陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

同性婚よりも、まずは別姓婚を推してほしい(後)

2018-08-19 | 政治・経済・産業・社会・法務

ホモ・サピエンスは性的パートナーの選択に節操がない、と言われています。
肌や瞳の色が違っていてもだいじょうぶ。動物は遺伝子を残すという本能があるせいで、少しでも形質が異なる生体とはペアにならない。環境の変化に耐えうる子孫が生き残るためには、単純な自分のコピーを生み出すのではなく、雄と雌とを掛け合わせる有性生殖が必要だからです。しかし、人間は種の保存のためだけに相手を好きになるわけでもないわけですが。

SNSなどでは、アニメやゲーム愛好者による同性婚推進を見かけます。
人の愛情はそれぞれなので、本人や周囲がよければ、人種が異なろうと、異性でなかろうとパートナーシップを結ぶのは構わないんじゃないでしょうか。ただし、それを特別視して妙に崇拝したり、ナチス迫害から一転してユダヤ人国家であるイスラエルがパレスチナ攻撃するような悲劇さえ起こらなければ、ですが。いわゆる差別利権とか弱者利権とか呼ばれるものですよね。

同性婚を法律婚とすることには、ハードルがあります。
数年前に東京ディズニーランドで挙式した女性カップルが破局し、そのすぐのちに有名女性経済評論家と同棲中とカミングアウトしたことが話題に。パートナーが異性でないのは、珍しくなくなるのかもしれません。しかし、渋谷区のパートナーシップ証明書発行の第一号としてメディアに華々しく取り上げられたわりには、あっさり別れたことに驚いてしまいます。叶姉妹みたいなもので、自分をメディアに売り出すための百合婚ユニットだったのでしょうか(謎)。

現状で法律的に身分を保護するなら、養子縁組する(ただし生年月日が同一でないこと)ことも可能で、実際、こっそりそれを行っている同性カップルもいるはずです。
法律婚を認めるならば、子を養子にして成人年齢まで責任もって育てられる同性カップルに限定すべきでしょう。いまのまま、同性婚を法律上認めたら、どちらか一方の家の人間にならざるをえないので、別姓婚をさっさと制度化したほうがいいと思いますけどね。

フランスでは同性婚が事実婚とともに1999年にも法制化されていることが知られています。「PACS(パクス)法」と呼ばれるこの制度は、仏国では結婚や離婚が裁判所での協議が必要で厳正なものであり、日本のように気軽に入籍の紙切れひとつで結婚できないからこそ意義があります。

さらに日本国憲法には、憲法24条に「結婚は両性の同意に基づくものとする」という規定があります。
同性婚を法律婚とするならば、すべての法の根源である憲法改正からはじめねばなりません。憲法改正の発議は複雑で、安倍首相が九条改正のために挑み続けているが阻まれている。そもそも、同性婚を認める云々よりも、日本には日本国民すべての生命と財産に係る重要な法案の審議がわんさか控えておりますから、必然後回しになっているのでしょう。

仮に同性婚が法制化したとしても、男性婚は増えても女性婚は増えないのではないかと思っています。
なぜならば、女性の平均所得を見ればおわかりになるでしょうが、女性の経済力は低く非正規労働者として働く割合も多い。男性との結婚は、女性が経済的困難を解決する手段で、子どもを産み社会を再生産することが期待されていたからこそ、出産育児手当や税制上の優遇策があったわけです。産休や育休中は厚生年金保険料の支払免除もありますし、やっと、働く女性が生み育てやすいように行政が動きつつある。子どもを産み育てることは女性だけの責任ではなくて、むろん、男性側にも責任があることで、行政が無理強いすることではありません。不妊リスクの原因は男性にもありますしね。

最近、「LGBTに税金を使いたくない」とうかつに論壇に寄稿してネット上で叩かれた女性議員がいたらしい(参考「憎悪は小さな穴から覗いた世界から生まれる」)。
その前後して、自民党議員が夫婦別姓は趣味みたいなものだとか放言していましたが。
LGBTでも働いて納税している人はいますので税金使わせない発言自体は生存権の否定になります。異性の法律婚で得られるメリットの付与についてであれば、所得税の配偶者控除じたいそろそろ見直しが検討されはじめていますので、優遇は難しいのではないかなと思います。専業主婦(主夫)でもいまや社会保険加入できる条件で働いた方がいいですし。

けっきょく、法的保護がない同性カップルは互いを扶養できないので、どちらかが失職してしまうと経済的負担で揉めて破局しやすい。あと、恋愛に前のめりなので浮気が多いとか。ただ、この特徴は異性愛に見られるので、同性愛者や性的少数者ばかりがストレートよりも劣ると決める理由にはなりませんが。

