たったひとつの親孝行。
母親が亡くなった、81歳だった
6年前に父親は他界しているので、実家でひとり暮らしだった。
胸が苦しいと、自分で救急車を呼び、その車中で逝ったそうだ。
三人の息子を立派に育て上げ、生涯働き、
誰にも迷惑をかけず、逝った母を尊敬する。
救急車の車内で逝った為、医者に死亡診断書を書いて貰えず、
司法解剖やら、家宅捜索が行われた。
めんどくさい世の中だ。
僕が、19歳で家を飛び出してから、家族とは疎遠で、父の葬儀には出なかった。
葬儀後、灰になった母を見て、死を目の当たりにしたような気がした。
最近、母とは、よく会う様になり、今年の夏は、最初で最後の母との旅行をした。
僕の現状に、母は、やっと安心した。そんな旅行だった。
今も、もっと心配をかけときゃ、もう少し長生きしたのかも知れない。
そんな事を思ったりした。
でも、天国の父が母を迎えに来たのかも知れない。
人は、いつなんどき、逝くか分からない。
両親より長く生きると誓った、あの時の約束は果たされた。
たったひとつの親孝行。
でも、生きる意味を一つ失った気がした。