断れる訳なくて、事実婚になっちゃうんだが、その後も災難続きでしたね。けっこう悲惨なのに、そんな印象を与えない。なぜかと言うと、声がスコーンと高いからじゃないのか。いやマジで。たとえば「もう、だめだ」とか「死ぬしかねぇ」ってセリフを高い声で言うと、切実には聞こえないんだ。
 渡り鳥シリーズは全部観たもんね。日本映画の様式美のひとつだ。裕次郎よりも、よっぽど良いと思うんだが、ワンパターンという人もいて、わかってない。あれは型を楽しむもので、来るぞ来るぞ、さあ来るぞ、と固唾を飲んでいる所へ、甲高い声で「待ちなー」って声がしてシルエットが映るの。悪役たちが「だ、誰だっ!」って振り向いたら、ばーん! って、アニキの登場ですよ。裕次郎ごときに、そんなことできない。あんな無茶苦茶な状況で「んな、ばかな」って思わせないのはアキラのアニキくらいでしょ。そのくらい浮世離れしてた。
 そういえば渡り鳥シリーズの六作目でタイが舞台になる回があって、シリーズ中1,2を争う駄作なんだけど、宍戸錠さんが良かったな。白木マリさんはタイ人の役で、踊る踊る。
 日本が、まだ純情だった頃のことだ。

 下の参考画像は、別バージョンの「クーカム」のひと齣。筆書きで「ひで子」と書こうとしたが、少々残念な書に。でも、わかるから大体オーケーか。つうか観てるのはタイ人だから、そんなことは気にしてない。しかし謎なのは、ヒロインのアンスマリンに「よし。今日から君の日本名は、ひで子な」って発想で、タイ人と結婚してる日本人はたくさんいると思うが、配偶者に日本名付けてる奴なんて聞いたことがない。タイ人も外国人にタイ風の名前を授けるってことはしないし、まあ昔、同盟結んだときに現地のタイ人の皆様に無理矢理ニホンゴを憶えさせようとした暴挙からの連想かもしれない。いや、たぶんそうだ。そうに違いない。あー、ユン(ยุ่น ー ポンニチとかジャップみたいな侮蔑語)ね。あいつら、そのくらい平気でやるよな、ってね。なんか、ごめん。ていうね。いやほんと申し訳ない。ここでニホンゴで謝ったって届かないんだけど、陳謝いたします。少なくともおれはそういう気持ちであると、申し添えておきます。

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