ちとご無沙汰でほぼふた月ぶりに顔を合わせた両親は、まあ元気だったわけですが、
どうやら父親の方がふとしたときに唐突にも膝に痛みが出るらしく、
かといって外へ出れば必ずということでもないものの、それを案じるあまりに
いささか出歩かなくなっている…てな話が母親から。
引きこもってしまっているのではないところながら、あんまりいい兆候ではないやねと
外へ連れ出すことに。暑くも寒くもない頃合いですので、折も良く。
連れ出す材料はと考えてみたところ、「たまには映画でも見に行く?時代劇だけど」と。
果たして両親が出てくる役者たちを知っているのかどうかと危ぶんだものでしたが、
TVをよく見ているだけに、「岡田准一、ああ」、「西島秀俊、ふむふむ」とまったくの杞憂。
連れだって見てきた映画は「散り椿」でありました。
最初のうち、登場人物たちの整理がつきにくいはじまりと思えたりもしたものですから、
はて両親にとっての感想やいかに、もしかして途中で寝ちゃったりしていたのでは…と、
これも杞憂。「かっこよかったねえ」とは終わって開口一番、母親のひと言。
ひとえに岡田准一演じた瓜生新兵衛の殺陣でありましょうかね。
気がついてみれば、この人、時代劇づいているなと思っていたわけですが、
エンドロールで殺陣のスタッフにも岡田准一の名前を見かけ、
自ら殺陣の振り付けをやってしまうほどに入れ込んでいたのであるかと思ったり。
ところで、この映画、ロケ場所にこだわりがあったのか、
いい場所で撮っているなあという印象が強く残りましたですね。
やっぱり撮影担当が出自という監督の作品だからでありましょうか。
話としては葉室麟の作品は藤沢周平とは違うところながら、
昨今の時代劇に見られる静謐さを湛えている点では歩調は近いところがありますよね。
そうした全体のトーンの中にあって藤沢作品の必殺剣のようなアクセントに
岡田准一関わる殺陣があるものと思いますけれど、
それらの背景にある場所がなかなかににくい場所を選んでいるなという気がしたもので。
いったいロケハンてえのはどんなふうにやって、「ここ!」という場所をめっけ出すんですかねえ。
ストーリー展開には突っ込みどころがないわけでなく、しんどい部分もありますが、
映像としての映画(妙な言い方ですが)で見せてくれる部分がそれを補っていて、余韻も醸す。
そう考えれば、これもいい映画のありようと言えるかもしれませんですね。
どこがどうであったかはともかくも、両親も満足していたので何よりでありますよ。