児童精神科医の漫画『リエゾン』での暴露法の描写がひどい

モーニングの新連載、漫画『リエゾン ―こどものこころ診療所―』が話題になっていたので読んでみました。

「“児童精神科医”を描く、新たな医療漫画」とのことで読んだのですが、1話目での暴露法の描写がひどかったです。以下、ネタバレがあります。

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患児が暴露法をしているシーンが間違っている

主人公は研修医の若い女性。小児科での研修を終えて、児童精神科での研修に向かいます。

彼女が児童精神科で目にしたのは、「あくまー!!」と泣き叫びながら病院から飛び出してきた男の子。

医師が「ユウ君の中の天使は手が汚れると悪魔がやってきて病気になるといったんだよね?」と確認していることから、手の清潔さにこだわる強迫性障害の患児と思われます。

いやそれ 、天使が悪魔じゃないか?と突っ込みたいところですが、そこは置いといて。

男の子は病院内に連れ戻されます。

男の子はトイレでお母さんに抱えられ、医師に手をつかまれて便器の水に手をつける「曝露法」という治療の最中だったのでした。

医師・佐山卓はこう語ります。

「今回の治療は荒っぽく見えたかもしれませんが」
「彼の中の清潔さに対する強迫観念を取り除くためにあえて汚くさせました」
「曝露法というきちんとした治療です」

作中には以下の注意書きが入っています。
曝露法…恐怖や不安の原因になる刺激や状況に段階的にあえてさらすことで不安反応を消す方法。

漫画としてインパクトを重視したのかもしれませんが、実際の暴露法と違うので問題があると思いました。

曝露法・曝露反応妨害法は患者に強制する治療法ではない

作品では曝露法とされていますが、医師が「晩ご飯まで手を洗っちゃだめですよ~!」と言っているところから曝露反応妨害法として話します。

強迫性障害への曝露反応妨害法では、トイレの便器の水に手をつける治療もあります。

本やネット上の体験談でも読みましたし、テレビで実際の治療場面を見たこともあります。

あまり一般的な治療法ではない…というか、できる病院が少ないのが現状です。

しかし、嫌がる患者の手を抑えつけて無理やりやらせるものではありません。

曝露反応妨害法は患者が自分に必要だと理解し、納得して取り組む治療です。子供もできます。

「本当の曝露反応妨害法を見せてあげましょう」と言いたいところですが、映像はないのでテレビで観たときの感想をどうぞ。
テレビ『Mr.サンデー』9/15 強迫性障害の内容と感想。曝露反応妨害法の貴重な映像

虐待や発達障害の扱いにも疑問

ほかにも『リエゾン』には、以下のような疑問点がありました。

  • 病院が虐待の疑いを通告しなかった
  • 初対面の医師が主人公を未診断で発達障害だと断言

Twitterでの『リエゾン』に対する疑問の声

Twitterでは医師・心理士の人からも疑問の声が上がっています。

『リエゾン』は児童精神科医・杉山登志郎先生が取材協力・監修とのこと。

【新連載】 親と子の生きづらさに向き合う“児童精神科医”の物語『リエゾン ―こどものこころ診療所―』、今週のモーニングで開幕!

なお誌面では、児童精神科医を描くにあたっての『リエゾン』制作チームの意気込みを語る記事ページも掲載。本作の取材協力・監修をお願いした、『発達障害の子どもたち』『子育てで一番大切なこと 愛着形成と発達障害』(ともに講談社現代新書)などのベストセラーでも知られる子供の発達障害の権威・杉山登志郎先生にインタビューしています。

医師の監修がついている作品にマイナスの発言をするのは、勇気が必要だと思います。それでも言わずにいられないといったところでしょうか。

今後、1話目へのフォローがはいるのか、スルーしてこのまま進むのか気になるところです。

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精神科医のマンガではShrinkが好きです。


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