※2017年1月14日当時の記事です。





自閉症をもつ子の特性のひとつに再現遊びというものがあるそうです。

一見、ただのごっこ遊びのように見えますが、ごっこ遊びと再現遊びには大きな違いがあります。





例えばお店屋さんごっこをする場合なら、お店の人とお客さん。
お医者さんごっこの場合なら、お医者さんと患者さん。
などとそれぞれ配役を演じるところまでは、ごっこ遊びも再現遊びも同じです。



一般的なごっこ遊びは、それぞれの配役が自由なアドリブで役割を演じる即興演劇みたいなものです。

一方で再現遊びは、自閉症をもつ子が監督兼配役となって原作のあるシナリオに沿った演劇をするようなものになります。



〝原作のシナリオが有る〟という事は、その子が経験した特定の日常生活のワンシーン、TV番組や映画などの記憶に残っているシーンを再現している事になります。





娘のごっこ遊びの場合、アドリブはとても少なくほとんどが再現遊びになっています。

娘はお気に入りの動画やゲームのムービーを繰り返し見て、それを再現する遊びが大好きです。
登場するキャラクターが変わっても、娘はお気に入りのムービーと全く同じ台詞やストーリーに当てはめて再現します。

相手がムービーと違った台詞を言ったり、言って欲しい台詞があったりすると


娘「○○といって!」


と娘は指示を出してきます。

この「○○と言って」と相手に求める事を言葉のクレーン現象と呼ぶそうです。





私は、娘が再現遊びをしているのだと知らなかった頃から娘の様子に違和感を覚えていました。

私がその場の思い付きで台詞を言っても娘には通じないからです。

娘も、自分に言って欲しい台詞を私に伝える言語力がまだ無かったので、お互いにどうしたら良いのかわからない状況に陥っていました。





娘の最近のブームは「となりのトトロ」です。

TV放映が行われた時に録画したものなのですが、娘は「となりのトトロ」をすっかり気に入ったらしく、週に2~3回も観ています。
息子もトトロを気に入ったようで、言葉がはっきり出ないのに娘の真似をしてテーマ曲を一緒に歌うようになりました。


娘「あ、る、こー♪あ、る、こー♪」
息子「あ、う、こー♪あ、う、こー♪」

娘「うーれ、し、い、なーー♪」
息子「うーえ、い、い、あーー♪」


夫も娘と一緒にトトロの再現遊びに加わるようになりました。
娘も夫もよく台詞を覚えていて、長い映画なのに台詞も場面もきちんと再現しているのです。





年始に夫の実家へ帰省した時にも、夫と娘によるトトロの再現遊びが披露されました。


夫家族らは、


「すごい!すごい!」


と大喜びで夫もご満悦な様子でした。

しかし、娘らが披露している台詞の言い合いが自閉症の特性による再現遊びなのだと知っている私としては、なんとも言えない微妙な気持ちになります。





その後、しばらくすると息子がトトロのシーンに合わせて小道具を使うようになりました。


物語の冒頭でサツキちゃんとメイちゃんが家を探索しながらボロボロの柱を揺するシーンになると、息子は買い置きしているラップの箱を持ち出して柱に見立てていました。
(その影響で我が家のラップの箱は開封前なのに何箱もボロボロにされていました)

また、カンタくんがサツキちゃんにおはぎを渡すシーンになると、息子は持ち手の付いたカゴを持ち出しました。

そして、傘が使われるシーンになると、息子は傘立てから傘を持ち出しました。



部屋の中で傘を使って遊ばれては危険物なので、やめさせようとしましたが、息子は特定のシーンになると必ず小道具を用意しなければ気が済まなくなっていました。


息子の「となりのトトロ」ブームが終了するまでの間、他の録画した番組を観ようとレコーダーを起動する度に


息子「トトロ!トトロ!」


と大騒ぎしてしまうので他の番組を観ることが全然できませんでした。

息子の中では、〝レコーダーの表示画面=「となりのトトロ」を観る〟という関係性になっていたようです。





どうせテレビをつけても他の番組を観られないので、いっその事テレビをつけずに過ごす時間を増やしました。
すると息子は「となりのトトロ」を観ない日が多くなると、次第にトトロへの執着も薄れていきました。



こだわりを軽減するには視界に入れない事が重要なのだと私は改めて認識しました。






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