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しあわせ。

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華やかな世界にいる人が自分で死ぬようなことがあるとこころがきゅうっとする。

まったく知らない人だ、ということもできるけどドラマで何度も見た人ではある。
特にファンというわけではないけれどまじめそうな好少年という印象はあった。

たまたまクリックした動画ではハイヒールをはいて歌を歌っていた。
こんなこともする人だったんだ、と驚いた。

筋肉質のからだにまとったドレス、濃い目のお化粧、そして赤いハイヒールは
その人にとても似合っていた。この人が自分で死んでしまったの?

死にたいほど悩んでいたことなど想像もしなかった。
そんなことを思ってもしょうがないけど、知らなくてごめんね、という気持ちになる。







わたしのまわりにいるふたりのマダムのことをよく思う。
おない年くらい、たぶんふたりとも七十くらい。

ひとりはミッシェル(仮名)。
もうひとりはエリザベット(仮名)。

ミッシェルには子どもがふたり。
男の子、女の子、とはいってももちろんふたりとももう結婚して子どももいる。

それぞれが独立して経済的にもまったく問題なく暮らしている。

はためにはとても幸福な七十代のマダム的に見えるのだが
ミッシェルに会うと聞かされるのはいつもぐちばかりだ。

笑った顔からしてもう眉間にしわが深くきざまれてる。

ムスメがこんなことを言ってきた、ムスコが孫をなかなか連れてこない、
あんたらこんたら、そんたらちんたら、もう、よくもまあ、というくらいにぐちばかりだ。

聞いていてつらくなって言ったことがある。
「ねえミッシェル。ムスコくんに『愛してるよ』て言う?」

一瞬、きょとんとしたミッシェル。
「なんでそんなことを言わなきゃいけないのよ。ムスコが言ってくるべきでしょう?」








エリザベットには息子がふたり。

正確にはふたりいた、のだが二番目の息子は数年前に自分で死んでしまった。
いまはだから夫と一番目の息子と暮らしている。

エリザベットの夫には会ったことはあるけれど話したことはない。

ふさぎこむ傾向のある人だと聞いた。
それはふたりの息子たちにも受け継がれているらしいとも。

状況を聞くと不幸のど真ん中にいる女性を思い描いてしまうが
エリザベットに会うと自分が偏見だらけの人間だと思い知らされる。

エリザベットの周りには幸福、としか呼びようのない丸い空気のようなものが
ふわりふわりと浮いているのだ。

顔立ちもふんわりとしていて美人、不美人、そんなものを超越した美しさがある。
表情の奥、その内側にけしてこわれることのない強い石のような意思を感じる。

エリザベットとはじめてことばを交わしたとき
彼女は六十九歳だった。

それはわたしの母親が死んだ年齢でああ、お母さんだ、と勝手に思った。
お母さん、エリザベットは六十九歳なんだって。

わたしはお母さんと一緒にいるような気持ちのよさを感じて
いつまでも一緒にいたいなと思ってしまう。

エリザベットは山の奥に住んでいてしょっちゅう会うことはないのだけど。
そういえば、エリザベットからぐちを聞いたことは一度もない。






ミッシェルとエリザベットを思うとき、
人のしあわせはその人の置かれた状況で決まるのでないとつくづく思う。

人のしあわせは人のこころの中にしかないのだなあと。

自分で死んでしまった人はいまはもう、苦しくないのだろうか。
せめてせめてすべての悩みから開放されて楽になっていてほしい。














どこがつながっているのかって?わたしの中ではつながっているんです。
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写真は2019年6月骨董市。








Commented by kyotachan at 2020-08-03 16:29
> アンジーさん
姉妹、とは言ってません。まったく別の家族に生まれたふたりの女性の話。わたしもけっこう読みまづがい、してるんだろうなあ。笑
いいおばさんが近くにいらしてよかったですね。わたしの周りにも年上の女性が多くて、この先にこんな人生があると思えるのはいいことだなあと思います。
ウチの家族ってわたし以外はボディソープ派なんですが、どれもぬるっ!とします。あんなんでよく洗った気になるなと思うんですが。
Commented by iwamoto at 2020-08-03 18:05 x
この題材を、この状況を使って書く人は多いと思います。

上手ね。 羨ましいです。
岩手のお姉さんの書くものも好きですが。

きょうの当方のスタートは、フランス人作家の造形作品です。
その人の名前が、綴りから連想出来なくて。
そしたら、うまい具合にフランス語を勉強している友人がコメントをくれました。
死ぬまで勉強する人っているんですよね。 周囲にたくさん。
Commented by kyotachan at 2020-08-03 23:07
> iwamotoさん
勉強したい気持ちはあるのですがコピペ専門のナマケモノ。フランス人、それも若い女性が東京で活躍されているんですね。他国にひかれて移住というケースは多々あるでしょうがその国で成功する人は多くはないと思います。尊敬しちゃうー。
ほめてのばしてあげようと思ってくださってるでしょ。ほめてのびるようでほめられるとのぼせて天狗になってそれでおしまいなタイプです。しかりつけてくださいませ。
むかーし、ブログをはじめたころかしら。「むかつく文章」というコメントを入れてくださった方が。匿名だったのでどなたかはわからないのですが。当時はかなり腹が立って「じゃあ読むなよこのやろ」と思ったのですがこの広くて莫大なスペースのブログのという世界でわたしのブログを見つけてくださってダメ出しをしてくださる、てこれってもしかしてありがたいこと?と思うようになりました。最近はなぜかもう、おほめのコメントしかいただくなってしまいました。みなさん見切りをつけたということなのでしょう。ああさみしい。
岩手のお姉さま(とわたしが呼んだら怒られますかしら)の文章はなんのてらいもなくねらいもなくこころのなかの気持ちをそのまま文字にされているから気持ちがいいのですよね。写真も写心だし。わたしはうけを狙ってしまってはずしてばかり。ああかなしい。長くなりました。ほめてもらってやっぱりうれしいのです。やっぱりまたほめてください。>おい!
by kyotachan | 2020-08-02 18:42 | 喜 怒 哀 楽 | Comments(3)

南仏・ニース在住。フランス人元夫の間に一男三女。

by kyotachan
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