KING&QUEEN展─名画で読み解く 英国王室物語─ | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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先日は、上野の森美術館で開催中の話題の展覧会、

ロンドン・ナショナル・ポートレートギャラリー所蔵 KING&QUEEN展─名画で読み解く 英国王室物語─” へ。

 

 

 

こちらは、世界的にも珍しい肖像専門の美術館、

ロンドン・ナショナル・ポートレートギャラリーのコレクションの中から、

イギリス歴代のKINGとQUEENたちの肖像画や肖像写真を紹介する展覧会です。

 

(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)

 

 

出展作品は、約90点。

展示されているのはすべて、もちろん肖像画&肖像写真です。

(たまに肖像彫刻やデスマスクも)

右を見ても人の顔。左を見ても人の顔。

パッと見は、似たり寄ったりな作品が並んでいるかのように思えます。

 

が、しかし、ご安心を!

 

 

 

作品のサイドには必ず、描かれた人物についての解説が用意されています。

さらに、特に重要な人物に関しては・・・・・

 

 

 

『怖い絵』 シリーズの作者としてもお馴染み、

今展のナビゲーターを務める中野京子さんによるスペシャル解説も用意されています。

 

どんな人生だったのか。どんな性格だったのか。

その人物像を知った上で作品を観ると、その魅力が何倍にも膨らむのです。

 

例えば、ヘンリー8世。

 

《ヘンリー8世》  King Henry VIII by Unidentified artist, after Hans Holbein the Younger, Probably 17th century(1536) 

©National Portrait Gallery, London

 

 

あるヴェネツィアの外交官は、ヘンリー8世のことを、

「今まで見てきた中で最もハンサムな君主だ」 と称しているそうです。

肖像画を見る限り、そこまでイケメンな感じはしませんが、

実際、かなりのプレイボーイだったそうで、生涯に6回も結婚をしています。

会場では、6人の妻を紹介するパネルもありました。

 

 

 

離婚。斬首。死亡。離婚。斬首。そして、生存。

離婚はまだしも、斬首って。。。

生存したのは最後の妻だけ。

何この無理ゲー?!

そういったことを知った上で、改めて作品を観てみると、

ヘンリー8世の内側にある静かな狂気のようなものが見えてくるような気がしました。

 

ちなみに。

そんなヘンリー8世ですが、晩年にはお太りになられたご様子。

ウエストは、実に137センチもあったのだとか。

その頃に描かれたのが、こちらの版画です。

 

 

 

一瞬、ハンプティダンプティかと思いました。

ハンサムだった頃の面影は、いずこへ。。。

 

そんなヘンリー8世に負けず劣らず巨漢だった王様がいます。

それが、ジョージ4世。

その体型から、「クジラ王子」 と嘲笑されていたのだそうです。

こちらは、肖像画の名手トーマス・ローレンスが、

メダルにするための原画として描いたジョージ4世の肖像画。

 

​《ジョージ4世》 King George IV by Sir Thomas Lawrence (c.1814) ©National Portrait Gallery, London

 

 

どうにかこうにか体型をごまかそうとしたのでしょうか。

首から下の部分が、だいぶボヤボヤしています (笑)

肖像画家として、きちんと絵に残したい。

でも、その太った体型を忠実に描くわけにはいかない。

そんな画家の葛藤が絵に現れているかのようです。

 

また、トーマス・ローレンスの作品の横には、

ジェームズ・ギルレイという画家によって描かれたジョージ4世の版画も。

 

《消化におびえる酒色にふけた人、ジョージ4 世》 ‘A Voluptuary Under the Horrors of Digestion’, King George IV 

by James Gillray, published by Hannah Humphrey (1792)   ©National Portrait Gallery, London

 

 

こちらはまったく容赦なし (笑)

タイトルにも悪意が満ち満ちています。

さすがブラックジョークの国、イギリス。

いつの時代もバンクシー的な輩はいるのですね。

 

 

作品の数だけ、ドラマがあります。

ただ “観る” だけでも、十分楽しめますが、

作品に秘められたストーリーを “読む” ことで、より楽しくなる展覧会です。

星星

 

 

ちなみに、展覧会のラストでは、

エリザベス2世の肖像写真を筆頭に、

 

《エリザベス2世》 Queen Elizabeth II by Dorothy Wilding, hand-coloured by Beatrice Johnson (1952)

©William Hustler and Georgina Hustler / National Portrait Gallery, London

 

 

現在のロイヤルファミリーの肖像画や肖像写真も紹介されています。

 

 

 

それらの中には、ダイアナ妃の肖像画と、

その長男であるウィリアム王子の若き日の肖像写真も。

 

 

 

若くしてこの世を去ったダイアナ妃と、

若くして頭皮を去ったウィリアム王子の髪の毛。

なんとも切なくなる2ショットでした。

 


 ┃会期:2020年10月10日(土)~2021年1月11日(月・祝) ※会期中無休

 ┃開館時間:10時~17時(1月1日を除く金曜は10時~20時) ※入館は閉館の30分前まで
 ┃会場:上野の森美術館

 ┃チケットは日時指定制を導入 ※当日券は午前10時より会場で販売。詳細はHPで。
 ┃
https://www.kingandqueen.jp/

 





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