そんなわけで

あれは朝のことでした。

 

いつもの通り朝食前に

夫(英国人)は庭に出ました。

 

ガチョウとニワトリを

小屋から出し、ついでに

野菜畑や薪置き場や

温室などを見回るのが

夫の日課なのでございます。

 

その庭先の一まわりが終わると

裏口から台所に戻ってくるはずが

その日の夫は妙な早足・無表情で

私のいた居間の

窓の前にやって来て

「カメラを持って

長靴を履いて出てきてください」

 

これですべてを察した私も

なかなかのニュータイプの直観力。

 

身支度を整えて

転がるように外に出て

「どこだ。どこだどこだどこだ。

フクロウだろう、子供だろう、

どこだどこだどこだ。ホウホウ」

 

「まあ僕について来てくださいよ。

いつも通り僕はまずこっちの

ガチョウ小屋とニワトリ小屋の

戸を開けて、で、

薪置き場に回って・・・」

 

「いいから。経路はどうでもいいから。

早くフクロウを出せ、ホウホウ」

 

「夜の間に羊が薪に

悪さをしていないか確認して、

で、ほら、君、気が付きました?

僕のりんごの木、今年は

なかなかいい感じに

花が咲いているんですよ」

 

「そうかそれはよかったな、

で、フクロウはどこだ」

 

「このまま受粉が

うまくいってくれたら

嬉しいんですけどね、

どうも蜂はりんごの木より

他の花に惹かれるみたいですね、

りんごはニオイが

足りないんでしょうか、でも

いい香りはするんですよ

・・・ちょっと嗅いでみてください」

 

「うん、後でな。

後で嗅いでやるから。

とにかく今はフクロウだから」

 

「でもそっちのりんごの木は

無事に花をつけていますけど、

こっちの木は今一つで

僕はちょっと心配しているんです。

だから毎朝こうやって

様子を見に来て・・・」

 

「優しいな、君は優しいな!

でもまずはフクロウだ、

どこだ、さっさと出せ!」

 

「まあそう言わずに

りんごの木を見てくださいよ」

 

「後でな!それはフクロウの後で!

悪いがりんごとフクロウなら

優先順位はフクロウなんだよ!」

 

「・・・君のそういう態度は

どうかと思いますよ、

今は亡き君のオジーサマも

おっしゃっていたでしょ、

夫の言うことには耳を傾けて・・・」

 

「だからさっきから

傾けているだろうがあー!

ふざけんなフクロウを出せえー!」

 

「そんな大声を出したら

フクロウが逃げますよ!」

 

「なんだ、じゃあやっぱり

ここらへんにフクロウが

いるのか!どこだどこだ!」

 

「だからまずは

りんごを見てくださいって!」

 

なんだこいつ、この状況で

何がりんごの木だ、

だいたいりんごの木なんて・・・

 

 

・・・りんごの木の隣にいたあー!

 

 

隣というか・・・横・・・

 

(りんごの柵の)中・・・?

 

(最近のNorizoさんは

興奮すると日本語が乱れる)

 

「かかかかか可愛い。

なんて絶妙な位置にいるんだ

このフクロウは!けしからん!」

 

「りんごの様子を見ようと思って

そこでその子に気づいた時の

僕の驚きを想像してくださいよ」

 

「あ・・・あああ・・・

いいなあフクロウ、

本当にかわいいなあ、でも

触るのは危険なんだよな」

 

「ええ、どこかに母鳥が

いるはずですからね」

 

巣立ち直後の

フクロウの子供に

迂闊に手を出すと

見守り中の母鳥に

思い切り目を抉られる、

というのは英国の

フクロウ愛好家の間では

よく知られた話だそうです。

 

故に!もしも森や庭で

ちびフクロウを見かけたら!

 

人は根性で理性を総動員し

『ああ、この子を撫でまわしたい』欲を

ねじ伏せなくてはいけません!

 

これは私が

『手を出せない』ことを

理解している目だ・・・!

 

さて、このフクロウちゃんの

連れの話はまた明日に。

 

 

フクロウの

小さなきょうだいが

我が家の庭に

初めて登場したのは

2017年のことでした

 

以来毎年時期になると

気を付けて木の梢に

目をやっていたのですが

 

18・19と彼らには出会えず

 

・・・2020年、まさかの

地上1メートル再登場とは

 

いやしかしフクロウは

魅力的ですよね

 

フクロウがお好きなあなたも

リンゴのほうがお好きなあなたも

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