ちょいと前にナポレオン戦争でのライプツィヒの戦いとユゼフ・ポニャトフスキに触れたところで
池田理代子の漫画「天の涯まで ポーランド秘史」を読んだものですから、
またちとポーランドの歴史でも振り返っておくかなと。
以前には文庫クセジュの「ポーランド史」を読んで、ポーランドがかつては
バルト海から黒海にまで及ぼうかという大帝国を築いたこともあったと知って、
そうであったか…と思ったわけですが、なにぶん10年以上も前では記憶も薄れておりますのでね。
今回は中公新書の「物語ポーランドの歴史」を手に取ってみた次第です。
さりながら、いささか思惑違いであったなと思いましたのは、
内容としてかなり現代史に多くのページが割かれていた点でしょうかね。
確かにポーランドは現在の面積でも(思いのほか狭い国の多い)ヨーロッパでは10位内に入りますから、
それなりの大国と言えないことはありませんですが、ルブリン合同として知られるポーランドとリトアニアの連合、
これが行われた16世紀後半までのポーランドには大層勢いがあったようでありまして、
そこに至る経緯、そこから分割の憂き目に遭う経緯、こうしたあたりを振り返れればと思っていたところからすると、
そこをさくっと通り過ぎて、現代史たっぷりなのはやはり思惑違いの感は否めないところでして。
そんな個人的印象はともかくも、やはり王統の断絶というのが痛いところであったようですなあ。
ポーランド王のみならず、ハンガリーなど周辺国の君主も出してきたヤギェウォ朝が1572年に途絶えると、
ポーランドでは選挙王制という形がとられるのですな。
最初の選挙にあたり立候補した顔ぶれというのがすごいですね。
フランス王シャルル9世の弟アンリ、ロシアのイヴァン雷帝、神聖ローマ帝国皇帝マキシミリアン2世の息子エルンスト、
そしてスウェーデン国王ヨハン3世と、この人たちがいったいどんな選挙戦を繰り広げたかは分かりませんが、
このときからしてすでに周辺国がポーランドに虎視眈々、後に分割へとたどる道筋が見えてきそうな気がします。
ちなみにこの時、激戦を制して?ポーランド王となったのはフランスのアンリ…ではありますが、
王位についてほどなくフランスの兄王が亡くなってやおらフランス国王のお鉢が回ってきますと、
さっさとフランスに帰ってしまいましたとさ…。
とまれ、そんな選挙王制でも200年ほど続き、最後の国王となったのが、スタニスワフ・アウグスト・ポニャトフスキ、
ライプツィヒの戦いで散るユゼフ・ポニャトフスキの伯父さんでありまして、「天の涯まで」では
ロシアに駐在していた若き日に後のエカテリーナ2世と恋仲になり、甘い日々を送ったことが忘れられず、
王様になってロシアの圧力がかかると「エカテリーナさまにおすがりして…」と涙してしまう人物として
描かれておりましたなあ…。
そういう王様だったからとは言い切れませんが、その後に地図の上にポーランドという国名が記されることは
なくなっていくわけでして、復活といってよさそうなのは第一次大戦後の1918年…ですが、これもつかの間。
1939年にはナチス・ドイツが侵攻し、ロシア人を守る建前で東側から入ったスターリン・ロシアとの間で
またしても分割されてしまうのですから。
第二次大戦後はご存知のようにソ連傘下の東側陣営に組み込まれますね。
NATO(北太平洋条約機構)の対抗軸がワルシャワ条約機構であるように、完全にソ連の影響下であるような。
このあたりの歴史を振り返るという点では、昨秋にピースおおさかで見た展示が思い出されるところです。
と、そんなこんなの有為転変をたどったポーランドも東欧革命を経て、
ポーランドらしさを自由に出せるようになってきているのでしょうかね。
歴史に見る大国とは領土が大きくて、戦争が強くて、要するに周辺への、世界への影響力が大きい、
そんなことでもあったかと思いますが、考え方としてそこに住まう人の満足度であるとか、
文化的な伝統、個性、あるいはそれがあってなお自由度がどうか、さまざまな尺度で
「大国」的なるもの(存在感があるという)をとらえることができるのではないかと思うのですよね。
その点で(知識不足との誹りはまぬかれないものの)、
本書に紹介されていた文化的な部分で業績を残したポーランド人のうちで知っていたのは
まずショパン、そして「クォ・ヴァディス」を書いたシェンキェヴィチくらいだけでしたけれど、
これもちろんポーランドに人がいないということではなくして、あまり発信されてこなかったということでもあろうかと。
ここまで書いて思い出すには遅すぎましたが、子供の頃に仲間内ブームで切手集めをしたことがありまして、
何故かしらポーランド切手(当時はどっぷり社会主義体制下の国でしたが)をせっせと集めたりも。
そこにはポーランドの画家たちによる絵画作品のシリーズなどもあり、子供心に「きれいだな」と思ったものも。
これも機械があった掘り出してみることにいたしましょう。おそらく捨ててはいないような…。