私がパーソナリティを務めさせていただいている
エフエムあまがさきの番組
「昭和通二丁目ラジオ」木曜日。

昭和の歌をお送りする番組です。
今年度から、昭和歌謡のちょっと不思議な歌詞を掘り下げたり、
その曲の思い出を語る時間を設けています。

子ども時代にはよくわかっていなかったけど、
今この歳になって聞くと面白い「昭和の歌詞」を
番組内で深堀りするコーナーです。


昨日は、樹木希林さんを追悼すべく『林檎殺人事件』に注目しました。
以下、敬称略で失礼します。

『林檎殺人事件』は1978年6月21日発売。
郷ひろみにとってはデビュー6年目、27枚目のシングルです。
樹木希林とのデュエットは前年発売の『お化けのロック』以来二度目です。

話が逸れますけど『お化けのロック』は、
作詞:阿木耀子、作曲:宇崎竜童(編曲 萩田光雄)なんですねぇ。
イヒッヒ ヒーヒヒ イヒイヒ

なんて、普通の人では思いつかない擬音だと思います。
すごいわ。

では『林檎殺人事件』を見てきましょう。

『林檎殺人事件』
(作詞:阿久悠  作曲:穂口雄右)

(男女)アア 哀しいね 哀しいね
(男) 殺人現場に林檎が落ちていてた
    がぶりとかじった歯形がついていた
    捜査一課の腕ききたちも
    鑑識課員も頭をひねってた
(男女)霧に浮かんだ真っ赤な林檎
    謎が謎よぶ殺人事件
(男) アア パイプくわえて探偵登場
(男女)フニフニフニフニ フニフニフニフニ
    男と女の愛のもつれだよ
    アダムとイブが林檎を食べてから
    フニフニフニフニ 跡をたたない
    アア 哀しいね 哀しいね



『林檎殺人事件』はTBS系のドラマ 水曜劇場『ムー一族』の
挿入歌として作られたもの。
前年発表された『お化けのロック』が挿入歌だった『ムー』ともども、
久世光彦プロデュースで、郷ひろみがほぼ主役、樹木希林も出演しています。

久世光彦は『林檎殺人事件』に関してかなり詳しいコンセプトを固めていて、
依頼を受けた阿久悠が、そこまでできているなら自分で書けばいいのにと
言ったと言われています。
ですから、どこまでが阿久悠のオリジナルなのかはわかりませんが、
ちょっとした推理小説風の面白い歌詞に仕上がっています。

全然哀しそうじゃない口調の
アア 哀しいね 哀しいね
で、こちらとしては
「え?何が哀しいの?」と、
物語に引き込まれたところに、やっぱり明るい調子で
殺人現場、捜査一課、鑑識課員といった、
これまで歌謡曲で聞いたことがないような
物騒かつ専門的な用語が次々出てきます。
まさにドラマを見ているみたい。
私はこの殺人事件の舞台はイギリスだと勝手に思っています。
林檎が霧に浮かんでいるし、
パイプをくわえた探偵が登場といえば、シャーロック・ホームズだろうと。
林檎と人の死を結ぶ鍵をアダムとイブにもっていくという、
なかなか洒落た歌詞です。
それを弾むようなメロディーに乗せているのが良いんでしょうね。
作曲 穂口雄右はあいざき進也「気になる17才」の作曲者ですやん。
親しみを感じますわ。

では二番。

(男) 歯形に三つの虫歯のあとがある
    キャンディ好きだとにらんだ探偵は
    聞き込み 張り込み 尾行をつづけ
    こいつと信じた男をおびき出す
(男女)闇にまぎれて大きな男
    やって来ました殺人現場
(男) アア パイプくわえて探偵失神
(男女)フニフニフニフニ フニフニフニフニ
    男と女の愛のもつれだよ
    アダムとイブが林檎を食べてから
    フニフニフニフニ 跡をたたない
    アア 哀しいね 哀しいね

(男女)アダムとイブが林檎を食べてから
    フニフニフニフニ 跡をたたない
    アア 哀しいね 哀しいね



初めて聞いたときも、今も、疑問に思います。
「林檎の噛み跡の歯形で虫歯がわかるのか?!」
しかも三つも!
どんな歯形であろうか。

そして二番でやっと、
林檎殺人事件の犠牲者は女性だったと判明します。
犯人と思しき人を割り出しておびき出しておきながら、
犯人がやって来ると失神してしまう探偵。
げに不思議なり。
なぜ失神しちゃったんだろう?
相手が巨大だったから?
でも「こいつだ」と思った時点で相手の特徴くらい
わかっていそうなものなんだけど。
優秀なんだかどうなんだかよく分からない探偵です。

ちなみに私の脳内では、
闇にまぎれて現れる大きな男は
なぜかフランケンシュタインなんですよ。
だったら探偵が失神するのもわかるのですが、
前後の脈絡はおかしなことになりますね。
いずれにせよ、私にとっては、
外国映画ふうの映像が連想される歌なのです。

結局犯人は捕まえられたのか、逃げられたのか、
結論もよくわかりませんが、
郷ひろみ&樹木希林のミスマッチペアが
歌って踊るのを見るだけで、なんだか楽しかったことは確かです。

私が後悔しているのは、
『お化けのロック』『林檎殺人事件』を生んだ
ドラマ『ムー』と『ムー一族』、どちらも見ていなかったこと。
もしかして、ドラマ本編を見ていた人なら、
もっと別の解釈があるのかもしれません。

以上、敬称略で失礼しました。

それではいつものように、youtubeから動画をお借ります。

この歌はたいてい、郷ひろみさんも樹木希林さんも
囚人服のようなボーダー柄の衣装で歌っておられたんですが、
一度『ザ・ベストテン』で、ひろみくんがタキシード、
希林さんがマーメイドラインのドレス姿で歌ったことがありました。
『寺内貫太郎一家』のおばあちゃんや、
だぼだぼの囚人服姿しか見たことがなかったので、
希林さんのスタイルの良さにびっくりした記憶があります。

なんと、そのときの動画をアップしてくださったかたがおられるんです!
アップ主さまありがとうございます。
お借りします。

希林さんはハイヒールなのに、
ステップが軽いのも驚きです。

驚きといえば、希林さんの歌声を初めて聞いたときも驚きました。
ドラマで聞く声とずいぶん違っていたので。
それがまた味になっていたんでしょうね。

と、番組中にリスナーさんから
「『お化けのロック』『林檎殺人事件』ともに
    郷ひろみさんに合わせたキーで作られていたからですよ」
と教えていただきました。
なるほど。



樹木希林さんのご病気のことは存じていたけれど、
希林さんのことだから、あの調子で100歳、120歳と
とんでもなく長生きされるのではないかと、
根拠もなく、そんな気がしていました。
希林さん、私はなんだかとても寂しい!

私の中で、樹木希林さんのベストは
『寺内貫太郎一家』のばあちゃん。
今頃、先に天国に行ってしまったヒデキに再会して
おきまりのセリフ
「きったねえな!ばあちゃん!」って言われているのかな。


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