家族にならない関係は軽くて楽ですが、いつでも好き勝手に捨てられるということです。
不愉快な他者と共生する能力を育てることを抜きにして、成人しても異性親の経済力に縋りながら、同性婚バンザイと叫びつつ、けっきょくは手軽に恋愛が楽しめてしまうゲームやアニメ、ポルノ、アイドルなどに逃げ込む人が多いのではないでしょうか。そういう現代の、マスメディアや広告代理店などが暴利をむさぼる文化産業に踊らされ、欧米のLGBTブームに乗せられて、むやみに日本人同士が異性に対して無理解を募らせることには危機感がありますね。

男も女も主たる生計者になってもおかしくない、この時代。
夫の失業や定年退職で、妻側が働いて家計を支える家庭も増えています。女性だけが養われているわけではない。それなのに、老齢年金や遺族年金、所得税の配偶者控除などの扶養妻だけの優遇措置のために、女性側の実家がなくなってもいいのか。女性の方が長生きしてしまうので、下手すると、両家ともの親の介護や空き家、墓の世話などを背負わされる可能性があります。夫(妻)はともかく、その義両親や親族との仲が悪ければ、改姓を後悔する人もいるでしょうね。というか、これまで多くの女性が泣いてきましたし。女性がしぶしぶ夫側に改姓しても、けっきょく、娘しか生まれなければ自分の家は絶えてしまいます。

結婚後も自分の姓でいたい、家を絶やしたくない、自分の名前で仕事をしたい、と切に願うひとのために、まずは選択的夫婦別姓制度がぜひとも推進されてほしいものですね。男が大黒柱にならなくてもいいが共働きで、女性の仕事を尊敬し家事育児および介護で協力できる。女が扶養されなくてもいいが、子どもや老人の世話をするのは当たり前という前提から解放される。そういった、旧来の軛から距離を置くことで、ずいぶんと生きやすくなるのではないでしょうか。

それと少子化対策としては、子持ち夫婦もそうですが、シングルマザー(ファザー)の生活支援をしたほうがいいです。養子縁組も推進されてほしい。
現実、ギャンブルや酒乱、DVや浮気癖の夫が嫌で独りで生み育てる逞しい女性だっていますし、ヒステリーで浪費癖の妻と別れた子煩悩な男性もいますよね。死別の夫婦もいます。男女の両親がいて子がいる、という標準モデルがもはや崩れていますし。結婚しても子を持たないディンクスや、不妊治療しても子宝に恵まれない夫婦だっている。自分が嫁にいって我慢していたのだから、女の幸せは子を産むことだからと若い世代にけしかけても、いまや時代遅れです。子連れの妻が再婚すると、前夫との子が義父に虐待されるという悲しい事件もあるわけで。

そもそも、少子化は1970年代の専業主婦が多かった時代に出産数が2人を切ったときからはじまっていたのです。それをいまの出産可能な20代、30代の女性ばかりにけしかけても意味がないですし。出産育児休暇を充実させないと、女性が働きながら結婚生活を続けるのは大変です。いま、豊かな年金を享受している世代の負の遺産を先送りして、過重労働や、医療費介護費用の高騰などを無視して、若者が結婚したら、子どもできたら、何もかも日本の課題が解決するみたいな安楽的な見かたのほうが怖いですよね。

重ねて言いますが、この記事は同性愛者を批判するためでも、法律婚を軽んじるためでもありません。また、事実婚自体もまったくなくすべきだとは思いません。互いに経済的に自立している中高年カップルが、煩わしい親族付き合いを嫌って、事実婚を選ぶひとも増えています。

しかし、現状、多くの人が異性、同性関わらず、結婚や子育てやら、かつて幸せだと思っていた人生イベントに夢を描けなくなってきたというのは事実です。
親きょうだいのせいで、性的被害のせいで、異性と付き合いたくない人だっています。結婚して人生が変わって不遇をかこっている人もいれば、楽しい人もいる。職場でいつも家庭の不満ばかりこぼす人もいますし、聞き苦しいですよね。しっかり稼いで、時にはきっちり休んで、強く生きていきましょう。


同性婚よりも、まずは別姓婚を推してほしい(前)

男も女も主たる生計者になってもおかしくない、この時代。結婚後も自分の姓で仕事をしたい、家を絶やしたくない、と切に願うひとのために、選択的夫婦別姓制度はぜひとも推進されてほしい。


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