ちょいと前のTV朝日「題名のない音楽会」では「一流の音楽家が夢のマッチング ドリーム・デュオ第3弾」、
そんなタイトルで三種の常ならぬ組み合わせが登場しておりましたなあ。
まあ、チェロとピアノのデュオはさほど珍しくはないものの、
取り上げた曲が本来はピアノ独奏で演奏されるドビュッシーの「月の光」だった点で特別であろうかと。
もひとつ、トランペットとトロンボーン(それだけ)のデュオの方もありそうで無いものでしょうかね。
ですが最も特殊な組み合わせと思えましたのは、やはり三味線とパイプオルガンですよねえ。
これって、大袈裟に言えば前人未到の領域なのではなかろうかと思うところです。
そして、取り上げた曲というのが、また意表を衝いているといいますか。
パイプオルガンの底支えに乗った三味線がバッハ(原曲はヴィヴァルディ)の協奏曲を掻き鳴らし、
さらにはパイプオルガンの重厚な響きと三味線の細かな動きとで
ディープ・パープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」をそれらしく(?)やってのけるわけで。
実のところ、クラシック音楽指向者の常として(?)アレンジものにはちょっとしたジレンマを感じるのですな。
オリジナルの編成をこそ至高とするような感覚でしょうか。ですが、吹奏楽をかじったものとしては
かなり多くの編曲ものにも接してきましたから、真っ向否定することもできず…といった具合。
そんな思いがありつつも先の番組を見ておりましたですが、
作曲家が意図した編成で奏でられる音楽がもちろんそれでいいわけながら、
だからといってそれに拘ることもまた無いのかなと、いまさらながらに。
「いい曲だなあ」と思う音楽があって、それを聴くばかりでなる自らも何らかの楽器で奏でてみたい…。
かように思っても不思議はないところながら、では自ら奏でることのできる楽器には限りがある、というときに、
実は楽器は何でもいいのではないですかね。
昔むかし、「週刊欽曜日」というTV番組で「欽ちゃんバンド」なる楽団が登場し、
その編成たるや、木琴、トロンボーン、ギター、キーボード、ベース、ドラムとなかなかな組み合わせ。
要はそれぞれのメンバーが演奏できる(というより、演奏したい、かな?)楽器の持ち寄りなのですよね。
すんごい編成のバンドであるなと思っておりましたけれど、
楽器を鳴らすというのは楽しいものでしてね、音が出るようになれば何かしら曲を奏でたくなりますし、
一人でやるのもいいですが、やはり合奏もしたくなるわけでして。
その際、この曲の編成は楽譜にこうあるし…というのが、ともするとネックになりますけれど、
早い話が持ち寄れる楽器で集まるのも、演奏するということにおいてはありなわけで、
編成に合わせた編曲をすればいいということにもなりましょうし。
「こんな編成で、いったいどんな音楽が?!」と思えるところから、
思わぬ妙味が出たりするとも想像される背景に、先の番組の三味線とパイプオルガンを持ってくるのは
適当ではないかもしれませんが、演奏する側が楽しんでこそ聴く側(いればの話ですが)もまた楽し。
そんなふうに考えてきて、また何かしら楽器を取り出してみようかなという気分に。
さしあたり手が出せそうなのは、小学生も吹いているソプラノ・リコーダーくらいであるなあと。
もっとも、この楽器も極めようとすれば当然にして奥が深いものですけれど、
ともあれどんな楽器の集まりでも、むしろ楽器の異種格闘技的なる集まりの方が
出てくる音の新鮮さ、斬新さはあるかもしれませんですねえ。
そうそう、シューベルトの「鱒」というピアノ五重奏曲も常ならぬ編成でコントラバスが入っています。
これもこの曲を書いたとき、さしあたり演奏するメンバーはと見渡してみれば、
コンバスを演奏できる人がいた…てなことでしたものね。
仲間内での演奏は、音楽を楽しむ人々の広がりの根っこでもありましょうか。