テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

レッド・スパロー

2018-11-06 | サスペンス・ミステリー
(2018/フランシス・ローレンス監督/ジェニファー・ローレンス、ジョエル・エドガートン、マティアス・スーナールツ、シャーロット・ランプリング、メアリー=ルイーズ・パーカー、ジェレミー・アイアンズ/140分)


 ジェニファー・ローレンスは既にオスカー女優だけど、出演作をまだ観てないんだよね。で、主演の最新作「レッド・スパロー」は予告編を以前ブログにも載っけたし面白そうだったので借りてきた。
 病身の母親を抱えるロシアのバレリーナがケガの為にバレーの道を閉ざされ、併せて政府の生活支援も失いそうになったので国家情報局に勤める叔父を頼っていくが、男の非情な策略により女スパイにならざるを得なくなる・・という話。
 ツイッターでは「ラストのどんでん返しを狙った作品だが途中の語りが少し緩くて★二つ」なんて書いたが、2回目の鑑賞で緩さは無くなって★一つアップです。ロシアの影の話なので僕は嫌な気分にもなったが、気にならない人には★もう一つおまけしてもいいくらいです。
 文句があるとしたら、ボーン・シリーズなんかの盗撮や盗聴を見てきた者からすると、ヒロインの周りにそういうシチュエーションが出てこないのが少し不自然かなと。
 ロシアのハニートラップ専門のスパイ養成所が出てきたり、裏切り者やミスった者への拷問なんかが陰惨で暗いけど、ムードは一貫してて見応えがありますな。

 序盤は、ジェニファー・ローレンス扮するボリショイのプリマバレリーナ、ドミニカ・エゴロワが公演中にケガをするシーンと、ジョエル・エドガートン扮するCIAのスパイ、ネイト・ナッシュがソ連の情報提供者と接触していることをロシア当局に感づかれるシーンとがカットバックで語られる。個別に時間差で語っても問題ないシーンなのに、どうも最近の映画は、序盤に二つ以上の話をパラレルに語っていくというスタイルが多くなった気がする。サスペンス・ムードの醸成になるだろうとの考えだとは思うけど、結果的にはもう一度観ないとストーリーが把握しにくいという弊害があるような気がするけど。

 序盤の叔父の策略とは、国家保安局が目を付けた腐敗役人の抹殺にドミニカを関わらせることで、結果として素人にハニートラップをさせ、極秘事件の目撃者となった為に死ぬか女スパイになるかの二者択一(生きるためには選択肢はないのだが)を迫るという非情なもの。病身の母親に介護を付けるには国家組織の中で働くしかなく、ドミニカは女スパイ“スパロー”の養成所に入ることになる。
 ここではハニートラップ系のテクニックを学ぶんだが、教官がシャーロット・ランプリングというのが憎い配役でありますな。

 教官の評価はあまり良くないけど、スパローとなったドミニカに初めての仕事が言い渡される。それが、ナッシュと通じていたロシアの裏切り者、通称モグラの正体を暴くこと。その為にナッシュに色仕掛けで近づいていくわけだ。

 ドミニカの最終目標はスパイを辞めて自由になる事だが、観ている限りでは到底かなわぬ夢にしか思えない。
 ナッシュに近づく過程でスパロー仲間との接触があったり、アメリカ政府筋のロシア密通者との駆け引きがあったり、その中でドミニカの必死の対応が見どころ。どういう目的かは分からない伏線も幾つかありますが、サスペンスが緩むほどの不可解さではないです。

 メアリー=ルイーズ・パーカーはロシアに米国防衛資料を金で売ろうとするアル中女。
 ジェレミー・アイアンズはドミニカの叔父の上司役でした。





お薦め度【★★★=一見の価値あり】 テアトル十瑠

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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感想に差はあれど (オカピー)
2018-12-16 21:05:12
評価は近いですね。

>カットバック
カットバックで見せる手法への疑問は一般論として同感ですが、この作品はここが好きでした。特に、
 端役バレリーナが集団で横に移動すると、マッチカット的にスパイ場面でも集団での移動があり、今度主人公が倒れ込むとマッチカット的にヒロインが倒れ込む。洒落た繋ぎではあるし、二人がやがて接触することを示す。上手いなあと思いました。

>ドミニカの最終目標はスパイを辞めて自由になる事
結構出たとこ勝負で、やはりCIAにすがったというのが真相でしょうかねえ。最後は彼女が想定していない展開ですが、少なくとも大悪党の叔父から自由になったのは確か。悲しい話ですけどね。
オカピーさん (十瑠)
2018-12-17 10:37:04
「女神の見えざる手」は評価が少し違いましたが、面白く観たのは同じ。
サスペンス系は大体楽しめるものとそうじゃないものの区別は似てますよね。

ジェニファー・ローレンス。
オスカー受賞作は未見なので次はコレです

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