さて自民党の総裁選は事前の予想通り菅義偉が制し、総理の座も継ぐこととなりました。いかに自殺的な政策であろうと己の理想を貫き通す政治家よりも、世論の反発に怯んで政策を取り下げることの多かった安倍晋三を私は相対的に高く評価してきましたけれど、菅義偉の場合はどうでしょう。主張の激しいタイプよりは、控えめな人の方が害は少ないと言えますが……
それが良い方向か悪い方向かを無視して、とかく「変化」を求めたがる人も多いです。そうした人々が今までは優位にあったように思うのですが、しかるに今回の自民党総裁選では(安倍政権の)継続を期待する声が大きかったとも言われています。何かを変えれば良くなることもあれば悪くなることもありますので、闇雲に変化を求めなかったのは良識と呼べるでしょうか。
菅内閣を「かん内閣」 麻生副総理が2回言い間違い(TBS NEWS)
麻生副総理兼財務大臣は17日、自身が率いる派閥の会合で、菅内閣を「かん内閣」「かん政権」と2回言い間違える場面がありました。
麻生副総理兼財務大臣は17日、自身が率いる派閥の会合で、16日に発足した菅内閣について、「かん内閣」や「かん政権」と2回発言しました。麻生氏は菅総理と共に、閣内で安倍政権を7年8か月にわたり支えてきていて、派閥の事務局は「言い間違い」だと訂正しています。
とは言え、歴代最長の安倍政権を終えてもなお同じポストに居座り続ける天下の副総理はどうなのかと思わないでもありません。河野太郎と並んである種の人々から擁護の声が湧いてくる麻生太郎ですが、自民党総裁の権力を以てしても手の出せない存在のようです。日本の癌である財務省の親玉ともなれば尚更のこと切り捨てるべきものにも思われますが、どうにも聖域化しています。
「野中(廣務)のような出身者を日本の総理にはできないわなあ」とも麻生は語ったと伝えられますが、結局のところ先祖代々の特権階級として、野中や菅義偉のような平民生まれには身分違いとの意識が根付いているのかも知れませんね。だからこそ今回も敢えて名前を呼び間違えることで、「お前なんかに敬意を示すつもりはない」との意思を表明していると考えられます。
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この麻生を切れない辺り、菅義偉も安倍晋三と同様、「弱い」総理であるように思います。強権を振りかざして相手を押さえつけられるようなタイプではないわけです。それは国民にとっては安全弁でもある、いかなる反対をも省みず自殺的な政策を敢行してきた過去の総理に比べれば弱さは即ち無難さの表れとも言えますが、この先はどうなるのでしょう。
今のところ、菅義偉の最も目立った主張は携帯電話料金の引き下げに関するものです。しかし携帯電話料金を抑えたいのなら三大キャリアを避けてMVNOと契約すれば済む話です。それをやらずに敢えて高値設定のキャリアを選んでいるのは国民自身であることを鑑みれば、携帯電話料金の値下げに国民の需要があるかは疑問の余地があります。
以前にも書きましたけれど、その政治家が拘りを持っている分野ほど無能さを発揮する、と思うわけです。拘りを持たない分野については有識者の言動に耳を傾けて無難な判断が出来る政治家であっても、理想を抱いている分野については自説に固執して頑迷になる、偏った判断を押し通す傾向はないでしょうか。