Summer break(6) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「ファンベルグは、近いよ。 家からバスで20分くらいで行けるから。」

 

「あ、はい・・」

 

マリーが途中いろいろと話しかけてくれるが、とにかく絵梨沙の運転が危なっかしくて、奏は目だけ周囲を伺ってしまった。

 

「ほら、エリサ。 また中央線に寄りすぎ。 対向車線にはみだしちゃうよ、」

 

マリーが注意するも

 

「あ、ホントだ。 ええっと」

 

ホントに免許取れてます?

 

と疑いたくなるおぼつかなさ。

 

「真尋さんは、いまいらっしゃるんですか、」

 

と絵梨沙に話しかけてみたが

 

「え? あーっと、」

 

運転に集中していて上の空。

 

「話しかけたらダメ。 エリサ、いっぱいいっぱいだから、」

 

またも流暢な日本語でマリーに注意された。

 

「あ、はい・・」

 

「あのね。 あたし日本のアニメもだいすき。 いろいろ話きかせて。アニメもすっごく日本語の勉強になるんだよ。」

 

「ぼくは、あんまりアニメとかは見ないんで、」

 

「ふうん。 ・・なんか。 イケメンなのにおとなしいんだね。 おもしろくなーい、」

 

マリーにズバズバと言われて、少しムッとした。

 

「あたしもピアノやってんの。」

 

「あ、そうなんですか。」

 

「ま、たいしたウデはないけどね。 あたしのママがピアニストだったから。 」

 

「へえ、」

 

「あたしがちっちゃいころ死んじゃったけどね、」

 

「・・・・」

 

なんだか会話が弾んでいるようで弾んでいない。

 

奏はいろいろと戸惑ってしまった。

 

 

「さて・・ついた・・」

 

なんとか真尋宅の車庫に車を入れ終わった、と思った瞬間。

 

ガツン!

 

という音がして奏の身体が揺れた。

 

「あ! いけない!」

 

絵梨沙は思わず後ろを振り返った。

 

「もー。 またぶつけたのー? マサにおこられちゃうよ、」

 

マリーの話っぷりだと初めてではないようだった。

 

「この前バンパーを修理したばっかりなのに、」

 

絵梨沙は大きなため息をついて慌てて車を降りて後ろに回った。

 

運転に向いてないんじゃ・・

 

奏は心でそう思った。

 

 

「でも。 バンパーはぶつけるためにあるんだよって前にパパが言ってた。 」

 

マリーは呑気に笑った。

 

「・・そうよね、」

 

絵梨沙も笑った。

 

 

「あ、おかえりなさーい。」

 

真尋の家は二階建ての一軒家で昨年家族でウイーンに拠点を移した時に購入した。

 

庭が広くて芝生がとてもきれいだった。

 

玄関に長女の真鈴が出迎えた。

 

「えっと。 かなでくん?」

 

先にそう言われて

 

「あ、うん。 ・・よろしくね。」

 

少しかがんで言った。

 

「みーちゃんがめっちゃイケメンだよって言ってた。 ほんとにイケメンだねー。 ねー、マリー。」

 

無邪気に言う真鈴に

 

「まあ、確かに。 でも、おとなしいんだよ。 あたしはもうちょっと楽しい人がいいなー、」

 

マリーは勝手なことを言って部屋に入って行った。

 

「さ、どうぞ。」

 

絵梨沙に言われて奏は玄関先に荷物を置いて中に入って行った。

 

 

そして真尋宅に到着。奏のウィーンでの日々が始まります。

 

 

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