「ファンベルグは、近いよ。 家からバスで20分くらいで行けるから。」
「あ、はい・・」
マリーが途中いろいろと話しかけてくれるが、とにかく絵梨沙の運転が危なっかしくて、奏は目だけ周囲を伺ってしまった。
「ほら、エリサ。 また中央線に寄りすぎ。 対向車線にはみだしちゃうよ、」
マリーが注意するも
「あ、ホントだ。 ええっと」
ホントに免許取れてます?
と疑いたくなるおぼつかなさ。
「真尋さんは、いまいらっしゃるんですか、」
と絵梨沙に話しかけてみたが
「え? あーっと、」
運転に集中していて上の空。
「話しかけたらダメ。 エリサ、いっぱいいっぱいだから、」
またも流暢な日本語でマリーに注意された。
「あ、はい・・」
「あのね。 あたし日本のアニメもだいすき。 いろいろ話きかせて。アニメもすっごく日本語の勉強になるんだよ。」
「ぼくは、あんまりアニメとかは見ないんで、」
「ふうん。 ・・なんか。 イケメンなのにおとなしいんだね。 おもしろくなーい、」
マリーにズバズバと言われて、少しムッとした。
「あたしもピアノやってんの。」
「あ、そうなんですか。」
「ま、たいしたウデはないけどね。 あたしのママがピアニストだったから。 」
「へえ、」
「あたしがちっちゃいころ死んじゃったけどね、」
「・・・・」
なんだか会話が弾んでいるようで弾んでいない。
奏はいろいろと戸惑ってしまった。
「さて・・ついた・・」
なんとか真尋宅の車庫に車を入れ終わった、と思った瞬間。
ガツン!
という音がして奏の身体が揺れた。
「あ! いけない!」
絵梨沙は思わず後ろを振り返った。
「もー。 またぶつけたのー? マサにおこられちゃうよ、」
マリーの話っぷりだと初めてではないようだった。
「この前バンパーを修理したばっかりなのに、」
絵梨沙は大きなため息をついて慌てて車を降りて後ろに回った。
運転に向いてないんじゃ・・
奏は心でそう思った。
「でも。 バンパーはぶつけるためにあるんだよって前にパパが言ってた。 」
マリーは呑気に笑った。
「・・そうよね、」
絵梨沙も笑った。
「あ、おかえりなさーい。」
真尋の家は二階建ての一軒家で昨年家族でウイーンに拠点を移した時に購入した。
庭が広くて芝生がとてもきれいだった。
玄関に長女の真鈴が出迎えた。
「えっと。 かなでくん?」
先にそう言われて
「あ、うん。 ・・よろしくね。」
少しかがんで言った。
「みーちゃんがめっちゃイケメンだよって言ってた。 ほんとにイケメンだねー。 ねー、マリー。」
無邪気に言う真鈴に
「まあ、確かに。 でも、おとなしいんだよ。 あたしはもうちょっと楽しい人がいいなー、」
マリーは勝手なことを言って部屋に入って行った。
「さ、どうぞ。」
絵梨沙に言われて奏は玄関先に荷物を置いて中に入って行った。
そして真尋宅に到着。奏のウィーンでの日々が始まります。
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