一昨日はあんなことを書きましたが、

よく躾けられた犬の多いここ英国でも

犬に怪我をさせられるような事件

起きる時は起きるのです、という話を

今日は書いておきたいと思います。

 

被害者はわが夫(英国人)の友人。

 

皆様覚えておいででしょうか、

この間の冬、英国には

かなりの雪が降ったことを。

 

彼女はそれをいい機会とある週末

クロスカントリースキーをしに友達と

とある森へ出かけました。

 

 

 

 

2時間ほど雪道を滑りまくって

ああ、楽しかった!と駐車場に戻ったところ、

広い駐車場の向こうのほうに

大きな車が1台停まっていて、そのそばに

人が1人と犬が1頭いたのだそうです。

 

犬は非常に大きなドイツシェパード、

その犬はわが友人の姿を見るなり

駐車場の向こうから一目散に駆けてきて、

そしてなんとその犬の飼い主は

車の荷台を何やら覗き込んでいて

自分の犬の挙動に気付かぬ様子。

 

でもまあ普通こういう風に

ノーリードで公共の場にいる犬は

きちんと躾がされているものだし、と

友人は最初のうちは

気楽に構えていたそうなのですが

犬が近づいてくるにつれ、

この犬はちょっと危険かも、と思ったそうで

「ちょっと興奮しすぎている感じだったの。

まったくスピードを落とさずに私のほうに

飛びかかってこようとしていたし」

 

犬嫌いの秘策『目線を犬から反らして

素知らぬ顔をする』を実行に移すには

時すでに遅し、そもそも彼女は

犬嫌いではなくむしろ好きな方、

そんな犬好きが恐怖を感じるほどの

狂気をはらんで接近を続ける巨大シェパード。

 

仕方ないので彼女はスキーのストックを

自分の前に十字に重ね盾のようにして

「ノー!止まれ!待ちなさい!」

 

 

 

 

しかし犬は速度を落とすことなく

彼女の正面に飛びかかろうとし

しかしストックでその動きを封じられると

そのままの勢いで体を下にかわして

なんと躊躇なく彼女の臀部に噛みついたそうです。

 

大型犬にお尻を噛まれて彼女はバランスを崩し、

しかし犬の上に尻餅をつく形になったのが

幸いしたのか犬はその重みから

逃れようと身をひるがえして

駐車場の向こうに

足取りも軽く駆け戻って行ったそうな。

 

で、何が怖いって、この一連の噛みつき事件、

シェパードの飼い主はまったく気づいていなかったそうで、

「何かずっと車の後ろをごそごそやっていたの。

でもね、駐車場からちょっと行ったところでは

子供達が遊んでいたし、それじゃ危ないでしょ?」

 

というわけで彼女は体を雪の上から起こしながら

飼い主に向かって大きな声で

「ちょっとすみません!あなたの犬!

あなたの犬が私のお尻を噛んだんですけど!」

 

運の悪いことにこの友人は歌劇の舞台で

ソロを任せられるほどの美声の持ち主、

故に犬もその喉の響きに

見せられてしまった側面もあるのでしょう、

大犬、再び方向を転換すると

わが友人の元にまっしぐら、またも臀部にガブリ。

 

犬好きの友人は事を大きくしたくはないと

その場で飼い主と連絡先を交換しただけで

一度家に帰ったそうですが、

家に帰って鏡でお尻を見たら

裂傷の深さはもう血の気が引くほどで、

慌ててかかりつけ医に連絡を取り

診察をお願いしたら化膿止めだの何だのを

ぷすぷす何本も打たれ痛み止めを処方され

「それで警察に連絡するように言われたの。

でも警察が介入したら犬はその・・・

『処分』されちゃうかもしれないでしょ?

人を噛んだ犬は即薬殺って聞いたことない?

だからためらっていたんだけど・・・」

 

しかし彼女はそこでお医者さんに懇々と

怪我の深さと(見た目以上に

ひどい状態だったらしいです)

「噛まれたのが大人ではなく

子供だったらどうなっていたか」を説明され

「今回の事故を私がなかったことにして、

で、数週間後に同じ犬が子供を噛んだら、

それも顔や喉を噛んだら、

自分は後悔してもしきれない、と思って・・・」

彼女は警察に連絡をしたそうです。

 

ただそこで嬉しい驚きであったのが

事情を聴いた警察の人は

すぐに彼女の気持ちを汲んでくれて

「今はね、特に被害者がお願いすればね、

人を噛んだ犬でも即処分ってことには

ならないらしいの。犬は一時保護施設に送られて

飼い主に犬を飼育できる適切な能力が

あるかどうかの審査が行われ、結果によっては

犬には新しい飼い主が斡旋されるんですって。

私としてはあの飼い主はもう二度と犬を、

特に大きな犬を飼っちゃいけないと思うわ」

 

彼女が腹を立てている点は2つ、

ひとつは飼い主が

『犬から目を離していた』時間が

あまりに長かったこと、

そしてもう一つは、彼女が噛まれた後、

飼い主は謝罪の言葉を口にすることなくずっと

「うちの犬は普段はこんなじゃないんですけど・・・

たぶんスキーストックを初めて見たから・・・

あなたがストックなんて

振り上げるから犬も驚いて・・・」

とか何とか言い続けていたことだそうで、

「『うっかり』は誰にでも起きるものでしょ。

どれだけ気を付けていても自分の犬から

意識が離れちゃうことはあると思うの。

でもあんな大きな犬が自分のそばから

ばっと駆け出していって誰かを2回噛む間

ずっと上の空、というのは絶対に駄目よ。

あと、自分の犬が他人を噛んだら、

状況がどうであれ私だったらまず謝るわ」

 

そんなわけでここ数日間の

私のブログ記事を読んで

「そうか!英国のノーリード犬は

すべて安心安全か!」とつい

思い込んでしまったそこのアナタ、

残念ながらそんなことはないんです、

というのが今日の記事でございます。

 

私自身の体感として、

『危なくない犬』が大半ではあるのですが、

でも何事にも例外はある。

 

英国の山道・公園等、

犬がノーリードで歩いていそうな場所では

どうかお気を付けくださいませ。

 

 

そもそも英国犬飼いの大前提・常識として

『危ない犬・リードなしじゃ制御できない犬は

ノーリードじゃダメ』というのがあるんですよ

 

で、犬をよく躾けた飼い主ほど

ノーリード状態の犬から目を離すことはなく

逆にそこら辺の躾がヌルい飼い主程

「うちのわんこちゃんは大丈夫」と

目配りが甘い印象なんです

 

そしてそんなヌルい躾しか出来ない飼い主が

どれだけ『人を本気で噛んではいけません』の

基本原則を犬に伝えられているのか、という・・・

 

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