今日・10月17日は、〝ビアノの詩人〟フレデリック・ショパンの命日・没後170周年にあたります。
ショパンに関しては、こちらの過去記事をお読みいただくとして・・・。
今日は、彼の代表作と言っていい、ポロネーズ第6番変イ長調 作品53・・・俗に
英雄ポロネーズ
と呼ばれている名曲について触れてみます。
〝ポロネーズ〟とは、フランス語で〝ポーランド風〟という意味。
マズルカと並び、ショパンの故郷ポーランドを発祥とするダンスやそれに用いられる舞曲のこと。
その殆どは4分の3拍子で、第1拍が16分音符で細分されているのが特徴。
ただしショパンの作品は舞曲というよりはよりドラマチックで、彼の作品の中でも長く壮大なもの。
彼は生涯で18曲のポロネーズを作曲し、ピアノ独奏用としては16曲。
そのうち彼の生存中に出版された番号付きの作品は7曲。
その中で最も有名かつよくコンサートで演奏されるのが、第7番『幻想ポロネーズ』と、1842年に作曲されたこの第6番・英雄ポロネーズ。
非常に難易度が高く、特に中間部の左手オクターヴの連打は、そう簡単に弾けません。
私自身、初めてこの曲を聴いた時はオクターヴだとは思わず、楽譜を見てビックリしたことを憶えています。
さて、〝英雄〟の名に相応しい華麗な作品ですが、これはショパン自身が名付けたものではありません。
では誰がどういう経緯で名付けたのか? というと、実は諸説あってはっきりしていないのです。
ただその中の有力な説として、こんな話が・・・。
ショパンが亡くなる前年の1848年、フランスでは2月革命が勃発。
かつてショパンの恋人で会ったジョルジュ・サンドは、当時小さな新聞を発行しており、そこに自らのエッセイを掲載し、政治的なメッセージを精力的に発信していました。
次々と銃弾に倒れていく労働者たちを目にした彼女は、この曲を聴きながらショパンにこんな手紙を書いたとか。
『霊感! 武力! 活力! これらの精神は疑いなくフランス革命に宿る! これより、ポロネーズは英雄たちの象徴となる!』
以後、この曲は以後〝英雄ポロネーズ〟と呼ばれるようになった・・・というのです。
曲想同様ドラマチックなエピソードですが、何となく後で作られたような話にも思えますょネ。
今となっては事の真偽は分かりませんが、その名曲をお聴きいただきましょう。
まずは2005年に行われた第15回ショパンコンクールの優勝者でショパンと同じポーランド出身の若手ピアニスト、ラファウ・ブレハッチ(1985~)の演奏を、どうぞ。
若さ溢れる、歯切れの良い演奏ですょネ。
続きましては、我が敬愛する20世最高のピアニスト、ヴラディミール・ホロヴィッツ(1903-1989)が1987年3月、83歳の時に行ったウィーンでのコンサートの演奏をお聴きください。
如何でしょうか? ブレハッチの演奏とはだいぶ違いますょネ。
ホロヴィッツも若い時の演奏はもっとテンポが速く、ブレハッチ以上にエネルギッシュでしたが、これは年齢相応の枯れた感じ。
明らかなミスタッチを何箇所かしていますが・・・私は何度も繰り返し聴きたいと思うのは、ブレハッチや若い頃のホロヴィッツの録音ではなく、この録画の方なんです。
確かに現在の若手ピアニストのテクニックは高度ですし、ミスタッチも殆どないほぼ完璧な演奏をしますが、ホロヴィッツのような感動がないんですょネ。
やはり聴衆の心を動かす演奏には、人生経験が必要不可欠なのかもしれません。
な~んて、単に私が歳を取ったからそう思うだけかもしれませんが。