陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

我が家の歴史遺産、解体までの流れ(後)

2019-10-18 | 政治・経済・産業・社会・法務

家を壊すのはつくるよりは簡単です。
しかし、そこに至るプロセスは必ずしも楽とは言えないのが現状です。建てるなら、直すならばきれいになって嬉しいですが、なくす場合は消極的解決なので何も残らないからです。

この夏解体した納屋二棟について、作業工程をしるした覚え書きの後半です。

Step-07:家具を自分で解体する
タンス、本棚、食器棚などの大型家具。有料の引取り業者もありますが、軽トラック一台分で数万円はかかります。ある程度の作業スペースがあれば、自分で解体できます。必要なのは、軍手、ハンマー、バール。中身を出して引き出しを外せば、タンスもひとり、もしくはふたりがかりで運び出せます。板の接合部分を内側から叩き(釘の頭を外側へ押しやるようにする)、隙間にバールを差し込んで梃子の原理で外していきましょう。私はこの要領で大型家具を10体ほど数日で壊しまくりました。大正時代の櫓箪笥を令和にちまちまと壊しているのは、私ぐらいでしたでしょうな…。

Step-08:使えるものは保管する
畳は縁の黒い布を剥がして、空き地や田畑に敷けば除草対策になります。ただし、重いのでふたりで運びましょう。農機具などで使えそうなものは、農協に連絡すれば買い手を探してもらえることもあります。貰い手があれば、無償で譲ってもいいでしょう。ただし、あきらかに汚損がある不良品をなんでもかんでもあげると嫌がられますし、あとからクレームがくることもあります。また、家具の一部は母屋に移動して使っています。残すものはいずれ自分で処分できそうなものに限ります。

Step-09:重要書類や貴重品の発見に注意
時間がなければ、有料の引取り業者や解体業者に不用品の処分を依頼してもよいのですが。タンスや床の下に隠し預金があったり、過去の契約書や登記簿、借用書、まだ健在の商品券や証券・通帳が出てきたりすることはありえます。個人情報の流出を防ぐ意味でも、なるべく、空き家の荷物は自分で確認したほうがいいです。書類の破棄はシュレッダーがあれば便利です。

Step-10:解体する建物のお浄めをする
知り合いの和尚さんにアドバイスされたことですが。荷物をすべて撤去して、中をがら空きにしたのち、塩と酒で清めることにしました。お別れを偲ぶために、写真を撮ってみたり、一日だけ過ごしてみたりするのもいいです。

Step-11:解体業者に工事をしてもらう

私は業者に工事日を特定して契約内定してから、大急ぎで片付けました。不用品は溜め込むのではなく、思い立ったが吉日で処分していったほうがいいです。移動した仮置き場がまたごみ屋敷みたいになることもあるからです。

Step-12:解体後に建物滅失登記を忘れずに
建物を取り壊したら、忘れずに建物滅失登記を申請しましょう。業者から取壊し証明書が発行されますので、ほか必要書類を添えて法務局へ。滅失登記を怠ると罰則があるほか、翌年1月1日時点での固定資産税が課税されてしまいます。
なお申請自体は無料です。土地家屋調査士などにも依頼できますが、数万円かかります。ある程度、登記の知識があれば誰でも書類作成できます。この点については後述します。


解体をしてよかったことは。
古い建物の維持費に悩まされることも、瓦の飛散や倒壊の恐れで近隣にご迷惑をかけることもなくなったことです。敷地内がひろくなり駐車もしやすく、採光条件もよくなります。建物で迂回していた立木の水遣りも近くなって助かります。モノを仕舞いこむ癖も見直しできます。費用はかかりましたが、今後のリフォーム代を考えればお得というものです。

またこの空き家のご近所さんとはながらく音信不通でしたが。
空き家に関する町内会費などを負担していることなどを理解してもらい、週数回のごみ集積場も利用させてもらうことができました。最近は自治会に加入しない人もいますが、災害時などイザというときの安否確認もふくめて、ご近所とは顔見知り、あいさつ程度にはコミュケーションをとったほうがいいというものです。

工事業者の選良は、複数の業者に相見積もりをお願いし、値段もそうですがこちらの要望を丁寧にきいてくれるかどうか、じっくり見極めましょう。
私はリフォーム会社にお願いしました。電気の移設工事や瓦屋根、解体だけの専門業者にも見積依頼しましたが、客筋によって吹っかけたり、あとで法外な料金を請求したりするふとどきな業者もいます。産廃業者も同様。契約の当事者を無視して、家族に口約束で強引に工事着手の既成事実をつくろうとする業者や、決められた訪問日時を守らない、かってに敷地内に入り下見をする業者もいます。こういう業者はあとでかならずトラブルになりますので、契約しない方がいいでしょう。

この納屋をふくめた断捨離作業は現在も進行中です。
とくに事業用建物だった場合は、かなりの処分に困る物品が多いです。不用品の処分はこちらが年をとればとるほど体力も費用も奪われ、億劫になります。高齢者はやたらモノをためこんでしまう癖があります。不用品だらけのごみ屋敷にならないように、日頃からご家族と家庭内のモノの管理や処分いついては話し合っておかれたほうがいいでしょう。

私はこの断捨離ライフのついでに、自宅にある本や趣味のグッズなどもかなり捨てたり、売ったりしました。後顧の憂いを残さないためにも、生きているうちに自分の始末をつけるのは、あたりまえのことです。ごみを他人に押し付けて片付けさせると、いずれ自分に恨みが返ってきます。

自分の配偶者の実家もしくは親族に空き家空き地など、処分に困る不動産や物件がある場合は、早めに親族会議をひらいて十全に話し合っておいた方がよさそうです。介護問題と同じで、のちのち負担を巡ってトラブルになりやすいです。

特に注意したいのは、子ども世代が東京などへ進出したケース。
他自治体にある空き家の片づけ、解体をするにはかなりの時間と労力が奪われます。片づけのみならず、手続きのために何度も往復せねばならず、交通費もかかり、精神が疲弊します。自営業ならばいいですが、会社員でも休みを何度ももらわねばならず、産休・育休や介護休暇ほど職場に理解がなく、最悪、退職して無収入のまま費用の掛かる断捨離作業、リフォーム作業にならざるをえません。中高年だと再就職が厳しいので、空き家あるいは壊れた住まいのために人生破滅せざるをえない恐れがあります。

計画的な資金繰りが必要ですが、マイホーム新築ならともかく、解体作業に助成金はある自治体は限られ、また金融機関からローンが組めることないでしょう。片づけ業者に任せると大事な資産をいい様にされる、必要なものを勝手に捨てられる、壊されるなどの被害例もあります。故郷を離れて都会で働く皆さんは心しておいたほうがいいでしょう。

また親が認知症になったら資産が凍結され、親が名義の家屋に関する管理を子ができない可能性が高くなります。親と同居で子が自立できていないケースは、親が亡くなってしまったら廃屋やごみ屋敷とともに過ごさざるを得なくなります。親元を離れて一人暮らししたことがない、社宅などでしか暮らしたことがないような人は、住まいに関する知識が疎いので要注意です。

また台風など悪天候が予想される時期は、家屋の傷みを点検し、早めに修復を検討する方がいいでしょう。


★住宅・土地・建物に関する記事一覧★
住まいに関する情報、土地や建物など不動産について知っておきたいことや、経験上の雑感を書いた記事の一覧です。建築もしくはその内装などに関する論評や考察も含みます。



この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 我が家の歴史遺産、解体まで... | TOP | ★★神無月の巫女二次創作小説... »
最新の画像もっと見る

Recent Entries | 政治・経済・産業・社会・法務