生きている東京展 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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今年9月にめでたく開館30周年を迎えたワタリウム美術館。

 

 

 

30年と言わず、40年50年と、

これからも長く続けてくださいませ!

 

 

・・・・・・・と、お祝いしようとした矢先。

衝撃的なニュースが飛び込んできました。

 

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、

今年3月からの来館者数は、例年の半分以下に減少。

観覧料が大きな収入源となる私立美術館であるため、

「美術館の今後を左右する危機的な状況」 を招いてしまっているとのこと。

そこで、ワタリウム美術館は、クラウドファンディングを通じて、

展覧会の制作費や美術館の運営費などの寄付を呼びかけたのです。

突然のワタリウム美術館の切実で悲痛な訴えに、美術界に激震が走りました。

 

コロナによる美術館の閉館が、いよいよ現実的に!

 

しかし、奇跡が起こりました。

なんとその日のうちに目標額である500万円の倍、1000万円近くの寄付が集まったのです。

さらに、今現在も寄付は増え続け、

9月18日現在で、支援総額は約2000万円となっています。

 

 

 

アートの危機に立ち上がった支援者の、なんと多いことか!

その温かい支援の輪に、胸が熱くなりました。

 

 

さて、そんな皆に愛され、生き長らえたワタリウム美術館で、

現在開催されているのは、“生きている東京展” という展覧会。

 

 

 

ワタリウム美術館が開館してから今日まで。

アーティストたちが観たこの30年間の東京をテーマに、

ワタリウム美術館のコレクションを紹介する展覧会です。

 

かつて、人の顔写真を大きく引き伸ばしたものを、

ワタリウム美術館の外観に貼り付けたフランス人のJRの作品や、

 

 

 

三角形というワタリウム美術館の特徴的な形に合わせて、

“ヴィデオ・アートの父” ナム・ジュン・パイクが制作した 《時は三角形》 など、

 

 

 

ワタリウム美術館と特に関係が深い作品の数々が展示されています。

中でも多く展示されていたのが、

ワタリウム美術館を設計したマリオ・ボッタによるドローイング。

 

 

 

さらに、100分の1サイズの模型も展示されていました。

 

 

 

こちらの模型は、開館前の1987年に制作されたもの。

実は、1985年の春に設計はスタートし、

オープンは1987年のクリスマスを予定していたのだそうですが。

1986年の年末に突然、斜線制限の問題が浮上してしまったのだそう。

そこで、北側に天窓を作るという案が生まれたのだそうです。

 

 

 

・・・・・・・ん?でも、あれ?

ワタリウム美術館に天窓なんて、あったっけ??

 

と思ったら、1988年に法規が改正されたため、

結局、元のプランに戻すことになったのだとか。

そこから着工したため、オープンは3年遅れて、1990年に。

幕開けからして波乱だったのですね。

 

 

ちなみに。

今展には、コレクションとは別に、

会田誠さんをはじめ、豪華なゲストアーティストも参加しています。

 

 

 

3人組のアート集団SIDE COREも、ゲストアーティストとして参加。

《empty spring》 という新作映像作品を出展しています。

 

 

 

こちらは、緊急事態宣言下の渋谷の街で撮影された映像作品。

多くの人がStay Homeをしていたため、

映像にはほとんど人は映っていません。

代わりに写っているのは、モノが勝手に動くポルターガイスト現象。

缶がひとりでに転がったり、ダンボールの箱が移動したり、

さらには、Uber Eatsの配達バッグが動き回ったりしています。

 

 

 

もちろん、それらはあくまで、テイ。

実際にポルターガイスト現象が起きているわけではありません。

ただ、こんなふざけた映像作品を渋谷のど真ん中で、

しかも、まったく人のいない状況で撮影できただなんて。

誰もいない渋谷の光景は、ポルターガイスト現象よりも、不思議な印象を受けました。

 

 

ちなみに。

出展作品の中で最も印象に残ったのは、

ジャン・ホワン (張洹) による 《3006㎥:65㎏》 というパフォーマンス作品です。

 

 

 

そのパフォーマンスが行われたのは、1997年4月6日の朝6時のこと。

ワタリウム美術館と当時向かいにあった二階建ての建物を、

風鈴が付けられた100本の輸血用のゴムチューブで繋ぎます。

そして、65㎏の作家ジャン・ホワンが二階建ての建物の上に立ち、

ゴムチューブを揺らし、3006㎥の体積を持つワタリウム美術館に対峙したのだとか。

しかも、全裸で。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

スキンヘッドで全裸でナンセンス。

ジャン・ホワンが、井出らっきょにしか見えませんでした。

星

 



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